エンタープライズはプラットフォーム時代へ-VMwareのSpringSource買収


 仮想化大手のVMwareが、Java開発フレームワークのSpringSourceを総額約4億2000万ドルで買収すると発表した。買収によって「プラットフォーム・アズ・ア・サービス」(PaaS)ベンダーへ転身を図ると説明している。両社が一緒になることで、エンタープライズアプリケーション、仮想化、さらにはオープンソースまで、さまざまな面に影響が出そうだ。

 SpringSourceは2004年に、Java開発フレームワークのオープンソースプロジェクト「Spring Framework」の開発者らが創業した。Spring Frameworkは、Java開発者とオープンソースコミュニティの人気を集めていたフレームワークで、同社は、これを核としながら、Webアプリケーション・フレームワーク「Grails」とJava仮想マシン向けスクリプト言語「Groovy」のサポートを手がけるG2Oneを、またWebアプリケーションのモニタリングツールを提供するHypericを買収。アプリケーション開発に加え、実装や管理も提供するベンダーとなった。

 このオープンソースとJavaという2つの特徴は、エンタープライズ開発者コミュニティの支持や関心を集め、SpringSourceは一躍、注目株にのし上がった。Microsoftも米証券取引委員会に提出した報告書で、SpringSourceをWebアプリケーション・プラットフォーム分野の競合企業として挙げている。

 VMwareが、そのSpringSourceを買収する意味は何だろう? 両社のCEOは、それぞれのブログで、買収のメリットとしてPaaSを強調している。つまりSpringのオープンなJava開発プラットフォームとVMwareの「vSphere」などの仮想化技術を統合し、プラットフォームをサービスとして提供。業務アプリケーションやWebアプリケーションを開発し、パブリック/クローズドなクラウドで、実装、運用・管理を行えるようになるというのだ。

 VMwareのCTO、Steve Herrod氏は、買収を発表した8月10日同日付のブログで、「一度作成したアプリケーションをオンプレミス、あるいはサービスとして、あるいは社外クラウドで動かせる」と述べている。

 VMwareはこれまでのインフラベンダーから領域を拡大し、戦略的なプラットフォームプロバイダーとして他社と競合することになる。InformationWeekは「長期的にフレームワークがクラウドへの踏み切り台となるというVMwareの予想は正しい」と評価。ComputerWorldは「アプリケーションがマシンイメージの数を決定するなど完全に自動化された世界に近づく」というクラウドコンピューティング専門コンサルTerrosa Technologiesの見解を紹介している。

 RedmonkのアナリストはComputerWorldに対し、Javaという観点からインパクトを分析して、クラウドにおけるJavaの取り組みはまだなく、両社はこの部分を進めることになるだろう、との予想を示している。企業はクラウド的環境で運用したいJ2EEアプリケーションを多数持っており、この問題の対応への需要が大きいことが背景にあるという。

 GigaOMは「プラットフォームの戦いでは、開発者獲得が最大の狙いとなり、VMwareはSpringSourceのパワフルなコミュニティを得る」と買収の目的を記している。The New York Timesは、CEOのPaul Maritz氏が語ったコメントを引用している。それによると、「伝統的なOSの役割は変化しており、開発者はOSではなく開発システムにフォーカスしている」という。Maritz氏は、自社の仮想化技術と直接結びつけることで開発者を獲得し、「VMwareが今日より大きな企業になるのに役立つ」と述べている。

 PaaSには、Googleの「AppEngine」、salesforce.comの「Force.com」、Microsoftの「Azure」などがあり、VMwareはMicrosoft、Oracle、Red Hatなど、エンタープライズ分野の大手と直接競合することになる。MicrosoftのAzureは今秋に正式ローンチを控えており、OracleもJavaのSun Microsystemsを統合して戦略を出してくるだろう。Red Hatは今年2月、Qumranet買収で獲得したオープンソース仮想化技術「KVM」を中心とした仮想化技術戦略を発表。出遅れが指摘されながらも、JBossとKVMの2本柱で戦いに挑む。

 だが、この競合でVMwareがとった開発フレームワーク内包を、ZDNet英国版は“いつか来た道”と批判する。一つのベンダーが、あらゆる問題に答えようとするなら、その答えが最善のものであるとは限らず、今回のVMwareの方向は、ベンダーロックインという負の作用を顧客にもたらすというのである。「これこそが、クラウドが解決する問題ではなかったのか」と述べ、VMwareの戦略を、Microsoftがこれまでとってきた策と同じだと指摘する。

 クラウドではこのところ相互運用性が課題となっており、VMwareとSpringSourceの合体により、「相互運用性の重要性はさらに高くなった」とElastic Vaporは記している。なお、SpringSourceは、移植性を含め、これまでのコミュニティ活動に影響はない、とブログで説明している。

 VMwareのSpringSource買収のニュースは、プラットフォームにスポットを当てた。新しい戦場で、守りのベンダー、攻めのベンダーの戦いはどうなるのか。各社が言うとおり、ITは簡素化、効率化の方向に向かっているのだろうか――。

 買収は規制当局などの承認をへて、2009年第3四半期完了の見込みだ。



関連情報
(岡田陽子=Infostand)
2009/8/17 09:04