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UBIC、人工知能を活用したビジネスデータ分析支援システムを提供

メールや日報などからチャンスとリスクの予兆を検知

UBIC代表取締役社長の守本正宏氏

 人工知能を駆使したビッグデータ解析事業を手がける株式会社UBICは1日、業務上のメールや日報などの電子データを解析し、潜在的なチャンスやリスクを人工知能が知らせるビジネスデータ分析支援システム「Lit i View AI助太刀侍」(以下、AI助太刀侍)を提供開始すると発表した。

 「AI助太刀侍」は、ビジネス上の膨大なデジタルコミュニケーションの中から、まだ顕在化していない予兆をいち早く人工知能がとらえることで、ビジネスチャンスの獲得や機会損失の防止、リスクの回避などを支援する分析システム。同システムの人工知能には、UBICが独自開発した「バーチャルデータサイエンティンスト」(以下、VDS)が活用されているという。

 UBIC代表取締役社長の守本正宏氏は、「当社は、eディスカバリやコンピュータフォレンジック調査を支援する企業として2003年に創業し、企業向けの訴訟対策支援で豊富な実績をもっている。『VDS』は、この訴訟対策支援で培ったノウハウを生かして独自開発した人工知能で、専門家の経験や勘などの“暗黙知”を学び、人の思考を解析することで未来の行動予測を実現する」と、「VDS」の特徴について説明している。

 「VDS」の仕組みとしては、まず、対象となるデータから、専門家が少量の情報を精査し、各情報の関連性の有無を判断する。これを教師データとして、人工知能が学習し、すべての対象データに専門家が判断した基準でスコア付けを行い、情報を仕分けする。この結果、スコアの高い情報を、専門家の経験や感覚に合った情報として抽出する。さらに、人工知能は、分析結果から自動学習するため、抽出精度は日々向上していくという。

 「『VDS』は、少量のデータから専門家の行動を正確に学んで、人に代わって考え、調査し、判断をサポートする。広く一般的な評価軸ではなく、学んだ人の直感に基づいて評価軸を形成することで、その人の趣味嗜好(しこう)に合致した情報抽出を行うことができる」(守本氏)としている。

 今回、この「VDS」の人工知能をビジネスインテリジェンスに活用した新製品が「AI助太刀侍」となる。製品化の背景について、UBIC BIソフトウェアセールス部 部長の村田圭司氏は、「企業のコミュニケーションは、会話や電話などのアナログからメールやSNSなどのデジタルへと急速にシフトしている。これにともない、社員が何を考え、どのような行動をとっているかを把握することが難しくなりつつある。こうした状況の中で、ビジネスコミュニケーションの分析に悩む企業から、人工知能を活用した課題解決を望む声が高まり、このニーズに対応するべく『AI助太刀侍』を開発した」と述べている。

 「AI助太刀侍」の運用イメージは、最初に、利用者の経験や暗黙知に基づいて、検知が必要か不要かに仕分けられた一定数のデータを“教師データ”として学習させる。次に、UBICのクラウド環境「Intelligence Cloud」上の「AI助太刀侍」に、顧客企業のメールサーバーやファイルサーバーからメール、日報などの調べたい電子データをインポート。「AI助太刀侍」が電子データの解析を行い、検知したい教師データとの関連性が高い順に電子データのスコアリング(点数付け)を行い、上位から順に表示する。一定のスコアを超えた電子データが発生した場合には、管理者に自動的にアラートを出したり、高スコアのデータの詳細を表示することも可能だ。そして、スコアリング結果を基に、検知状況の統計レポートや、今後の発生を予測する分析レポートを作成するという流れになる。

UBIC BIソフトウェアセールス部 部長の村田圭司氏
「AI助太刀侍」の運用イメージ

 特徴的な機能としては、「Central Linkage(セントラルリンケージ)」機能を搭載しており、より深く調査したい対象者について、“誰から誰にあててメールが送られ、誰にCC:されているか?”などを相関図で表示することができる。この機能によって、どういう経路で情報が渡り、また、本来送られるべき人に情報が出ていない場合や、共有すべき情報が共有されていないといった状況を把握することが可能となる。

 また、多彩なレポート機能を提供。解析した電子データを文書単位でスコア化するだけでなく、部署単位や部署内の社員ごとに、検知した数とその推移をまとめて報告でき、管理者は個別のメールや文書を1つ1つ見ることなく、全体の傾向を把握することができる。さらに、問題の発見やリスクの回避といったネガティブ要素をとらえるのにとどまらず、見込み客の発掘、営業での阻害要因の発見など、部署内で情報を共有することによって、問題の見える化や成果の把握にも活用することが可能だ。

「AI助太刀侍」の基本画面
「Central Linkage」の画面
レポート機能(ダッシュボード)の画面

 「AI助太刀侍」の想定ユーザーについて村田氏は、「営業部門の管理者」、「人事部門の担当者」、「プロジェクトマネージャー」、「カスタマーサポート管理者」を挙げている。

 「例えば、営業部門の管理者は、日々のメールや日報を解析することで、受注のチャンスや失注のリスクの予兆を検知できる。人事部門の担当者は、社内外とのメールなどによるコミュニケーションから社員の不平不満や人材流出の予兆を検知できる。また、プロジェクトマネージャーは、プロジェクト内や顧客とのメールや議事録を分析することで、プロジェクト遅延や炎上リスクの予兆を検知し、円滑なプロジェクト推進を実現する。カスタマーサポート管理者は、顧客応対履歴データを解析し、商品改良のアイデアやクレームの予兆をとらえられる」とした。

 今後は、APIを提供することで、外部のシステムと「AI助太刀侍」との連携を行う予定。これにより、販売代理店が独自に開発したレポートの出力、分析機能との連携も可能になるという。

 なお、同社では、「AI助太刀侍」の発売に合わせて、10月1日から10月23日まで、無料トライアルキャンペーンを実施する。期間中に応募した企業から1社限定で、「AI助太刀侍」によるデータ分析を無料で行い、結果をレポートとして提供する。当選発表は10月30日ごろを予定している。

唐沢 正和