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パブリックIaaSに参入 VMwareの「vCloud Hybrid Service」 (顧客間で異なるパブリッククラウドへの関心)

顧客間で異なるパブリッククラウドへの関心

 だが、vCHSには欠点も指摘されている。The Registerはオブジェクトストレージなどストレージ機能がないことを挙げる。この指摘に対し、VMwareのクラウドアーキテクト、Massimo Re Ferre氏は「作業を重ねている」と回答しているという。実は、このような機能不足こそ、GartnerのHilgendorf氏が「AWSからvCHSへの大量流出はないだろう」と見る理由でもある。

 The Registerはまた、登録から利用まで「数時間」かかる点で、ユーザー体験も「数分」のAWSより劣ると評価した。こうしたことから、「VMwareの顧客でない限り、Google、Microsoft、Amazonと比較してvCHSをわざわざ利用する理由はない」とする。もちろんVMware側もこれを承知しており、Re Ferre氏は「vCHSはデータセンターの拡張に最適な技術だろう。Amazonはそれ以外のアプリケーションをサポートするのに最も優れた技術だ」とコメントしている。

 TechTargetのクラウドチャンネルは顧客の声を集めている。「まだ仮想化の段階で、vCHSを利用する準備は整っていない」という顧客もいれば、「プライベートクラウドをvCHSに拡大するよりも、構築したプライベートクラウドをどうやって保守していくかを考えている」という顧客もおり、パブリッククラウド導入が優先事項ではない企業もある。後者は「ベンダーロックインが心配だ」とVMwareのアプローチへの懸念も見せた。

 AWSがメインストリームにしたパブリックIaaSは、Microsoft、Red Hat、Google、それにHewlett-Packard(HP)などのハードウェアベンダー、そしてVMwareなどが争う市場に発展している。GartnerのHilgendorf氏は「複数の事業者が展開する余地は十分にある」と見ており、企業の多くが2~3社を戦略的なIaaS事業者として利用するだろうと予想する。

 Gartnerはパブリッククラウドの市場規模は2013年に、前年比18.5%増の1310億ドルに達すると予想しているが、中でもIaaSは最も成長率が高いセグメントとなる。2012年の成長率42.4%に続いて、2013年も47.3%の高成長率を維持すると見ている。

 VMwareが、次のメインストリーム技術となるパブリッククラウドも安定した地位を築けるか。vCHSは重要な役割を持っている。

岡田陽子=Infostand