ブロケード、データセンター向けスイッチ「Brocade VDX」を拡充~仮想環境の複雑さを低減


今回提供される新製品
「イーサネットファブリック」とは?
代表取締役社長の青葉雅和氏

 ブロケード・コミュニケーションズ・システムズ株式会社(ブロケード)は9日、データセンター向けネットワークスイッチ「Brocade VDXシリーズ」のラインアップに、エントリーモデル「VDX 6710」と、FC SANにも対応可能な「VDX 6730」を追加すると発表した。また、VDXシリーズのソフトウェア機能や管理ツールなどの強化も同時に発表されている。

 Brocade VDXシリーズは、同社の提唱する、統合ネットワーク・アーキテクチャおよび戦略「Brocade One」を実現するための核となる製品で、スイッチをクラスタ化する「Brocade Virtual Cluster Switching(VCS)」に対応。VCSの構成要素であり、フラットなレイヤ2ネットワークを作る「イーサネットファブリック」技術によって、仮想化されたデータセンター内で、管理者の負担を軽減できるのだという。

 通常のEthernet環境では、コア、アグリゲーション、エッジなどの階層構造を採用しているケースが多く、こうしたネットワークでは、拡張性や柔軟性などの点で限界があった。その1例がスパニングツリー(STP)で、接続されていても使わないケーブルが大量に出るなどの問題点を抱えていたし、ネットワーク構造も結果的に複雑になっていた。

 しかし「イーサネットファブリック」ではTRILL(TRansparent Interconnection of Lots of Links)を用いて、基本的にはすべてのケーブルを利用する仕組みで、スイッチを足せばスケーラビリティと性能を向上させることができる。また設定についても、多くの設定を自動化する仕組みが盛り込まれていることから、管理者の負担を軽減することができる。特に仮想化時代では、仮想サーバーをプロビジョニングするサーバー管理者が、仮想ネットワークの設定などを気にかける必要が生じており、データセンターでは煩雑な作業を強いられている。ここを改善できるのは、非常にメリットが大きいことだ

 代表取締役社長の青葉雅和氏は、「SANにおけるファイバチャネル(FC)のファブリックでは、どんなアーキテクチャでも、仮想化を行う場合でも、サーバーやストレージ管理者は、複雑に考えなくてもいろんなことをできる。これをEthernetへ持ってきたのが、『イーサネットファブリック』で、一言でいうと、仮想化されたデータセンター内でのコンフィグや運用を、複雑さから解放するもの。アプリケーションがスイッチをまたいで別の場所に行くようなことを、ネットワークではそもそも考えられていなかったが、そういう状況でも設定などを自動化できるようにする、というのが基本の考え方だ」と、これを説明した。

 今回提供される新製品のうち「VDX 6730」は、低遅延・低消費電力の10Gigabit Ethernet(GbE)スイッチである「VDX 6720」と同様の機能を搭載するのに加え、8Gbps FCポートを備え、FC SANとの統合を可能にしている点が最大の特徴。これを利用することで、「FCというストレージネットワークの“島”と、イーサネットファブリックの“島”を統合でき、1つのネットワークとして管理しやすくなる」(データセンターテクノロジー部 部長の小宮崇博氏)のだという。

 製品には、SFP+ポート×24、FCポート×8の「VDX 6730-32」、SFP+ポート×60、FCポート×16の「VDX 6730-76」が用意された。いずれも、ソフトウェアライセンスで利用できるポート数を制限する「ポートオンデマンド機能」を備えており、安価に導入して、必要に応じて拡張していけるとのことだ。参考価格は1万720ドルから。

 一方の「VDX 6710」は、1000BASE-T/100BASE-TX/10BASE-Tポート×48、10GbE対応のSFP+ポート×6を備えたスイッチ。従来、10GbEのみだったVCS対応スイッチにGbEモデルを提供することにより、「これまではコスト面などからVCSのクラスタに接続できなかった部分についても、その恩恵を受けられるようになる」(小宮部長)とした。参考価格は9500ドルから。


