特別企画

「実はシェア1位のネットワークメーカー」と共同開発したテックウインドのOpenFlow対応スイッチ

 テックウインドは、PCパーツ、周辺機器などの販売代理店としてビジネスを展開している企業だ。インテル、マイクロソフトをはじめ、ウェスタンデジタルやASUS、QNAPなどさまざまなメーカーの製品を取り扱っている。

 一方、OpenFlowに代表されるSDN(Software Defined Network)が話題を集め、ネットワーク製品への注目が高まっている中、テックウインドは新しいネットワークスイッチ製品のブランド「Estrade」を1月30日に立ち上げた。

 台湾の大手ネットワークメーカーと提携して製品開発・生産を行い、高機能かつ低価格を実現した点が特徴というが、その魅力は何なのか。同社のプロダクト・マーケティング部部長の木村昇氏とプロダクトマネージャーの中村文賢氏に話を聞いた。

初提供だが“実績に支えられた”スイッチ

AS4600-54T

 ブランドの第1弾として1月に発売されたのは、エントリーモデルにあたるボックス型スイッチ「AS4600-54T」だ。1000BASE-T×48ポートと、10Gigabit Ethernet(GbE) SFP+×4ポートを備える高密度型で、一般企業での社内スイッチ用途から、データセンターでのトップオブラック(ToR)用途まで、幅広い環境での利用に対応する。

 このように、ポート密度や拡張性に優れる点もさることながら、木村氏によれば、特筆すべき点は、このスイッチで利用されている技術なのだという。

 「Estrade」のOEM元になっている台湾のネットワークメーカーは、これまでもさまざまな大手ベンダーのOEM/ODMとして、スイッチ製品の開発・製造を手掛けてきた。実は、「AS4600-54Tを製造しているメーカーでは、ほとんどの世界の大手ネットワーク機器ベンダーの製品を生産しており、スイッチのOEM/ODMとしては、売り上げベースで世界ナンバー1です」(木村氏)というのだ。

 特に最近では、クラウド事業者と呼ばれるような大型インターネット事業者が、そのスケールメリットを生かして、自社でハードウェアを設計したり、大手ネットワークベンダーを介さずにODMメーカーから直接調達したりする動きが見られるようになった。「そうした"ホワイトボックス"を手掛けてきた実績も多く持つベンダーが製造した製品だけに、品質面でも機能面でも大手ベンダーとまったく遜色がないものを提供できるのです」と木村氏は話す。

柔軟かつ高機能なソフトウェアが特徴、OpenFlowもサポート

プロダクト・マーケティング部部長の木村昇氏

 そしてAS4600-54Tについても、OEM元が持つこうした技術と実績が存分に生かされている。

 スイッチのソフトウェア構造としては、Linux(2.6.34)ベースの基盤上にネットワークOSが乗り、そのモジュールとしてレイヤ2やレイヤ3の機能が搭載される、といったモジュール型を採用することで、安定性を向上させているのだ。

 さらにユーザープログラムを組み込んで、スイッチの上で動作させ、APIでスイッチの機能を制御することも可能。現在、ルーティングソフトウェアのQuaggaに対応しているほか、ニーズの高い統合監視ツールZabbixのエージェントや、IaaS基盤ソフトOpenStackのエージェントなども計画している。もちろん、ユーザー側で独自のソフトを搭載することも可能という。

 また、一般的なレイヤ2/レイヤ3の機能に加えて、OpenFlow v1.2に対応しているため、SDN環境の構築にも適用できるのは、ユーザーにとってうれしいところだろう。「レイヤ2モデルでは59万8000円からという低価格でもOpenFlowを用いたネットワークを構築できるので、OpenFlowの検証機としても最適です」と、木村氏は強調する。

 なおOpenFlowには、レイヤ2/3の機能と同じ層のモジュールで対応している。「通常のプログラムではなく、ネットワークOSのモジュールとして実装しているところが性能的に有利な点でしょう」と、木村氏はその価値を説明した。現在、各種OpenFlowコントローラの互換性検証を進めており、今後も随時増やしていく考えである。

