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大規模災害時に相互支援、地銀14行が協定~NTTデータが事務局に

 災害時に地方銀行(以下、地銀)が相互支援する「大規模災害発生時における相互支援協定」が20日、締結された。協定に加わるのは「地銀共同センター」を提供・運営する株式会社NTTデータと、同サービスを通じて基幹系システムを相互利用している14行。

 地銀共同センターは、NTTデータの次世代バンキングアプリ「BeSTA」を使用した地銀・第二地銀向けの共通基盤サービス。2004年1月のサービス開始以来、青森銀行、秋田銀行、岩手銀行、足利銀行、千葉興業銀行、北越銀行、福井銀行、京都銀行、池田泉州銀行、鳥取銀行、四国銀行、大分銀行、西日本シティ銀行、愛知銀行の14行で採用されている。

 今回、大規模災害発生時も各参加行が顧客に安定して金融サービスを提供するため、被災した参加行の金融機能維持あるいは早期復旧を、参加行とNTTデータが相互協力する協定が締結された。

参加行が一堂に会した会見の様子
地銀共同センターの3つの基本コンセプト
安心・安定の運用を実現する仕組み
椎名雅典氏

 背景には、今後の「永続的な競争優位性の確保」について各銀行と議論する中、複数の銀行から「災害時協定を結んではどうか」という声が多かったことがあるという。

 NTTデータ 代表取締役常務執行役員 パブリック&フィナンシャルカンパニー長の椎名雅典氏は、「地銀共同センターでは、基幹系を中心としたシステムの共同利用を実現し、国内最高水準のバックアップセンターでBCPにも取り組んできた。しかしながら、先般の東日本大震災を振り返ると、銀行業務の継続はシステムの信頼性だけでは達成できず、物資の確保、行員の安否確認、ATMなどの機器配備などの事前準備が求められる。震災後の日本銀行の調査レポートでも、業務継続体制の実効性の確保が重要とし、金融機関同士の連携や非常用物資の調達が必要と指摘している。それに則ったのが今回の協定で、極めて重要な時代の要請と考える」と説明する。

銀行業務の継続はシステムの信頼性だけでは不十分

 具体的には、大規模災害などが発生した場合に、以下5点について参加行間で連携する

  • 支援物資の提供……食料、飲料水、生活必需品など
  • 施設の提供……被災行員の受け入れができる避難場所や宿泊施設など
  • 業務支援……業務継続に必要な資機材(ATM、端末、PCなど)提供など
  • 情報連携……被害状況などの情報共有、行員の安否確認の支援など
  • そのほか必要な支援

 協定が発動する被災規模などの条件はなく、被災した銀行が事務局に支援を申し出た場合に適用される。その実効性に向けては、NTTデータが事務局機能を常設。同社グループの全国拠点網を生かして、同社が参加行の被災状況を一元的に集約する。同社は「災害時は混乱するため、あらかじめ事務局を決めておくことは連携体制を強固にするためにも重要。同じような協定はほかにも存在するが、本協定が特徴的なのは、当社も参加させていただき、事務局機能を常設することだ」としている。

協定の内容
参加行が全国にわたる広域連携を実現
藤田博久氏

 参加行を代表し、池田泉州銀行 取締役頭取の藤田博久氏が「参加行すべてが賛同し、NTTデータが取りまとめ、協定締結に至ったのはまことにありがたいこと。地銀は地元の人の財産を守るとともに、経済を支える重要なインフラを担う。当行も過去、阪神淡路大震災を経験したが、鮮明に覚えているのは店舗の復旧に苦労したこと。今回の協定は事前に対策できることが非常に重要で、利用者にとっても意義の高いことだと考える。これを1つのきっかけとして、今後も協議しながら訓練や内容の充実を図りたい」とコメント。

 今後、連絡網の整備や安否確認の訓練などから、実効性の確保に向けて取り組んでいく考え。このほか、地銀共同センターでは「永続的な競争優位性の確保」として、マイナンバー制度や一括課税制度など今後の法改定にも先んじて対応していく方針だ。

川島 弘之