2026年7月10日 09:00
生成AIの躍進により、データセンターは未曾有の電力問題に直面している。高消費電力なGPUサーバーの導入には、かつてない電力容量と高密度な電源設備が不可欠だ。しかし、既存施設の改修には物理的な限界があり、新設するにも用地確保や建設リソース不足により数年を要するというリードタイムの壁が立ちはだかる。この喫緊の課題に対し、リチウムイオン電池採用の高効率UPSとコンテナ型モジュール式電源で対応するファーウェイの最新ソリューションを紹介する。
急増するAI需要が突きつけるデータセンターの電力課題
生成AIの本格普及に伴い、GPUをはじめとする高消費電力ハードウェアの導入が加速し、データセンター需要が拡大している。しかし、そこで直面しているのが、次の3つの課題だ。
1つ目は、電力容量の確保。AIデータセンターは通常のクラウドデータセンターと比べて消費電力が圧倒的に大きく、その十分な容量を確保しなければならない。必然的に電気設備の設置に大きな面積を必要とするため、データセンター全体の設計やスペース効率にも大きな影響を及ぼす。
2つ目は、高密度化するIT機器への対応。GPUを搭載したAIサーバーはラックあたりの電力密度が高く、従来の電力設備では対応が難しい。
3つ目は、電力使用効率と運用コスト。とりわけ日本は諸外国と比べて電気料金が高いことから、AIデータセンターのように大量の電力を使う施設では、PUE(電力消費効率)をどこまで改善するかが重要となる。
では、既存のデータセンターをAIデータセンターへ改築することは可能なのか。端的に言えば、できないことはないが限界がある。区画単位で部分的にAIサーバーに対応させることはできても、建物全体を全面的に改築するのは非現実的だ。AI利用を前提とするなら、現状では新設が基本路線となる。
とはいえ、それも決して簡単ではない。まずは立地の問題がある。データ需要が集中する東京や大阪、名古屋といった都心部は、ただでさえ地球温暖化やヒートアイランド現象といった問題に悩んでおり、PUEの改善には限界がある。北海道のような寒冷地であれば外気を活用した冷却も可能だが、そこには十分な需要がない。
加えて深刻なのが、データセンターの建設工事に関するリソース不足だ。建設業界は慢性的な人手不足にあるうえに、さまざまな資材の調達難により発電機をはじめとする機材の納期の長期化も常態化している。したがって仮に今すぐ用地を取得できたとしても、データセンターが稼働するのは2~3年後になりかねない。
AI向けGPUのイノベーションは速く、その頃にはすでにテクノロジーは次世代へと移り変わっているだろう。スピードが何より求められるAIの領域に対して、データセンター新設に要するリードタイムとのギャップは致命的に大きいと言わざるをえない。
高効率UPSで電力ロスと空調負荷を抑制
日本におけるAI活用の将来は、八方ふさがりの状況にあるのだろうか――。
しかし、そうした中にも光明が差してきた。注目されるのは、ファーウェイが提供しているAIデータセンター向け電源ソリューションだ。そこに大きく3つの強みがある。
まずは、業界トップクラスの変換効率を誇るUPS(無停電電源装置)。データセンターは規模が大きくなればなるほど大量の電力を消費するため、UPSの変換効率がほんの少し向上するだけでも、節約できる電力量は莫大になる。
通常のUPSは、交流で受けた系統電力をいったん直流へ変換し、再び交流へ戻してサーバーへ給電するが、この過程で必然的に変換ロスが生じる。これに対しファーウェイのUPSがオプションとして提供する「S-ECOモード(スーパーエコモード)」は、交流で受け取った電力をバイパスし、直流への変換を介さずそのままサーバーへ給電する。
ファーウェイ・ジャパン デジタルパワー事業本部 データセンターファシリティ&クリティカルパワー事業部 ソリューション部 電源ソリューションマネージャーの伍 運祥氏(写真1)は、「当社UPSの変換効率は、S-ECOモードで最大99%の高い変更効率に達します」と強調する。
こうしたS-ECOモードを安定運用するためには、ノイズ対策をはじめとする信頼性が欠かせない。背景にあるのは、ファーウェイが電子機器で培ってきた省エネ設計に関する豊富な知見だ。特許を含むその高度な技術を電源ソリューションに応用することで、他社の追随を許さないUPSを実現したのである。