「VDX 6730」「VDX 6710」
VCSの構成可能台数が拡大された

 またソフト面では、VDXシリーズの搭載OSが「Brocade Network OS 2.1」へバージョンアップしたことによって、VCSの構成可能台数を、従来の12台から最大24台にまで向上させた。1台のVDXシリーズでは最大60のEthernetポートを備えていることから、約1000台のサーバーで1つのクラスタを構成できることになる。小宮氏はこれについて「vCenterで管理可能な最大のサーバー台数が1000台であり、この上限にマッチするように拡張された。クラウドの1つの“島”の大きさとしては最適な数で、もしそれで足りないようなら、VCS間の接続で“島”をつないでいけばいい。大きな構成が可能になったことで、よりコストメリットが出てきた」とした。

 さらに、ブロケード製品の統合管理ツールである「Brocade Network Advisor」が、VDXシリーズに対応。加えて「Brocade Network OS 2.1」では、NETCONFにも対応したため、従来のCLIによる管理から大きく進歩したとしている。

 なおこのほか、VCS自体の機能も強化されており、複数台のシャーシを論理的に1つに見せる「ロジカルシャーシ」において、FCを含めた統合を一部実現したり、VMware vCenterと連携し、「イーサネットファブリック」内で動作する仮想マシンがvCenterに保存されている情報をもとに構成され、ファブリック内を移動しても、設定が自動的に移動先に移る、といったことも可能になった。

 「従来のAMPP(Automatic Migration of Port Profiles)を用いた追随にもメリットはあるが、仮想マシンが大量になったときに、いちいち設定をしていくのは大変だった。この新機能では、ネットワーク管理者は何もする必要がなくなるので、省力化が可能になる。今後はほかのハイパーバイザーとも取り組みを進めていく」(小宮部長)。


データセンターテクノロジー部 部長の小宮崇博氏VMwareとの連携によって、ネットワーク設定の自動化を実現

 

CloudPlex実現のための次のステップへ

 なおブロケードでは、さらに大きなアーキテクチャとして、「Brocade CloudPlex」を提供している。「イーサネットファブリック」は、主として1つのデータセンター内でのテクノロジーだが、「お客さまは、東京と地方のデータセンターをつないでシームレスに見せたい、それによってコストを大幅に下げたいという動きが出ている。これを実現するためのさまざまな技術が入ってくるのが『CloudPlex』だ」と、青葉社長は話す。

 ただ、これをすべて実現するのはまだまだ先の話で、ブロケードでは全体を5つのフェーズに分けて考えている。1つ目のフェーズ「高性能ファブリック」はVDXシリーズによって実現されつつあるが、今回はその次のフェーズ2「より大きな拡張性と制御」を実現する要素として、「Virtual Computing Block」が紹介された。

 これは一言でいうと、メーカーが垂直統合型の仮想化ソリューションを導入するにあたって、“ネットワーク部分をブロケードが陰で支える”ための仕組み。「イーサネットファブリック」を使うことで、仮想化におけるネットワークの複雑な制約を取り払い、サーバーベンダーなどのパートナー企業が、本来注力したい部分に取り組めるようにするものなのだという。エンドユーザーにとっても、ネットワークまでを含めて検証済みの構成でソリューションを導入できるようになるため、導入が迅速化できるメリットがある。

 残念ながら、ユーザーが個々の構成要素をチョイスして組み立てる、というわけにはいかないが、多くのパートナーがこのプログラムに参加しているため、多数のソリューションがパートナーから提供されることが見込まれており、市場での選択肢は増えることになりそうだ。先週、米国ではHitachi Data systemsとFujitsu Technology Solutionsから、それぞれのソリューションがリリースされており、今後も拡大が期待される。


Virtual Computing Blockのパートナー企業。ユーザーが構成要素を組み立てるのではなく、これらのパートナーから垂直統合型のソリューションとして提供されることになるという現在はフェーズ2が実現されつつあるところだ
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