PC小売店チェーンのCompUSAが閉鎖、世界一の大富豪でも再建ならず
米国の大手PCチェーン店、CompUSAが年末商戦後に閉鎖する。1990年代、PC市場の立ち上がりとともにコンピュータユーザーの人気を集めたCompUSAだが、ここ数年の経過は思わしくなかった。倒産の原因は、「時代の移り変わり」とも言い切れないようだ。
CompUSAは12月7日、企業再建・投資会社のGordon Brothers Groupに身売りしたと発表した。今後、Gordon Brothersの下で、103の店舗、オンラインサイト、サービスの各事業の売却・整理を進める。全店舗は年末のホリデーシーズン期間は営業し、閉店前のバーゲンセールを行っている。
CompUSAは1984年に創業、当初はソフトウェアを専門に取り扱っていたが、その後コンピュータのパーツやPC、家電製品などの分野にも拡大。PCが一般ユーザーに普及するのにあわせて、規模を広げていった。一時期は全米で200以上の店舗を構えたが、PC価格の下落とともに不調になる。
2000年にメキシコの大富豪Carlos Slim氏が同社を買収したが、再建の効果はなかなか出ず、売り上げは落ち込んだ。今年2月には126店を閉鎖して規模を半分に縮小すると発表した。同5月には、SMBとガジェット好きなコアユーザーにフォーカスするという方針を打ち出し、なんとか生き残り策を見出そうとしていた。法人ユーザーを狙うため、Microsoftと組んで、「Windows Vista Business」などのボリューム販売を他に先駆けて行ったこともあったが、建て直しは思うようにいかなかった。
オンラインIT情報サイトのCMP Channelは、CompUSAのビジネスモデルに「付加価値がなかった」と指摘している。米国ではPCは成熟市場であり、CompUSAは次のステップを顧客に提示できなかったという。また、サーバーやアプリケーションのサポートなどのビジネスチャンスがあったのではないか、と経営の失点を探っている。
これまでCompUSAを所有していたSlim氏は、メキシコの旧国営テレコム会社Telefonos de Mexisoの会長で“通信王”として知られる。その資産は、MicrosoftのBill Gates会長を上回って世界一となったこともある。Fortune誌によると、Slim氏は買収当時のインタビューで、CompUSA取得の理由を「消費者に製品やサービスを販売し、デジタル文明とどのように付き合うかを啓発するにあたって、リアル店舗は重要だ」と語っていたという。
鋭い投資勘で知られるSlim氏だが、CompUSAでは総額20億ドル以上を投じた後に失敗を認める。Fortuneは、Slim氏が今年3月に語った「CompUSAの経営を誤った」というコメントを引用しながら、「(Slim氏の予見は外れ)オンライン時代、ユーザーはDIYモデルを好んだ」と結論づけている。
だが、小売店ビジネスが皆不調というわけではない。最大手のBestBuyはもちろん、CompUSAの3倍近くの売上高を誇る小売店のCircuit Cityは、CompUSAが苦境に陥っていた2001年に“スーパーストア”というモデルを一部店舗でとる。広いスペースで消費者は自由に製品を試せるというものだ。同じくFry's Electronicsも幅広い品ぞろえで、顧客の支持を集めているようだ。また、商品が限定される米Appleの直販店Apple Storeも好調だ。
一方、この間に台頭したオンライン販売モデルを見ると、台湾Acerに買収された米Gateway、一時の勢いが落ちた米Dellなど必ずしもすべてが成功しているとはいえない。Dellはこのところ、小売店チャネルを開拓している。
CompUSAの破綻を一番よく説明してくれるのは、おそらく消費者だろう。CRNの読者フォーラムでは、CompUSA閉鎖のニュースに対し、「スタッフの態度が横柄だった」「保証、返品などへの対応がスムーズではなかった」「顧客を大切にしなかった」「安値で提供という当初のモデルを維持しなかった」などのコメントが次々に書き込まれた。
いつの時代、どんなビジネスでも「客あっての商売」は真理だろう。CompUSAの失敗には、これをうまく実現できなかったという面がありそうだ。