電力の変換効率の高さは、副次的な効果ももたらす。変換ロスが削減されれば無駄な発熱が抑えられ、その分の空調負荷も軽くなる。つまりUPSの効率改善は、発熱を冷却するための空調電力までを含めれば、その数値以上の節電につながる(図1)。
高密度設計とコンテナ化で省スペース・短工期を実現
2つ目のポイントは、電源設備の高密度設計。前述したとおり、GPUを搭載したAIサーバーはラックあたりの電力密度が非常に高くなるが、電気設備側には物理的な制約があり、同じ面積で2倍、3倍の容量を詰め込むのは難しい。
結果として電気室の面積は電力に比例して膨らんでいき、データセンターの半分以上を電気室が占めてしまうことさえある。これに対してファーウェイのUPSは、同一容量でも他社比で約60%の設置面積に収まるよう設計されており、限りあるデータセンターの床面積を有効に活用できる。
なぜこれが可能なのか。ファーウェイのUPSは、従来の鉛蓄電池に代えてリチウムイオン電池を採用しているのが最大の要因だ。リチウムイオン電池は鉛電池に比べてエネルギー密度が約3倍あり、要するに単純計算で蓄電池スペースを3分の1に圧縮することができる。
それだけではない。鉛蓄電池の寿命が一般的に5〜7年程度であるのに対し、リチウムイオン電池は設計寿命が15年とされているため、交換サイクルを2~3倍に延長することが可能である。これによって得られるのがコストメリットだ。
「初期費用こそリチウムイオン電池は鉛蓄電池よりも高額ですが、7年後に鉛蓄電池の交換が必要になった時点でTOCは逆転することになります」(伍氏)
また、日本市場ではまだリチウムイオン電池の価格は、鉛蓄電池と比べて割高という印象があるが、近年両者の価格差は急速に縮まっている。それだけにリチウムイオン電池を採用したファーウェイのUPSのコスト優位性は、今後さらに際立っていくと考えられる。
そして、ファーウェイの最大の強みと言うべき3つ目のポイントが、コンテナ型モジュール式電源だ。
従来のデータセンターでは建屋内のサーバールームに隣接して電気室を設け、UPS、バックアップ用蓄電池、空調、照明などの電源設備一式を収めてきた。これに対してファーウェイのコンテナ型モジュール式電源は、そうした電気室を「丸ごと建屋の外へオフロードする」という発想に基づいている。
「現地にコンテナを設置するだけで電源環境が整うため、建設工事を極限まで削減でき、建物面積そのものも縮小できます。設置コストと建設コストの双方を抑えられる点は、工事リソースが逼迫している日本市場で特に大きな意味を持ちます」(伍氏)
コンテナはコンプライアンス対応も容易になる。リチウムイオン電池をデータセンター内に設置する場合、電解液量が一定以上になると消防法上の申請や建物の耐火性能に関する要件が厳しくなる。これに対してファーウェイのプレハブ型モジュール式電源ソリューションは、リチウムイオン電池をコンテナ単位に分散して配置できるため、電解液量の管理が厳密になり、消防署への申請もスムーズに行うことができる。コンテナ自体が耐火性能と消火設備を備えていることも安心材料だ。
将来需要に備える
ファーウェイのAIデータセンター向け電源ソリューションの進化はとどまることがない。
ファーウェイ・ジャパン デジタルパワー事業本部 データセンターファシリティ事業部 事業部長の馬 振華氏(写真2)は、「より高密度な直流800V対応のUPSや液冷システムなどを中心に、重点的な強化を図っていきます」と方針を示しており、AIデータセンターを取り巻く新たな要件や需要に先駆的に対応していく考えだ。
本稿では電源ソリューションにフォーカスしてきたが、冷却ソリューションも提供していることはファーウェイの大きな強みだ。ファーウェイはAIデータセンターに必須とされている液冷システムをいち早く市場に投入している。電源と冷却をワンストップで提供できるファーウェイはデータセンターの最適化を切に願う事業者にとって、頼もしいパートナーとなるだろう。
ファーウェイ・ジャパン(華為技術日本株式会社)
https://digitalpower.huawei.com/jp/data-center-facility
Email:energyjapan@huawei.com







