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ミラクル・リナックス、OSS監視ツール「Zabbix」の情報を集約表示する統合監視ソフトを開発

OSSとしてMIRACLE Labsで6月に公開予定

 ミラクル・リナックス株式会社は7日、統合監視ソフトウェア「Zabbix」を複数台動かしている環境で情報を集約して表示するソフトウェア「監視統合ビューア(仮)」の開発を発表した。6月より、Zabbixとは独立したオープンソースソフトウェアとして、同社のR&D情報サイト「MIRACLE Labs」にて公開する予定。また、5月8日より開催される「クラウドコンピューティングEXPO」の「OSSシアター」で、参考出品として展示する。

 監視統合ビューアを使うことで、例えば複数拠点にまたがる大規模プラットフォームの各拠点にZabbixを設置し、収集した情報を1つに集約して表示できるようになる。これにより、1つのアラート画面で“どのZabbixサーバーが監視しているどのサーバーに障害が起きた”といった情報が見られる。Zabbix側に変更は必要なく、バージョンを問わず対応する。

「監視統合ビューア(仮)」のダッシュボード画面。複数のZabbixサーバーの情報を集約して表示する
複数のZabbixサーバーで監視している多数の機器について、障害などのイベントを集約して表示できる

「Zabbixプロキシでは限界」という規模に対応する拡張性

ミラクル・リナックス株式会社 技術本部 本部長 鈴木庸陛氏

 現在のZabbixでは、複数拠点からなる大規模インフラなどを監視する場合には、各拠点に「Zabbixプロキシ」を設置し、それらを1つのZabbixサーバーで束ねる構成が推奨されている。Zabbixプロキシは、Zabbixサーバーのかわりに監視対象のデータを収集し、データをZabbixサーバーに送るソフトウェアだ。

 複数台で収集した情報を1つに集約して見るという構造は、監視統合ビューアでも同じだ。ただし、Zabbixプロキシではデータを持たず、すべてのデータはZabbixサーバーに集まる。「そのため、大規模インフラではZabbixサーバーのMySQLがボトルネックになっていた」と、ミラクル・リナックス株式会社 技術本部 本部長の鈴木庸陛氏は開発の背景を説明する。

 それに対し、監視統合ビューアを使った構成では、各拠点などに本物のZabbixを設置するため、データはそれぞれに保存される。監視統合ビューアはあくまで各Zabbixの持っているデータを取得し、まとめて表示する役割となる。

 こうした監視統合ビューアのメリットとして、ミラクル・リナックスは「拡張性」「信頼性」「分散管理」の3つを挙げている。Zabbixプロキシの構成ではZabbixサーバーに負荷がかかるため、想定される最大規模に合わせたスペックでZabbixサーバーを設計する必要がある。それに対して監視統合ビューアの構成では、必要に応じてZabbixサーバーを増してスケールできるというのが「拡張性」だ。

 また、1つの拠点のZabbixが止まった場合や大量のアラートが発生した場合でも、ほかの拠点には影響がないというのが「信頼性」。そのほか、Zabbixプロキシはホスト名とIPアドレスが1対1である必要がありHAクラスタ化が難しかったのに対し、Zabbixサーバーを用いるためそのままHAクラスタ化ができるのも特徴だという。

 「分散管理」としては、それぞれのZabbixサーバーで設定を持つため、例えば特定のZabbixでだけ、負荷が大きくなってでもグラフ化の頻度を上げる、といったことができる。

Zabbixプロキシによる構成(左)と監視統合ビューアによる構成(右)。Zabbixプロキシによる構成では、ZabbixサーバーのMySQLがボトルネックになり、拡張も難しいという

 「実際にZabbixを大規模インフラの監視に使っている現場から『Zabbixプロキシではもう限界』という声をいただくようになったのが開発のきっかけです。全国拠点でZabbixを使いたいという案件も、この半年で4件ほどありました」と鈴木氏。「商用のメジャーな監視ツールには“Manager of Manager”(MoM)と呼ばれる同様の機能があって、ニーズがあると思っていました」。

 利用ケースとしては、スケールさせる必要のある大規模環境の監視や、複数サイトの監視、クラウドとオンプレミスの監視の統合などが想定されている。鈴木氏によると「すでに、そのような事業者から『すぐに試したい』という声もいくつかあり、パイロットユーザーとなっていだだく予定です」という。

 なお、監視統合ビューアは、各Zabbixサーバーから情報を収集するバックエンドの「Asura」と、フロントエンドのWebインターフェイスの2つからなる。核となるのはAsuraの部分で、フロントエンドはAsuraのAPIを呼び出して取得した結果を表示しているという。「APIは公開する予定ですので、ユーザー側で独自にiPhone用アプリのようなものも作れるはずです」(鈴木氏)。

オープンにして運用監視の現場の声を吸い上げる

 ミラクル・リナックスでは現在、エンタープライズ向けのZabbix関連ビジネスを「MIRACLE ZBX」ブランドとして展開。Zabbixをベースに機能追加や不具合修正を加えた独自パッケージ(この名称も「MIRACLE ZBX」)をリリースしているほか、導入支援サービスやサポート、トレーニング、アプライアンス製品なども提供している。

 独自パッケージの位置付けについて、鈴木氏は「Zabbixの不具合修正や機能追加は、できるだけ本家のZabbix社にフィードバックしています。ただし、本家ではコミッターがZabbix社のみであることもあって、反映にタイムラグがある。そのため、修正を加えたバージョンを、商標上の問題から『MIRACLE ZBX』として出しています」と説明する。

 そのような、本家で反映されていない修正には、Windowsのイベントログ取得で問題が起きるケースの修正や、Zabbixを停止せずにログレベルを変更できるようにする機能追加などがあるという。

 「(ソフトの方の)MIRACLE ZBXは、今はサポートユーザーにのみ提供して、ソース(SRPM)は説明を付けずに公開している状態です。今後はパッケージもオープンに公開して、変更点の説明も付けることを考えています」(鈴木氏)。

 同じように、監視統合ビューアも最初からオープンソースとして公開する。「オープンソース関連の企業としての心意気と、運用監視の現場からの声を吸い上げたい意図です。われわれは開発やサポートの会社で、現場のオペレーターさんの気持ちになりきるのは、なかなか難しい」と鈴木氏。「どんどん使ってもらって品質をよくしていく考えです。まずβ版として公開するので、最初から完成品のつもりで手を出されると、お互いに困るのではないかと思います。費用はいいので一緒に作りましょう、という気持ちです」。

 今後の機能追加としては、商用製品を含む、Zabbix以外の統合監視ツールへの対応ニーズが多いという。そのため、最初のバージョンが安定してきた段階での着手を予定している。「Zabbixでなくてもいい、というのを目指したい。それができれば、『Manager of Managerにオープンなツールがないので商用のツールを使っている』というユーザーを取り込めるのではないかと期待しています。オープンソースなので、できれば各統合監視ツールの知識のあるSIerさんやベンダーさんが参加してくれるとうれしい」(鈴木氏)。そのほか、監視統合ビューア側で対応したほうがいい機能として、インシデントの管理機能などを考えているという。

 なお、統合監視ツールのビジネスモデルについて尋ねると、鈴木氏は「正直なところ、まだ考えていません(笑)。おそらく、コンサルティングやサポート、MIRACLE ZBXアプライアンスをたくさん立ててもらうこと、といったところでしょうね」と答えた。

(高橋 正和)