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サイボウズの2014年業績予想は「利益0円」、青野社長「今は投資の時期」
(2014/2/18 00:00)
サイボウズ株式会社は17日、2013年12月期(第17期)決算事業説明会を開催した。
2012年12月期の連結決算は、売上高が41億4000万円、営業利益が4億9400万円、経常利益が4億9600万円、当期純利益が2億4500万円。ただし、2012年12月期は決算期を1月31日から12月31日に変更したため、11カ月の変則決算となっている。
2013年12月期は、売上高が51億9700万円、営業利益が2億8800万円、経常利益が2億6400万円、当期純利益が1億8800万円。11カ月の変則決算ではあるものの、2013年12月期は前期比10億5700万円の増収となった。売上高経常利益率は12%から5.1%へ低下。これは「クラウド関連サービスの開発や広告宣伝に投資したため」(代表取締役社長の青野慶久氏)。売上高純利益率は5.9%から3.6%へ低下。投資有価証券売却益など特別利益8200万円の計上があった。
2014年は利益0円予想、「今は投資の時期」
2014年12月期の連結業績予想は、売上高54億円(前期比3.9%増)。特筆すべきは、営業利益・経常利益・純利益が0円という点。理由は「開発・宣伝に2013年12月期よりも積極的に投資」(同氏)し、利益分とプラマイゼロを見込むため。配当金についても、連結当期純利益の50%を配当性向としているため、「今後も意見を聞きながら」と再検討の可能性に含みを持たせつつも、0円の予想となる。
利益・配当金予想が0円となることについて、青野氏は「これが良いか悪いかは難しいが、われわれがどうしたいかが重要。“アホか”といわれるかもしれないが、我々はサイボウズクラウドを世界に広めたい。(サイボウズが)日本で中途半端に普及したから満足ではなく、日本発で世界に認められるソフトを目指す。そのための先行投資をしたい、というのが(この件の)すべて。今期、来期という視点ではあまり見ておらず、財務体質はいいのだから、アクセルを踏めるときは踏むと、そういう方針。みなさまにも今期、来期ではなく、10年後というスパンでサイボウズを見ていただければ」と説明した。
その背景には、「サイボウズは世界一使われるグループウェアメーカーを目指す」「売上や利益よりも“利用者数”にこだわる」「Windows、Linux、Google Search、Facebookのように何億、何十億人に使われる製品・サービスを目指す」という青野社長の思いがある。
サイボウズは中長期での事業拡大として、「パッケージからクラウドサービスへ」「中小企業向けから大企業向けへ」「情報共有アプリから情報共有プラットフォームへ」「日本国内から海外市場へ」という方針を定めている。
その方針に基づき、2013年12月期は「エコシステムの推進」「継続的な機能改善」「信頼性の強化」に注力してきた。「エコシステムの推進」においては、開発者向け技術情報サイトを開設し、APIなどを拡充したほか、他社製品との50を超えるkintone連携ソリューションを創出。「継続的な機能改善」においては、1年間で計158回の製品リリースを行い、「信頼性の強化」においては、クラウドサービスの脆弱性を発見してくれた人に報奨金を提供する「cybozu.com Security Challenge」などに取り組んだ。また、「cybozu.com カンファレンス 2013」の開催や、電車の中吊りをはじめとした大企業向け認知広告を積極的に展開してきた。
結果、cybozu.comの有料契約者数は6000社を突破。リーマンショック以来、40億円付近を漂っていた売上高も、2013年12月期には停滞感を突き抜けるように、初めて50億円の大台に乗せた。加えて、2013年12月期の純資産が約36億円と財務体質もいいのだから、「いまはアクセルを踏むべき」(同氏)と判断したという。
2014年12月期の活動方針
2013年12月期は広告宣伝費に8億5000万円ほどを拠出したが、2014年12月期は「それを上回る量を出す」(同氏)。広告は大企業への認知拡大で狙いで、「大企業のCIOなどへサイボウズをどう見ているかを調査した結果、クラウドによる業務改革パートナーとしては、まだあまり見られていない。そう見られるよう、2014年も(広告展開は)継続する」(青野氏)。
ただし「2014年以降も継続するかは分からない。とりあえず2014年は(開発費も含め)利益が0円となるまで投資する。その後は費用対効果が出ないようなら辞めるし、出るなら続ける」とのこと。
そのほか、活動方針としては「エコシステムの推進」「大規模組織への提案を強化」「信頼性の強化」に引き続き努める。「エコシステムの推進」としては、クラウドインテグレーターとの協業や「cybozu.com developer network」の開設などを進める。クラウドインテグレーターとの協業としては、各種クラウドサービスの再販/導入支援事業などを展開する株式会社ウフルを紹介。Google、Amazon、Microsoft、Salesforceなどとともに「kintone」をクラウドプラットフォームとして、インテグレーション事業に取り込んでもらう。
「大規模組織への提案を強化」としては広告のほか、パッケージ版Garoonのメジャーバージョンアップや、クラウド版Garoonとkintoneの組み合わせ提案などを強化する。「信頼性の強化」としては、cybozu.comのインフラ投資や社員教育の徹底やシステム化などを挙げた。