大河原克行のキーマンウォッチ

なぜ、Lenovoはx86サーバー事業を買収したのか?~日本法人のロードリック・ラピン社長を直撃 (x86サーバー事業買収の狙いは?)

日本におけるクラウド事業も開始へ

x86サーバー事業買収の狙いはなにか?

――最新四半期の決算資料をみても、Lenovoにおけるエンタープライズ事業は、全社売上高の5%以下です。なぜ、Lenovoは、IBMからx86サーバー事業を買収したのでしょうか。

1月に日本IBMから発表された最新世代のx86サーバー「IBM System x3850 X6」

 Lenovoがたけているのは、サプライチェーンの強みと、効率性の高さです。PC市場での成功はこれらによってなしえたものであり、薄利多売の市場ではその強みが発揮できます。Lenovoは、x86サーバー市場は、今後5年間は成長していくと考えています。特に新興国での成長が見込まれています。新興国市場はLenovoが得意とするところであり、基盤となっている市場です。Lenovoだからこそ価値が発揮できる市場だといえます。

――サーバー事業を展開する競合メーカーは、ソリューションで収益を得ようと考えています。買収戦略もそうした領域に集中しています。しかし、Lenovoにはそれらの製品、サービスがありません。それは弱みになりませんか。

 Lenovoは効率性の高い企業ですから、競合他社に比べて、ハードウェアそのもので利益を得られる体制を構築できると考えています。利益を伴った成長に取り組むことができる。これは意気込みを話しているわけではなく、すでにPCで実証済みだからこそ言える言葉です。先ほど、売上高よりも、利益の成長が上回っているとお話ししましたが、そこからも証明されていることですし、われわれにとって、x86サーバー事業の「利益ある成長」は、確信となっています。

 もうひとつは、IBMとの戦略的提携を行うという点があります。Lenovoは、ハードウェアの領域にたけていますが、IBMは保守やサービス、ソリシューションにたけている。Lenovoから提供するx86サーバーに、IBMが提供するソリューションを組み合わせることで、これまで以上の価値を提供できると考えています。長年にわたる、IBMとの強力なパートナーシップを生かすことになります。

――これは、IBMが提供するよりも、安くサーバー製品を提供できるという意味ですか。

 価格戦略については、当局の認可待ちであることからまだ詳細をお話しすることはできません。x86サーバー事業における基本姿勢は、成長戦略であり、いまよりも効率性をあげて、利益を確保するというだけでなく、ビジネスの成長にはこだわっていきたいと考えています。成長戦略において、なにが大切かというと、最も重視しなくてはならないのが、お客さまの声にしっかりと耳を傾けるということです。大切なのは、お客さまが求めている継続性や安心感を提供していくことだと考えています。

――x86サーバー事業の買収に伴い、Lenovoはソリューション領域の企業買収に踏み出す可能性はあるのでしょうか。この動きは、そこまで視野に入れたものなのでしょうか。

 システム管理ツールや一部のミドルウェアは、今回の買収でもわれわれの資産になるものがあります。しかし、将来のことについてはお話しできません。

(大河原 克行)