AppleとGoogleが急接近-動画で提携?
米Googleと米Apple Computerの両社の動きが米メディアをにぎわせている。検索最大手と、いまやオンライン音楽サービス最大手でもあるAppleの組み合わせは何を狙うのか―。両社が見据えているのは、どうやら動画関連のサービスらしいことが浮かび上がってきた。
両社の関係がクローズアップされたのは、8月29日、Google会長兼CEOのEric Schmidt氏がAppleの取締役に就任するという発表がきっかけだ。リリースのなかでApple CEOのSteve Jobs氏は「Ericの洞察と経験は、今後のAppleを考える上で非常な価値を持つことになるだろう」と述べた。だが、これが具体的に何なのかを両社の広報担当者が説明しなかったため、よりいっそうメディアの関心を引く結果になったようだ。
もともと両社は、地理的にシリコンバレーにあるというだけではない、近しい関係にある。バイオテクノロジーの米Genentechの会長兼CEOであるArthur Levinson氏は、AppleとGoogleの両方の取締役を兼務している。またAppleの役員である元副大統領Al Gore氏らはGoogleにとっての長年のアドバイザーとして知られる。
そこへ、Schmidt氏までが参加して、Appleの8人の役員の半分が、Googleと関係の深い人物で占められる、という状態になったのだ。さらに、両社の関係を示唆する“事件”が起こった。
「It's Showtime」と銘打って9月12日にサンフランシスコで開かれたAppleの新製品発表会に、Googleの検索製品担当副社長、Marrisa Mayer氏が姿を現した。
米Forbesによると、Mayer氏は報道陣が入場しようと待っている前を通って会場に消えていったという。報道陣の間にはどよめきが起こったが、メディアに出ることも多いMayer氏はこの時、一切コメントせず、また発表会で登壇することなかったという。これでさらに憶測がとびかった。
そこへ翌週、米Newsweek誌の9月25日号が、動画関連で両社の間で話し合いが持たれていることをMayer氏が認めたと伝えた。ただし、それ以上の具体的な発言は紹介しておらず、詳細は明かしていないもようだ。
「It's Showtime」のイベントでは、iPodの新モデルや「iTunes」の新バージョンなど多くの発表があったが、とりわけメディアの注目をひいたのが動画ダウンロード販売への進出だった。
そして、開発中の新製品「iTV」も発表された。インターネットのストリーム配信に対応し、LAN内にあるMacの「iTunes」と連動して動画や写真の再生ができるデジタル・セットトップボックスで、来年2007年第1四半期に299ドルで発売する予定という。
Appleは2001年に「Digital Hub」構想を発表して、リビングルームへの進出を図ってきた。これがGoogleとAppleが組む分野だとするとインパクトも大きい。Newsweek誌は「来年、iTVが出荷される時には、Google Videoからビデオアイテムを選択できるようになっているかもしれない」と述べている。
動画ダウンロードは、今、最も活発に動いている分野だ。Appleの発表直前の9月7日には米Amazon.comが「Unbox」という動画ダウンロード販売を開始した。これまで映画会社が間接的に支配していた映画のオンライン販売に、オンライン小売の代表2社が同時に参入したことになる。
しかし、ダウンロード販売がどれだけ伸びるかには、慎重な見方もある。米Jupiter Researchの最近の調査では、欧州のiPodユーザーで1カ月に1回以上ダウンロード音楽を購入している人は17%にとどまり、iPod 1台あたりのオンラインで購入された楽曲は5%にすぎないという。こうした実態は、オンライン販売に影を落としているとJupiterは結論づけている。
AppleとGoogleは、こうした中でなにか計画を進めている。そして両社は、単なる検索エンジンやコンピュータメーカーの会社でなく、それぞれが広告プラットフォームであり、音楽サービスであるという多彩な顔を持っている。提携の成果は、これらの組み合わせの中から出てくることになるだろう。
両社の動きは、なお注目の的となっている。