ニュース
日本IBM、OLTPとアナリティクスを1つで処理する「DB2」新版
(2013/4/4 15:51)
日本アイ・ビー・エム株式会社(日本IBM)は4日、トランザクションやバッチなどの一般業務処理機能と、集計や分析処理の両方を実現するハイブリッドデータベース管理ソフト「IBM DB2 V10.5」を発表した。
最近では、ビッグデータを活用するために、SAP HANAのようなインメモリのデータ基盤に注目が集まっているが、従来は基幹システムのデータを構築するためのRDBMSと、HANAのようなアナリティクスのためのデータベースの2つが必要で、ハードウェアもそれぞれ別個に用意する必要があった。
しかしIBMでは今回、研究所が開発した新技術によって、1つのデータベース上でOLTPとアナリティクスを両立させることに成功。従来は2つ用意しなければならなかったデータベースを1つで済ませることにより、ハードウェアリソースを削減した経済的なシステムを実現した。
日本IBM 専務執行役員 ソフトウェア事業担当のヴィヴェック・マハジャン氏は、「もともと、RDBMSを最初に提供したのはIBMだ。RDBMSは成熟したソフトで、革新が起こる可能性は低いと思われていた。しかし当社はRDBMSに革新の可能性があると考え、それを実現した。今回の発表後、RDBMSはイノベーションの第2段階を迎えるだろう」と語る。
BLUアクセラレーション技術によって両立を実現
今回、1つのデータベースにOLTPとアナリティクスを両立させることを実現したのは、IBM研究所が開発した高速データ分析処理機能である、「BLUアクセラレーション技術」。
BLUアクセラレーション技術は次のような技術から構成されている。
(1)DB2のメモリー管理技術、I/O効率、CPU処理の最適化を実現する「インメモリーカラム型」
(2)BLUテーブルが従来の行テーブルと共存し、同じスキーマ、ストレージ、メモリー内に共存する「ハイブリッド型データベース」
(3)マルチコアとSingle Instruction Multiple Data(SIMD)によって並列処理を実現する「パラレル・ベクトル処理」
(4)データの順序を保持する業界初のデータ圧縮機能によって、圧縮済みのデータを解凍することなくデータ処理する「コンプレッション」
BLUアクセラレーションの処理フロー例として、32コア、1TBのメモリ、100の列を含む10年分のデータが入った10TBのテーブルから、「2010年の販売件数を調べる」というクエリを行う場合が紹介された。
最初は、コンプレッションによって、インメモリでデータ容量を10TBから1TBに削減。さらに列処理によって、データ容量を10GBにまで削減する。その後でデータ・スキッピングによってデータを1GBに削減。各コア上でリニアスキャンの並列処理を実施することで32MBのデータを処理する。その後、ベクトル処理に基づくスキャンにより、SIMDに基づいて8MBのデータ処理を行う。
使い方も簡単で、カラムストア型テーブルを作成するだけで実現する。
会場で行われたデモでは、従来のDB2を使った場合、集計レポートの出力に59秒かかっていたものを、2秒へ大幅な時間短縮する様子が披露された。
「ハイブリッド型データベースは、分析やBIをやっているベンダーが以前からやりたかったものの、実現できなかったソリューション。今回、IBMがハイブリッド型データベース開発に成功した。現在、ビッグデータの分析用データベースとしてはSAP HANAが有名だが、SAPのユーザー以外をターゲットとすることを想定している。また、コストメリットが大きいことで、Oracle Databaseユーザーにとってもインパクトのある製品となり、競争力が増し、ユーザー獲得につながるだろう。さらには、アナリティクス用のアプリケーションをスモールスタートさせたいと考える中堅・中小企業もターゲットにできると想定している」(日本IBM 理事 ソフトウェア事業 インフォメーション・マネジメント事業部長の塚本眞一氏)。
なお、提供開始時期は6月14日の予定だが、現段階では提供ライセンス形態、価格は公表していない。今後、価格が決まってから発表する。
さらにIBMでは、すでに将来製品の開発を始めており、ビジネスで提供できるNoSQLデータベース、モバイルデータベースを提供し、柔軟なアプリケーション開発を実現するとしている。