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「フラットなL2ネットワーク」を目指すネットワーク業界のアプローチ【第二回・ブロケード】


 データセンター向けのレイヤ2(L2)ネットワークの世界でいま、ベンダー各社がそれぞれの方法で、新しい「フラットなL2ネットワーク」の技術を推進してきている。

 各社のアプローチや実現技術は異なるが、いずれも「マルチパスイーサネット」や「イーサネットファブリック」などとも呼ばれる技術で、ループになるような冗長経路も含む物理的なネットワークを1つ作り、その中で2点間の経路などを動的に設定して構成していくのが特徴だ。

 このシリーズ記事では、こうした新しいL2ネットワーク技術について、ベンダーごとに、各社が採用する技術を、実際に製品に反映していく戦略と合わせて話を聞いた。第2回は、マルチパスイーサネット技術としてTRILL(Transparent Interconnection of Lots of Links)技術を採用する、ブロケード・コミュニケーションズ・システムズ株式会社(以下、ブロケード)の新ネットワーク技術について取り上げる。

 

L2でルーティングするTRILL

 TRILLも前回のSPBと同様に、物理的なネットワーク上でイーサネットフレームの経路を動的に設定して論理的なネットワーク構造を作る、マルチパスイーサネット技術だ。イーサネット上をトンネリングしてデータを遅るというのも、TRILLとSPBで共通している。なお、TRILLはIETFで標準化され、RFC 6325ほかで仕様が定められている。

 SPBについておさらいすると、SPBではイーサネットフレームを、ほかのイーサネットフレームまたはVLANでまるごとカプセル化することでトンネリングする。それに対してTRILLでは、イーサネットフレームのヘッダを拡張することで元のイーサネットフレームをカプセル化する方法をとっている。

 このカプセル化している外側のイーサネットフレームは、SPBでは一般的な種類のフレーム、TRILLでは専用の種類のフレームだ。この違いは、データを送る方式の違いにも関係している。SPBではノードごとに最短経路のツリーを持って2点間でデータを送信する。それに対してTRILLでは、途中のノードごとにヘッダを書き替えて次のノードに伝送する、L2でのルーティングの方式をとっている。


TRILLの動作例(資料提供:ブロケード株式会社、以下同じ) SPBM(SPB MAC)の動作例

 

FCやInfiniBandなどと整合性のあるイーサネット技術

レイヤ2のフラットなネットワークを実現するイーサネットファブリック
ブロケードでは、同じデータセンターのネットワークでFCとイーサネットを整合させることを想定し、FSPFを採用
SPBとTRILLの比較

 フラットなL2ネットワークを指す言葉の1つ「ファブリック」は、もともとファイバチャネル(FC)などで使われていた言葉だ。FCのファブリックは、イーサネットに似た相互接続構成だが、マルチパス構成による冗長化やルーティングなどの機能を持っている。イーサネットファブリックという言葉は、FCのファブリックに似た機能をイーサネットで実現するものといえる。

 ブロケードはもともと、FCなどのSANスイッチで大きなシェアを持っている会社であり、LANの世界でもさまざまな製品をリリースしている。「SPBやTRILLなどは、私はファブリック技術だと考えています」と、ブロケード データセンターテクノロジー部 部長の小宮崇博氏は言う。

 ブロケードではTRILLを採用しており、すでに対応製品も出荷している。小宮氏は「すでに使われているFCやInfiniBandなどと整合性のあるファブリック技術をイーサネットで実現するために、ブロケードはTRILLを使った」と説明する。

 TRILLではSPBと同様に、経路制御プロトコルに主にIS-IS(Intermediate System to Intermediate System)が想定されている。しかしブロケードでは、FCで使われているFSPF(Fabric Shortest Path First)を採用した。これも、同じデータセンターのネットワークでFCとイーサネットを整合させることを想定してのことだという。

 「イーサネット系のベンダーは、ストレージ系について何もせず透過させるだけ、という立場ですが、ストレージ系から見るとそれは困る。全部iSCSIで、という方法もありますが、特に大規模ユーザーほどすでにFCが使われている現実があります」と小宮氏は主張する。

