クラウド&データセンター完全ガイド:イベントレポート
Solutions Forum 2013 DCIM Day
2014年4月2日 10:57
シュナイダーエレクトリックは、2013年7月18日に大手町サンケイプラザでSolutions Forum 2013 DCIM Dayを開催した。多くのセッションが行われたなかから、来日して登壇したVP Enterprise Management and Softwareのソーレン・ブロガード・イェンセン氏のゼネラルセッションでは「DCIMが企業にもたらす"力"と可能性」と題した講演を行った。ここでは、その概要を紹介する。
DCIMが企業にもたらす“力”と可能性
現在は、「多くのデータセンターでファシリティとITが断絶している」。いまDCIMが注目されている背景だ。ファシリティ側では、建物自体や電源、空調といったクリティカルな設備や機器を監視し、管理しているが、これらは比較的変化がなく安定している。一方、IT側ではデータの増加やサーバーの仮想化、モバイルデバイスの登場、クラウドの普及、ビッグデータなど、どんどん変化している。ファシリティ側にはコスト削減やエネルギー効率が課題であり、IT側ではサーバーの利用効率や規制への対応などが課題となっている。この2つの世界をひとつにまとめて管理するために必要なのが、Data Center Infrastructure Management(以下、DCIM)である。ファシリティとITを統合し、俊敏性や可用性を備え、ビジネスをサポートすることが、DCIMに期待されている。DCIMの普及率は、日本においてはまだ初期段階であるが、グローバルでは5%から10%となっている。
DCIMの目的は、4つある。まずひとつめはキャパシティプランニングである。その中には、電力、冷却能力、ネットワーク、スペース、ITレベルでのエネルギー消費などが含まれる。2つめは資産の可視化だ。どのような資産がどこにあり、どのようにつながっているかを可視化する。3つめは可用性である。長年の間、データセンターの構築においては可用性を高めることが主な目的であり、どのようなコストをかけてでも可用性を高めるのが一般的だった。しかし、エネルギー危機や原材料価格の上昇などの影響により、可用性とコストのバランスが重要視されるようになってきた。最後に、エネルギーの節約である。全体の受電量と有為な仕事をしている電力量のバランスをとるために、DCIMは不可欠なものとなっている。これらの目的に対して設計、実行、運用、評価というライフサイクルでニーズを分析し、システムの改善を指示するのがDCIMである。ファシリティとITを統合管理するプラットフォームとしてシュナイダーエレクトリックが提供するのが「StruxureWare for Data Centers」であり、リアルタイムで意思決定やキャパシティプラニングを支援する。
DCIMによる具体的なシナリオ
イェンセン氏は、DCIMによって何が実現するのか、データセンターで働く役割ごとのシナリオで紹介した。
シナリオ1は「実行者」の視点である。データセンターの中でITサービスを実行する立場である彼らにとっては、さまざまなリクエストが単発的にばらばらに来ること、それらを解決するために多くの人の合意が必要で、時間がかかることなどが課題となっている。つまり、彼らには共同作業、進捗管理、トラブルシューティング、リクエスト対応などをリアルタイムで管理するツールが必要だ。解決策としては、チケットの集中管理によってリクエストの優先順位・配布の進捗管理をDCIMで行うことができる。また、モバイル端末によってリアルタイムでアラート情報を受信し、コラボレーションツールで適切な解決策を指示するといったモバイルレスポンスも実現する。そして、顧客からのリクエストに応じて、リスクとそのインパクトおよび解決策を確認することで、リスクを検知できる。
シナリオ2は「計画者」の視点である。環境資源、IT、エネルギーなどの将来的なニーズを予測する立場の人には、ビジネス側と技術側と連携し、精度の高い予測と戦略的な見地に基づいた計画ツールが必要だ。DCIMによる可視化により、拡張、スペースプランニング、サービスプラニング、シナリオプランニングにおいて、必要な担当者が必要な時に見て迅速に対応できるようになる。
シナリオ3は「戦略決定者」の視点だ。今後の方向性、拡張計画、新しいデータセンターの場所などを決定する場合、通常はパワーポイントやエクセルで資料を作り、役員会議で取り上げるなどというプロセスとなる。その場で解決しないことも多い。そこで、さまざまなデータに基づいた分析的なアプローチが必要となる。DCIMによってさまざまなサポートが可能だ。たとえば、立地や電源・冷却・ネットワークなどにおいて適切なサイトの選択や、販売情報とファシリティ分析の情報を統合してビジネス戦略を策定するといったことができる。また、複数のデータセンターの実データおよび標準化されたデータを用いて、ファシリティの利用率・成長計画を報告するファシリティレポートも有用だろう。
DCIM 2.0への期待
DCIMによるイノベーションは、まずデバイスやネットワークの可視化から始まる。第二段階が、収集したデータを分析し、さまざまな指標で見やすいビューを提供することだ。それにより、将来のリスク予測などに役立てることができるようになる。つまり、DCIMとは、データセンターのライフサイクルを通して、その資産、リソースの使用状況・運用状況などのデータを収集・管理するシステムであると同時に、収集された情報はデータセンターを最適化するために利用されなければならない。それも、設備やシステム上の要求から最適化されるのではなく、ビジネス上の要求やサービスからの要求に対する最適化が目的となる。それが、DCIM 2.0だ。そのためには、DCIMを3つのステージに分類する。ひとつめは物理インフラで、電源や冷却、スペース、物理セキュリティなどをいかに統合するかが課題である。次に、監視や自動化、制御といった機能の統合。そして3つめにはライフサイクルである。これがDCIMの最大価値を得るために重要だ。システムの課題は、監視、運用、サスティナビリティにある。これらを解決することで企業の競争力を高めることがDCIMの目的となる。監視においては、詳細な電源分析や機器の管理、ITフロア監視が必要だが、ITフロア監視ではインテルとパートナを組み、機器および各センサからのリアルタイムデータ収集により現況を把握するとともに、異常の場合はアラームを発する。また、サスティナビリティではエネルギーマネージメントという新しいニーズが生まれている。セッションでは、Struxure Wareの実際の画面で、どのような機能を提供するかをいくつか紹介した。StruxureWare Portalは、各データストリームやKPIでの表示をタブで切り替えてみることができる。運用担当者から事業戦略にかかわる場面まで、同じデータから見る人に合わせたビューを提供することができる。イェンセン氏は最後に「StruxureWare for Data Centersは、DCIMアプリケーションの統合スイートであり、複数ドメインのデータセンターのライフサイクルにまたがって、高い可用性と高い効率性の最適なバランスの実現に必要な高度な情報を提供し、そのビジネスの繁栄をもたらすソリューションである」と述べ、これがDCIM 2.0の定義であるとした。