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「3社体制」でクラウドを推進するテラスカイの強みと5つの方針
(2015/6/5 06:00)
株式会社テラスカイは4日、事業戦略説明会を開催した。2015年4月30日に東証マザーズ上場を果たしてから初の戦略説明。salesforce.comやAWSのクラウド導入支援、および自社サービス「SkyOnDemand」「SkyVisualEditor」を軸に事業展開を進める同社が描く今後の青写真は――?
クラウドのみに注力してきた「先行者利益」が強み
2006年に設立されたテラスカイは、当初よりクラウドにフォーカスした事業を展開。Salesforceのクラウドサービスを取り扱いつつ、自社製品のデータ連携サービス「SkyOnDemand」や画面開発サービス「SkyVisualEditor」を絡め、クラウド導入支援を提供している。
事業領域は、この「クラウド導入コンサルティング」と「自社製品の開発・販売」の2本柱で、それぞれ売上の75%と25%を占める。市場でクラウドが伸長し、エンドユーザーにも「クラウドファースト(新規システム構築時にまずクラウドから検討すること)」の意識が根付く中、設立当初からクラウド専業で取り組んできた「先行者利益」が強みになっているとのことで、現在までに約1000社の顧客を獲得している。
そんな中、代表取締役社長の佐藤秀哉氏が掲げた戦略が以下の5点だ。
- ハイブリッドクラウド事業への積極的な投資
- クラウドMSP(Management Services Provider)市場の確立
- クラウドERP市場の創造と収益化
- グローバルマーケットへの進出
- IoTへの取り組み
Selesforceに強いテラスカイ、AWSに強いサーバーワークス
ハイブリッドクラウド戦略では、社内とクラウドで容易にデータ連携できる「SkyOnDemand」を軸に、各クラウドサービスを適材適所に組み合わせるIT環境を提案。当初、Salesforceを主力にクラウド導入支援を行ってきた同社だが、「Salesforceは大量データ処理が不得意」という弱点を補うため、現在はAWSともパートナーシップを締結している。AWSの取り扱いを始めたことで案件が急増。リソースを増強すべく、サーバーワークスと2013年に資本業務提携したのが、ハイブリッドクラウド戦略におけるトピックとなる。
佐藤氏は「サーバーワークスは世界で20数社しか存在しないAWSプレミアパートナー。AWSに深い知見を持つサーバーワークスと、Salesforceに強い当社が協力して、ハイブリッドクラウドの実現を支援する」と説明する。
テラスカイグループ3社体制で生み出す価値
こうしてクラウドの導入が進むと、エンドユーザーがつまづきやすいのが実は大変な「運用」という。この課題を解消するため、2つ目の戦略の「クラウドMSP市場の確立」につながっていく。具体的には、テラスカイとサーバーワークスとで2014年にMSP事業の新会社「スカイ365」を共同設立し、クラウド環境の24時間365日での運用管理・監視を提供している。「まだプレイヤーの少ない市場。ここで存在感を発揮したい」とAWS事業部 事業部長の藤井徳久氏は語る。
また、藤井氏によれば、テラスカイ・サーバーワークス・スカイ365によるこの3社体制こそが、テラスカイグループに強みを生む基本的な陣形となるようだ。「テラスカイがコンサルティング、サーバーワークスが導入・構築、スカイ365が運用を支援することで、クラウド活用におけるライフサイクル全体をサポートする体制が整っている」。
ERP市場とグローバル市場への取り組み
その強みを基に「クラウドERP市場の創造と収益化」にも取り組んでいる。クラウド適用業務範囲は拡大し、多くの企業で基幹系も含めたクラウド活用が進み始めている。そうした状況に対して、Salesforceと、Salesforceに基幹系業務機能を追加する富士通の「GLOVIA OM」を組み合わせ、クラウドERPを提供。さらに「SkyOnDemand」によるデータ連携を組み合わせて、会計などのシステム連携も容易に行えるようにしている。
さらにこうして確立されたモデルの海外展開も開始。2012年に米国カリフォルニアに現地法人「TerraSky Inc.」を設立し、丸投げではなく、海外モデルの検討から全て自分たちで行いながら展開しているという。この現地法人を統括するのが、“厚切りジェイソン”の芸名でも知られる製品事業部 グローバルアライアンス部 部長のジェイソン・ダニエルソン氏。
氏によれば、特にSalesforceの活用支援を軸に、Salesforceの画面を使いやすくカスタマイズする「SkyVisualEditor」を訴求しており、日本の7倍のSalesforce市場が存在するという米国で展開することで、「現在、欧州や東南アジアをはじめとする世界中から問い合わせがあり、SkyVisualEditorは世界55万ユーザーに利用されている」という。
Salesforce買収話の影響は?
ここまで訊いていると、気になるのはほかのクラウドについての考え方だ。現在、SalesforceとAWSの両軸で事業を進めているが、顧客にクラウド活用を提案するに際して、他クラウドやOpenStackなども採り入れていく可能性はあるのか――。
佐藤氏は、他クラウドの取り扱いはニーズによってあり得ると話す。「まず考えられるのは、NTTソフトが当社の株主であることから、NTTグループが提供するCloudnの提供。次に、まだ実際に検討はしていないが、今後のニーズ次第では伸長しつつあるMicrosoft Azureも取り扱う可能性はある」。一方、OpenStackについては「私見では流行らないと見ている。SalesforceやAWSのスピードに対して、OpenStack陣営はスピードに劣るため、いずれ消えていくのではないだろうか」としている。
では、Salesforceの買収話についてはどうか。同氏は「Salesforceの買収の話は以前から何度も出ていて、感覚的には現在取りざたされているMicrosoftによる買収はないと断言できる」と噂を一蹴。この件については、事業に影響はないとの見解を示した。
無限に広がるIoTの世界
最後に、市場にとってもテラスカイにとっても新たな取り組みとなる「IoTへの取り組み」を説明した。現在、設備メーカーから多数のセンサーデバイスが出ており、そのデータを集約するプラットフォームを含めて、想像以上に発展しているという。一方、集約したデータをいかに活用するかに検討の余地が多く残されており、そこに「SkyOnDemand」によるテラスカイの強みが生かせるとしている。
取締役執行役員 製品事業部長の松岡弘之氏によれば「いかにセンサーデータを利活用にまでつなげるか。それを簡単・安価・短期間で実現できるのがSkyOnDemand」。すでに医療機関による機器の予防保守や、BEMSで実際にサービス化もされているM2M事例などで「SkyOnDemand」が利用されているという。
こうした事業戦略の下、佐藤社長は「先頭集団の先頭で居続け、No.1クラウドインテグレーターをめざす」と話す。そして「技術のみならず、具体的な活用シーンにおいてもイノベーションを起こす」と会見を締めくくった。