 小宮氏は、TRILLのSPBに比べた利点として、等コストなマルチパス(ECMP:Equal Cost Multi Path)による冗長化を挙げる。TRILLが独自のフレームを定義するのに対し、MAC in Mac技術によるSPB(SPBM)は通常のイーサネットフレームでカプセル化するため、いまあるスイッチをファームウェアアップデートするだけで対応できるという特徴がある。

 「しかし実際には、ECMPに実現するにはヘッダの追加が必要になる。そうすると、結局はSPBでも対応機器が必要になります」と小宮氏は言う。一方、VLANを使ったQ-In-Q技術によるSPB(SPBV)であればECMPに対応できるが、「VLANの消費が激しく、運用性の面で使いづらいでしょう」と小宮氏は言う。

 小宮氏によると、SPBはデータセンター内からメトロまでの規模を想定しており、大規模にスケールするときには難しい問題があるだろうという。「TRILLはデータセンター内のみを想定していて大規模は想定していません。ただし、データセンター内については、TRILLとSPBVの真っ向勝負というのはありえます。その場合、TRILLかSBPVかより、運用性や仮想化、SANとの整合性などの製品力の差になるでしょう」。

 TRILLの利点を語る小宮氏だが、「SPBは駄目、というつもりはありません。いまはデータセンターにフォーカスしてTRILLを採用していますが、SPBはIEEEの標準ですし、必要があれば採用するこもともありえます。また、今回の趣旨とは違いますが、OpenFlowにも対応します」と念を押す。

 また、ブロケードは将来的にはデータセンター間のフラットなL2接続も計画しており、そこではTRILLではなく、マルチベンダーのアーキテクチャであるCloudPlexを推進している。「例えばパブリッククラウドとユーザー企業のデータセンターをフラットなL2ネットワークで結ぶときに、ユーザー企業側に高価な専用機材を置くのは難しい。そのため、ソフトウェアでも実現できるようにしています」。


マルチベンダーのアーキテクチャであるCloudPlex SPBとTRILLにはそれぞれ得意な領域があり、要件に応じたソリューションの選定が必要とのことだ

 

すでに製品を出荷し導入事例も公開

Brocade VCSに対応したVDXシリーズで3モデルを提供

 ブロケードではTRILLを使ったフラットなL2ネットワーク技術を「Brocade VCS(Virtual Cluster Switching)」として推進している。これは、TRILLによる「ECMP」と、分散コントロールの「Distributed intelligence」、複数のスイッチを論理的に1台のスイッチとして管理する「Logical Chassis」の3つの構成要素からなる。

 「管理者が各スイッチにRBridge(Routing Bridge)というIDを割り振ってやるだけで、あとはどのような物理トポロジーになっていても、全体で1つのシャーシのように見えるようになります」と小宮氏。自動で割り振ることもできるというが、管理上、管理者が手動で割り振るのがよいということだ。

 また、VCSでも、仮想マシンをライブマイグレーションで移動したときに、自動的にVLANやACLなどのネットワーク設定を移動先に移す機能を用意している。これは、各ベンダーがともに対応している機能だ。仮想化プラットフォームとしてはVMware vCenterに対応している。

 この部分について小宮氏は「vCenter側にプラグインを入れる必要はなく、VCXにVMware vCenterのIPアドレスと、管理用のIDとパスワードを設定するだけで、VCXが自動的にvCenterに接続して反映します」と機能をアピールする。仮想サーバーはサーバー管理者が、ネットワークはネットワーク管理者が担当するため、ネットワークのためのプラグインをvCenterに入れるのは担当者どうしの意思疎通が必要になり、運用上のボトルネックになりがちなのだという。

 VMware vCenter以外については、ファームウェアを作り進めながら標準化を待ち、期待としては2012年にXenやKVM、Hyper-Vに対応したいという。

 Brocade VCSに対応したスイッチとしては、データセンタースイッチであるVDXシリーズの6710・6720・6730という3種類がすでに販売されている。VDXシリーズの導入例としても、データセンターの株式会社アイネットとさくらインターネット株式会社の名が公表されている。そのほか、大手金融会社のVDIシステムなど約10社の導入実績があるという。この点は、製品化が早かったことによるリードといえる。

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