クラウド&データセンター完全ガイド:プロダクトレビュー DCを支える黒子たち

HPC/AIのワークロードを最適化する高性能プラットフォーム――HPE Apollo 6500 Gen10 Plus System

弊社刊「クラウド&データセンター完全ガイド 2021年春号」から記事を抜粋してお届けします。「クラウド&データセンター完全ガイド」は、国内唯一のクラウド/データセンター専門誌です。クラウドサービスやデータセンターの選定・利用に携わる読者に向けて、有用な情報をタイムリーに発信しています。
発売:2021年3月31日
定価:本体2000円+税

HPE Apollo 6500 Gen10 Plus System

だれもがデータ活用を目指すエクサスケール時代

 今やデータ活用は、既存のビジネスを強化して新しい競争力を身に付け、戦略的な優位性を獲得するために必要な取り組みと捉えられている。金融・製造・小売・ヘルスケアやライフサイエンスなど多種多様な業種で変革が進んでおり、データ活用の要となるHPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)やAIへの投資が加速している。

 HPC/AIは、最も厳しいコンピューティング要件を求めるワークロードの1つだ。ビジネスで蓄積された膨大なデータをできるかぎりのスピードで有効活用するためには、非常に高速で安定的に稼働し、将来的な拡張性や柔軟性にも富んだプラットフォームが必要となる。ビジネスの要となるデータを扱うために、セキュリティも重要だ。もちろん、HPC/AIワークロードの管理負担やコストも無視することはできない。

 日本ヒューレット・パッカードのHPE Apolloシリーズに加わった「HPE Apollo 6500 G en10 Plus System」は、“エクサスケール時代”のアクセラレーテッドコンピューティングをさらに強化するプラットフォームである。

ハイパフォーマンスで柔軟性・運用性・安全性に富む

 HPE Apollo 6500 Gen10 Plus Systemは、最新のNVIDIA A100 Tensor Core GPUを搭載した「NVIDIA HGX A100 8-GPUアクセス基盤」「NVIDIA HGX A100 4-GPUアクセラレータ」に対応し、最大12基のNVIDIA NVLinkによって600GB/秒の帯域幅を実現できる。また、「AMD Instinct MI100アクセラレータ」やその他のHPC/AI向けPCIe GPUも幅広く対応している。

 いずれも「AMD EPYC 7002シリーズプロセッサー」を採用したシングル/デュアルプロセッサーシステムがラインアップされている。NIVIDIA Mellanox HDR InfiniBandと統合され、GPU 2基ごとに最大200GB/秒の帯域幅を追加できる。ワークロードの要件に合わせて、電力・周波数・コア数を選択して最適化させられる。

 最大16台のフロントアクセス可能なストレージデバイス、SAS/SATAソリッドステートドライブ、最大6台のNVMeドライブを搭載するほか、ニーズに応じて「HPE SmartMemory」や「HPE Smartアレイコントローラー」をオプションで選択することも可能である。

 ハイパフォーマンスを維持するための冷却システムには水冷ソリューション(DLC)が採用されており、HPEの工場で事前に構築・充填して完全に統合された状態で納品される。もちろんラックへの収納が可能で、既存の送水設備との接続機能も備えている。DLCによって冷却機能を強化し、電力密度の向上や所有コストの低減を見込める。

 ネットワーク機能は、従来型のEthernetのほか、InfiniBandや「HPE Slingshot」などの高性能ネットワークにも対応しており、高速なファブリックを形成できる。

 セキュリティについては、リモートサーバー管理ツール「HPE Integrated Lights-Out(iLO)」に対応しており、「HPE Silicon Root of Trust」の機能によって、万が一ファームウェアが侵害されても迅速かつ自動的に正常な状態に復旧することが可能だ。また、AMD EPYCのシステムオンチップ(SoC)に組み込まれたセキュリティプロセッサー「AMD Secure Processor」によって、高度なセキュリティ機能を提供している。

 一方で、モジュラー設計によってすべてのコンポーネントへのアクセスが容易で、完全な冗長電源が採用されており、安定性・運用性にも優れる。「HPE Performance Cluster Manager」を用いることで、統合的で効率的なクラスターシステムの管理も実現される。