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日本企業の業務アプリをより速く――VCE、日本市場向けクラウド戦略を発表

プラビーン・アッキラージュ氏
導入企業例

 「日本のクラウドコンピューティングが変わろうとしている潮目に立ち会えて本当にわくわくしている。クラウドはこれまでのビジネスの枠組みを変える、インターネットと同じくらい強いインパクトをもったイノベーション。そして我々はそのクラウドのためのプラットフォームを日本のユーザーにも継続的に提供していく」 ――2月20日、都内で行われたVCEの戦略発表会の冒頭、VCEのCEOであるプラビーン・アッキラージュ(Praveen Akkiraju)氏は日本のクラウド市場への期待をこう語った。

 2009年にCisco、EMC、VMwareの合弁会社として誕生したVCEは、仮想化のための統合インフラストラクチャ環境「Vblock」シリーズを展開しており、2013年には10億ドルを超える売上を記録するなど、クラウドコンピューティングの普及に伴って順調にビジネスを伸ばしている。2012年には日本法人も設立され、ソフトバンクや大阪工業大学といった大規模導入事例も増えつつある。データセンターでの運用を前提にした、“パブリッククラウドよりも経済効果の高いプライベートクラウド”のインフラを提供している点が特徴だ。

 そして「世界第2位のデータセンター市場」(アッキラージュ氏)とされる日本市場においてさらなるシェア拡大を図るべく、今回、VCEは新たな施策をいくつか発表している。

すべてはアプリケーション高速化のために

ポール・ハラピン氏
Vblock概要

 VblockはCiscoのサーバーとネットワーク、EMCのストレージ、そしてVMwareの仮想化環境をひとつの筐体に詰め込んだ、Intelアーキテクチャをベースとする「コンバージドインフラストラクチャシステム」である。「3つの親会社が業界最高の技術を持ち寄って作り上げたクラウドのための統合型プラットフォーム。データセンターの効率性をこれ以上なく高める製品」とアッキラージュ氏。こうした統合型インフラ製品で強調されるのは運用のシンプル化やコスト削減といったポイントだが、それらに加え、Vblockは「アプリケーションを高速に稼働させる」という点をアッキラージュ氏は強調する。

 「従来、それぞれのアプリケーションは専用のインフラにひもづいていた。SAPならSAP専用、OracleならOracle専用といった具合に、アプリケーションベースで縦割りで管理されていたが、そのせいでコストは跳ね上がる一方となってしまった。いまでもIT部門は予算の70%を運用に当てている。もしアプリケーションがどこにあっても高速に稼働できれば、そうした悩みも解決される。Vblockはクラウド上でアプリケーションを速く動かすこと、ワークロードを最適化することに特化しており、ユーザーのクラウドへの旅路を促進する存在である」(アッキラージュ氏)。

 VCEがアプリケーションの高速化に着目してプラットフォームを作った理由として、VCEのAPJ地区担当バイスプレジデント ポール・ハラピン(Paul Harapin)氏は「プラットフォームベンダがなぜアプリケーションに注目するのかとよく聞かれるが、ユーザーにとって何よりも重要なのは事業を遂行する業務アプリケーション。だからこそアプリケーションに最適化したインフラを提供するのは当然。あらゆる業界のニーズに応えられるよう、どんなアプリケーションを搭載してもスピードが損なわれることはない設計。集約率も高いので、アプリケーションを載せれば載せるほどコスト効果が高まる」と説明する。

 さらに導入までのスピードが短いこともVblockの特徴だ。「Vblockは箱を開けてから48時間以内にアプリケーションを走らせることができ、45日以内で本番環境に展開が可能。このスピードが結果として運用コストの大幅な削減につながる。IDCの調査結果では、Vblockを導入した結果、導入スピードは4倍、新規サービス導入のスピードは5倍に、ダウンタイムは96%削減、データセンターコストは50%削減という数字も出ている」(アッキラージュ氏)とスピーディな導入がもたらすメリットを強調する。

カントリーマネージャーに日本に精通したスティーブンソン氏が就任

ロバート・スティーブンソン氏

 「日本は世界第2位のデータセンター市場」(アッキラージュ氏)でありながら、サイロ化したITインフラが障壁となってクラウド導入が進んでいない。この日本市場をVCEはどう攻めていこうとしているのだろうか。

 今回、VCEは日本法人初のカントリーマネージャーとしてロバート・スティーブンソン(Robert Stevenson)氏の就任を発表している。専任のカントリーマネージャーを置いたことで、日本のユーザーに対し継続的なサービスを提供する意向をあらためて表明したといえる。また、Avaya日本法人の社長を務めていたこともあるスティーブンソン氏はIT業界でのキャリアが長いだけでなく、日本語に非常に堪能で日本市場をよく知る人物。2014年の目標として「従業員を2.5倍に増やし、ディストリビュータ数を2倍に、リセラー数を5倍にする。そして日本企業がITの運用に投資するのではなく、業務アプリケーションをサポートするインフラに投資することで、インフラのシンプル化、運用のシンプル化、アプリケーションの高速化を実現できるよう支援していきたい」(スティーブンソン氏)と掲げている。

 「統合型インフラは新しいクラウド時代の象徴」とアッキラージュ氏が強調するように、大きくシェアを伸ばしつつあるVCE。その思想の根底にあるのは、AWSのようなレジリエンスを重視するパブリッククラウドとは異なり、“信頼性の高い(高価な)プラットフォーム”だからこそエンタープライズグレードなクラウドを提供できるというものだ。アプリケーションを速く動かすことにこだわったインフラが、日本のクラウド市場でどれほどのモメンタムを形成できるかに注目したい。

五味 明子