大河原克行のキーマンウォッチ

なぜ、Lenovoはx86サーバー事業を買収したのか?~日本法人のロードリック・ラピン社長を直撃 (IBMとは戦略的提携関係、NECとは競合関係に)

日本におけるクラウド事業も開始へ

IBMとは戦略的提携関係、NECとは競合関係に

――ところで、Lenovo NEC Holdings B.V.に49%を出資しているNECもx86サーバー事業を展開し、この分野で国内トップシェアを維持していますね。NECとの関係はどうなりますか。

 IT産業においては、こうしたことがよく起こりがちです(笑)。一部の部門では協業しながら、ある部分では競合するということが、避けて通れない場合があります。今回のケースも同じで、PCクライアントやタブレットビジネスでは、これまでに例がないほどの成功を収めているが、その一方でx86サーバー事業に関しては競合関係が生まれることになります。われわれはx86サーバービジネスを伸ばしていくことになりますから、この分野でNECと競合関係となるのは当然のことでしょう。

――日本におけるx86サーバー事業の売り上げ構成比はどの程度を想定しますか。

 会社のポリシー上の問題もあり、その内訳は公表できません。しかし、サーバーの売り上げ構成比は拡大していくことになりますし、市場の成長よりも高い成長を見込むことになります。エンタープライズ事業は、レノボ・ジャパンにとって、成長領域の製品であることに間違いはありません。短期的な要素でみれば、いま、クライアントPCがWindows XPのサポート終了に伴い需要が伸びているように、2015年にはWindows Server 2003のサポート終了を迎えますから、これによってサーバー市場全体の成長が見込まれます。レノボ・ジャパンは、この需要においても、市場全体を上回る成長を遂げたいと考え、準備を進めていくつもりです。

今年中には日本でもクラウドサービスを展開

――1月21日に開催されたJCSSA(一般社団法人日本コンピュータシステム販売店協会)の「平成26年新春特別セミナー」において、日本におけるクラウドサービスの展開について言及しましたね。

「日本でもクラウドサービスを早く提供したい」と話すラピン社長

 Lenovoは、2012年に、米国のStonewareというクラウドサービスの会社を買収しています。Stonewareは、2つのクラウドサービスを提供しています。

 ひとつは、教育現場におけるマネジメントツール、もうひとつはどんなデバイスや、どんなOSでも環境を問わずに、コンテンツをクラウド上の保管することができるサービスです。これは、今後、日本で提供していくつもりです。具体的な提供時期は明らかにできないのですが、それほど間を置かずに、早く提供したいと考えています。

 またLenovoでは、ノックノックという、指紋認証や音声認識、パスワード管理といったサイバーセキュリティを専門に行っている会社にこのほど出資しました。これはLenovoがグローバルでクラウドに力を入れていくことの証しですし、4月からの新組織でもクラウドを担当する体制が強化されることになります。

 Lenovoは、昨年1年間で1000人のソフトウェアエンジニアに投資をしています。先日、バルセロナで開催されたMobile World Congressにおいて、Lenovoは、タブレットに搭載する自社開発のソフトウェアを発表していますし、今後は、クラウド、ソフトウェアといった領域にも投資していくことになります。

――2014年4月から始まる新年度はレノボ・ジャパンにとってどんな1年になるでしょうか。

 かなりエキサイティングな1年になるでしょうし、忙しい1年になると予想しています。成長の機会は大きなものがありますし、さまざまな領域でビジネスを拡大していくことになりますね。こういう時期には、「人」が極めて重要になります。幸運にも私は素晴らしい人材に恵まれています。このメンバーであれば、この1年をうまく乗り切っていけると確信しています。

 経営陣においても、Lenovo出身者、NEC出身者がおり、多様性に富んでおり、日本市場に造詣が深い社員も多い。今後は、日本IBMやモトローラからも、リーダーシップチームに加わってもらえることを期待したい。この多様性が、レノボ・ジャパンの強みでもあります。成功を確信していますし、楽しみにしています。レノボ・ジャパンは大きな進化を遂げる1年になるのは間違いありません。

大河原 克行