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日本マイクロソフト、Windows 10の法人ビジネスを説明
法人ユーザーですでに2200万台が稼働、米国防総省も大型導入を表明
(2016/3/11 06:00)
日本マイクロソフト株式会社は10日、国内におけるWindows 10の法人ビジネスの現状について説明した。
同社によると、Windows 10搭載デバイスは、全世界で2億台以上が利用されており、Windows 8に比べて4倍の普及スピードになっていること、そのうち、法人ユーザーにおいては2200万台が稼働していることに言及。さらに、1カ月間にWindows 10が使われた時間は110億時間となり、Windows史上最大であること、10社から11機種のWindows 10 Mobile搭載端末が国内向けに発表され、米国防総省が、今後1年以内に400万台のデバイスをWindows 10にアップグレードすることを発表した例などにも触れた。
日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows&デバイス本部長の三上智子氏は、「米国防総省は、常にマルウェアの脅威にさらされており、潜伏したマルウェアが発見されるまで200日以上、その対策に80日かかる。また、年内には200万種のマルウェアが誕生するといわれている。国防総省は、サイバー攻撃の一番の対象となっており、マイクロソフトはそれに次いで2番目。国防総省がWindows 10の導入を決定したのは、生き残るためのイノベーションであり、大きな危機感によるものである」と説明した。
さらに、「ワークスタイル変革のスピードをあげるために、ITは欠かすことができない。時間と場所にとらわれずクラウドやデバイスを活用する攻めのITと、デバイスを守るセキュリティを強化した守りのITが重要になる。Windows 10はさまざまなレイヤーで高いセキュリティを実現しており、守りのITを実現することにもつながっている。そして、OEMメーカーの力を借りることで、守りのデバイスを投入することができる」と語った。
セキュリティに関しては、「OEMメーカーからも、Windows Hello対応モデルがそろってきている。顔認証では、レノボとデルが製品を投入。指紋認証では日本HP、富士通、レノボが投入している。筐体が薄いリアルセンス対応モデルも登場している。今後も対応モデルを増やすためにパートナーとの協業を強化していく」とした。
富士通では、マイナンバーPCを発売。手のひら静脈認証、振る舞い検知などの情報セキュリティを実現している。中堅・中小企業向けに提供できる。またパナソニックでは、電源オフの状況で遠隔データ消去ができるようになっているほか、日本HPのElite X2では、3-in-1とする同製品ならではの使い方提案を行っており、サッカーJリーグのサンフレッチェ広島がユースチームのトレーニングに使用している例などを紹介した。
一方で、「Windows 10 Mobileでは、Windowsが持つ世界観に機会を感じていただいているパートナーが多い」とし、「10社から11機種が発売されている。マイクロソフトブランドのスマホであるLumiaがない状況でこれだけ多くの機種が発売されているのは日本だけである。ODMパートナーとのエンゲージメントの強化により、タイムトゥマーケットで、少量から投入できる環境が整ったことが、これだけの品ぞろえの背景にあり、さらに、PCメーカー以外のパートナーからもスマホが投入されるようになっている。Windows Mobileは、法人からの引き合いが強い。Windows 10がリリースされた時点で、商機を感じていただいたパートナーも多い。Windows 10は、スマホに関しても、セキュリティ面でのメリットがあることが評価されている」(日本マイクロソフト 執行役 コンシューマー&パートナーグループ OEM統括本部長の金古毅氏)とした。
なお、Windows 10 Mobileに使用されているYu Gothic UIフォントによる日本語表示については、「フォントについては、本社のエンジニアリングチームとミーティングを行い、日本からの声をフィードバックしている。今後も改善していくのは確かだが、根本的に変えるかどうかはこれからの議論になる。日本語フォントは確実に良くしていきたいと考えており、その点では本社との連携も取れている。ぜひインサイダーからのフィードバックを得たい」(三上氏)とした。
法人向けのWindows 10の導入状況については、「現在、パイロット展開が進んでいる状況である。米国では、エンタープライズ企業の76%以上がテストを行っている。日本でもそれに近い数字になっている。ただ、全社展開は少なく、部分展開が多いため、異なるバージョンのOSが混在した環境となる。また、モバイルワーカーだけをWindows 10にするという例もある。Windows XP、あるいはWindows VistaからWindows 7への移行スピードとは異なると考えており、今後は、Windows 10に向けた移行が加速するだろう」(三上氏)とコメント。
また、「法人市場において、Windows 10が導入されている理由は、自然な形でたくさんのことができ、先進機能が提供されていることに加え、Windows as a serviceの考え方により、技術進化のスピードに追随する形で新たな技術を提供している点にある。だが、Windows 10が選ばれる最大の理由は、強固なセキュリティを提供している点である。これまでにもWindowsは、セキュリティに対して投資を行ってきた。だが、Windows 10では、セキュリティが強固であっても、使い勝手が悪いということがなく、利便性を維持している点が特徴である」と説明している。
さらに、「セキュリティは国家レベルの脅威となっている。境界防御では限界が生じている状況だが、Windows 10では、多層防御によるセキュリティを実現しており、クラウドを活用して最新の情報により、タイムラムがなく最新の脅威への対策を行うことが可能になる。また、Virtual Secureでは、侵入されたとしても、仮想化技術を活用して、攻撃を失敗させるといった対策も行っている。攻撃コードの実行を仕掛けても、データを保護することが可能だ。さらに、Windows Defender ATPにより、標的型攻撃を検出することができる。侵入されても、攻撃されない環境が実現されている」と述べたほか、「日本においては、デバイスの持ち出し禁止の企業が多い状況は理解している。大手企業だけでなく、中堅・中小企業のユーザーも安心して利用できる環境を実現する」とアピールした。
今後は、法人ユーザーにおけるWindows 10の移行促進に向けて、Windows 10導入に際して発生する検証費用を提供したり、導入表明をしている企業の導入事例を広く提供。さらに、Windows 10の導入による具体的なコスト削減効果、互換性情報などの積極的な告知も進めることになる。
「Windows 10は、法人ユーザーにとって、史上最高の安全なOSであるという価値体験を提供する。デバイスとクラウドがつながり、さまざまなサービスを提供できることで、顧客のワークスタイル変革や生産性向上、セキュリティ対策や管理性向上に寄与できることを訴求し、こうしたメリットを浸透できるように努力したい」(三上氏)とした。
一方、2016年1月に、米Microsoftのテリー・マイヤーソン上席副社長が発表したWindowsの新たなサポートポリシーでは、最新CPUにおけるWindows 7のサポート打ち切りを発表したが、「突然の発表ということもあり、誤解を引き起こした部分もあった。OEMメーカーやチップメーカーと連携し、常に進化する最新のテクノロジーによって、最高の体験を提供するのがWindows 10の基本姿勢。最新のテクノロジーを最大限に生かすOSであり、経営の変革に生かしてもらいたいという思いがある。最新のものであるほうが、機能やセキュリティ、利便性が高いということは、理解していただいている。Windows 7などを利用しているユーザーは、Broadwell(開発コード名)以前の旧世代のものを使っていただくことになるが、“最新の状況が最高の体験を提供できる”ことを訴求したい」と話している。