ブロケード、イーサネットファブリックを実現する新スイッチ「VDX 6720」

ネットワークのシンプル化、高スループット化を実現


Brocade VDX 6720シリーズ

 ブロケードコミュニケーションズシステムズ株式会社(以下、ブロケード)は26日、クラウドデータセンターでの利用に最適なEthernetスイッチ「Brocade VDX 6720シリーズ」を発表した。10Gigabit Ethernet(GbE)に対応した高密度スイッチで、米国にて発表された15日より、国内でも販売を開始している。

 VDX 6720シリーズは、10GbE/GbE両対応ポート(SFP+)を備えるボックス型の高密度スイッチ。24ポートモデル「VDX 6720-24」、60ポートモデル「VDX 6720-60」の2製品がラインアップされているが、両製品とも、FCスイッチで一般的なポートオンデマンド機能を備えており、ソフトウェアライセンスでポート数を制限して、安価に導入することができる。

 例えばVDX 6720-24は、物理的には24ポートを初めから備えているものの、16ポート分だけのライセンスを購入して16ポートスイッチとして使い、後から必要に応じて24ポートすべてを有効にする、といった利用法が可能。VDX 6720-64では、40ポートで導入して、10ポートずつ拡張を行える。

 また、ポートあたり6W以下の低消費電力、600nsの低遅延といった点に加えて、統合ネットワークを実現するための機能を多数備えている。

 

「フラットなレイヤ2のネットワーク」を実現する次世代機能を搭載

 ブロケードでは6月16日に、統合ネットワーク・アーキテクチャおよび戦略の「Brocade One」を発表。仮想化時代を見据え、仮想マシンとネットワークを結び付ける「Brocade Virtual Access Layer(VAL)」、スイッチをクラスタ化する「Brocade Virtual Cluster Switching(VCS)」といった技術と、LAN/SAN環境の統合管理ツール「Brocade Network Advisor」といった要素によって、ネットワークの統合とシンプル化を、オープン技術を中核にして提供するとしていた。

イーサネットファブリックによって、レイヤ2のフラットなネットワークを実現する
VCSの構成要素

 VDX 6720シリーズは、この「Brocade One」構想を実現するための重要な製品と位置付けられており、各要素に対応した機能を備えている。VCSは、大きく4つのコンポーネントからなるが、このうち一番重要なのは、フラットなレイヤ2のネットワークをデータセンター内に構築する「イーサネットファブリック」という考え方だ。

 従来のネットワークでは、「ループを回避するためにスパニングツリー技術を利用しているため、つながっていても、そこにトラフィックを流すことのできないケーブルが存在し、総帯域が狭くなってしまっていた」(データセンターテクノロジー部の小宮崇博部長)という課題があった。

 しかしイーサネットファブリックは、IETFで標準化作業が行われているTRILL(TRansparent Interconnection of Lots of Links)を用いることで、これを解決している。TRILLでは、同じ長さのルートが複数存在する場合、複数のルートに分散してデータを流すため、基本的には、接続されているすべてのケーブルが使われることになる。従ってイーサネットファブリックでは「スイッチを足せばスケーラビリティと性能がアップし、冗長化と高速化が同時に実現される」(小宮部長)ことになるのだ。

 そして、FC SANを長く手掛けてきたブロケードならではの強みを生かし、イーサネットファブリックでは、ストレージの統合も見据えている。VDX 6720は、DCB(Data Center Bridging)とFCoE(Fibre Channel over Ethernet)に対応しているし、DCBの持つロスレスなどの特長を生かすことで、iSCSIでの利用にも効果がある。小宮部長は、こうした特徴をとらえて、「ストレージ統合までを含めた、本当の意味でのイーサネットファブリックを実現できるのは、当社だけだ」と、自社の強みをアピールする。

 また、コンポーネントの1つである「Distributed Intelligence」を利用すれば、ライブマイグレーションによる仮想マシンの移動時に、ネットワーク設定を追従できる。従来の一般的な手法では、仮想マシンの移動完了後にGARP(Gratuitous ARP)を送出するため、GARPを検出してから、VLAN、QoS、ACLなどの設定が完了するまでにタイムラグが発生。さらに、管理者の設定工数も発生してしまう。

 Distributed Intelligenceはこれを解決するために、AMPP(Automatic Migration of Port Profiles)を用いている。具体的には、仮想マシンとリンクしているスイッチ(ポート)のプロファイルが仮想MACアドレスとひも付けられており、仮想マシンが移動しても、仮想MACアドレスを検知することで、移動先のポートに対して自動で設定を行えるようにしているのだ。

 この機能は、特に仮想化技術を問わずに利用できるメリットがあり、「論理的にはすべての仮想ハイパーバイザーに対応する」(小宮部長)。ブロケードでは、VMware、Hyper-Vでの動作を確認しているほか、XenServer、KVM、Oracle VMでも今後検証する予定という。

 このほかVCSでは、複数台のスイッチを論理的に1台として管理する「Logical Chassis」、暗号化やファイアウォールなどのソリューションと効果的な連携を可能にする「Dynamics Services」、といったコンポーネントが取り入れられており、データセンターのシンプル化に寄与している。

 なお、こうした先進的な機能を持っているVDX 6720シリーズだが、実は「新しくないのがポイント」なのだという。搭載するASICやOSも、従来のSAN製品やEthernet製品で使われていたものの延長線上で開発されているとのことで、小宮氏は「テクノロジーは、今までの、実績のあるものをベースにしている」と述べ、導入に際しての不安はない、という点を強調。

 代表取締役社長の青葉雅和氏も、「クラウドや仮想化の要件を満たすための技術は、実は、FC SANのテクノロジーでほとんど実現できていたこと。SAN技術をEthernet機器へ投入して、それで仮想化の要件が満たせる」と述べ、技術に心配がない点と、SAN/LAN両方で実績を持つブロケードの強みが最大限に生かせるとした。

データセンターテクノロジー部の小宮崇博部長青葉雅和 代表取締役社長
利用範囲

 米国での参考価格は、16ポートが有効のVDX 6720-24で1万700ドルから。FCoEスイッチとしての機能と、論理的に1台のスイッチとして管理する機能については、別途ライセンスを購入する必要がある。

 利用用途としては、もちろん、高集約の仮想化環境への導入や、データセンター内のSAN/LANトラフィック統合なども考慮するが、他社の10GbEスイッチと比べても競争力のある価格に設定されており、一般的な10GbEスイッチとして、全領域の導入も狙っているとのこと。「イーサネットファブリックは特殊は技術ではなく、他社の製品が上位にあっても、問題なく利用できる。普通のスイッチとしてエッジに配置することも可能だ」(小宮部長)。

すべてをブロケード製品で構成してSAN/LAN統合をする、といったケースであれば最大限の効果を発揮できるが、他社製品との併用の場合でも、十分なメリットが得られるという
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