 なおOEM元では、スタンフォード大学出身のOpenFlow技術者を中心に、OpenFlow専任のチームを設けて開発にあたっているとのことで、そうしたバックボーンを持つ点も、安心して提供できる理由なのだという。

 また、ファブリックスイッチとしての利用も想定しており、TRILLに加えて、VXLANなどへの対応も予定している。OEM元が米国で手掛けた事例では、サーバー2万台規模のデータセンター内のネットワークを、BGP/OSPFでルーティングするレイヤ3ネットワークで構築した事例もあるとのこと。

 「最近では、インターネットからのトラフィックより、データセンター内のEast-Westと呼ばれる(サーバー間の)トラフィックが多くなってきたため、ファブリックが必要となっているといわれます。その規模のネットワークを、特別なシャーシ型のコアスイッチを利用しなくとも、トップオブラック向けのラック型のスイッチを中心に、ファブリックやOpenFlowで柔軟に構築できるようになってきています」と木村氏は語った。

現在は3製品をラインアップ、10GBASE-Tの高密度型も

プロダクトマネージャーの中村文賢氏

 なおAS4600-54Tに加えて、12月に先行して発表されていた「AS5600-52X」および「AS5600-52T」の2機種も、「Estrade」ブランドに統合された。すべて同一のOEM元から提供されており、AS4600-54Tと同等のソフトウェア機能を利用できる。

 ネットワークインターフェイスは、いずれも40GbE×4ポートと10GbE×48ポートを装備するが、10GbEポートとして、AS5600-52Xは光トランシーバーのSFP+を、AS5600-52TではRJ45の10GBASE-Tを備えている点が違いとなる。

 これらの製品について中村氏は、「いずれも、データセンターのトップオブラックスイッチとしての用途を想定していますが、高価な光トランシーバーの価格を考えると、一般的には10GBASE-TのほうがSFP+よりコストが大きく下がりますし、配線の取り回しもやりやすい。そうしたニーズに応えたのがAS5600-52Tです」と説明する。

AS5600-52T

 またAS5600-52Tでは、データセンター以外に、企業内でのGbE(1000BASE-T)スイッチからの置き換えも想定しているという。最近、インテルが提供しているサーバーのリファレンスモデルでは、オンボードのNIC(ネットワーク・インターフェイス・カード)が10GBASE-Tに変わるなど、インターフェイスの高速化の動きが見られている。

 AS5600-52Tではこうした動きにいち早く対応できるほか、従来の主流であった1000BASE-Tなども引き続きサポートしているので、段階的な移行も可能な点がメリットだろう。

 また3機種とも、40度での動作を保証しているため、通常のデータセンターよりも高温での動作が求められる外気冷却のデータセンターに対応。ファンの向きを変えることにより、エアフローを前面排気と背面排気とで切り替えられる点も便利だ。またデータセンターなどで、ACとDCを何度も変換することによるロスを避けるために検討されているDC給電のニーズを考慮し、DC12V電源にも対応している。

 各製品とも、レイヤ2とレイヤ3でライセンスが分かれているので、企業は自社に必要な製品を選択して導入でき、レイヤ2で購入しても、あとからレイヤ3へアップグレード可能。テックウインドでは3年のセンドバック保守サービスを標準で提供するほか、5年への延長や、先出し交換サービス、オンサイト保守へのアップグレードも可能だ。

 レイヤ2モデルの参考価格は、AS4600-54Tが59万8000円、AS5600-52Tが158万円、AS5600-52Xが178万円。レイヤ3モデルの参考価格はそれぞれ69万8000円、178万円、198万円。いずれも、冗長電源にオプションで対応する。

 なおテックウインドは、評価機貸し出しサービスも提供しているので、「ぜひ最先端の技術を試してほしい」と、中村氏はアピールしていた。

(高橋 正和,石井 一志)