日本マイクロソフト、Windows 8の法人向けの価値をアピール
アプリの充実を目指して検証ラボを期間限定で開設
日本マイクロソフト株式会社は29日、Windows 8の法人向けの取り組みに関する説明会を開催。そのなかで、Windows 8でも動作する法人向けデスクトップアプリケーションが日本では1102本に達し、そのうち94本が認定取得アプリケーションとなっていることや、Windows To Go認定デバイスが6社から発売されていること、さらには、Windows 8アプリ検証ラボを2013年3月までの期間限定で開設することを発表した。また、Windows 8の導入が全世界で4000万台に達したことにも触れた。
■“エンタープライズでも使えるWindows 8”を強調
米Microsoft Windows Commercial担当シニアディレクターのアーウィン・ヴィッサー氏 |
米Microsoft Windows Commercial担当シニアディレクターのアーウィン・ヴィッサー氏は、「Windows 8は、どんなデバイスでも利用でき、常に接続して利用し、自分が利用しているデバイスをワークスタイルの場でも使いたいというニーズに対応して開発したものである。また、エンタープライズで求められるセキュリティ、管理性、コンプライアンス対応という点でも、妥協をすることなく機能を実装し、エンタープライズのニーズにあうものとして提供できるOSになっている。さらに、Windows 7とWindows 8は混在した環境で利用でき、企業の投資を無駄にすることがない」などとした。
また、「Windows 8では、バッテリ駆動時間の問題を気にすることなく、モバイル対応が簡単に図れること、アプリケーションのフットプリントを本体内に残さずに済むこと、ユーザーは既存のアプリケーションをそのまま利用できること、開発者は、これまで慣れ親しんだツールを活用してアプリケーション開発ができることが特徴である」とアピールする。
さらにヴィッサー氏は、自らのタブレット端末を利用しながら、ビジネスマンの利用シーンを再現。起床してから最新ニュースやメールの確認がタッチ操作で可能なこと、画像データを簡単な操作で共有できることなどを紹介したほか、Windows 8に対応した英国の鉄道会社が開発したアプリケーションソフトや、航空会社のSAS、Bank of Americaが開発したアプリケーションソフトなどを示し、鉄道の運行状況の確認や、地域のお勧め情報の提供、銀行口座管理といった利用例を紹介した。
Windows 8向けに開発された英鉄道会社のアプリケーション | Bank of Americaの口座管理アプリケーション |
そのほか、Windows To Goの機能をデモンストレーション。Windows 8を格納したUSBをポートに差し込むだけで、Windows 7日本語版が動作しているPCでも、英語版のWindows 8環境に移行できることなどを示した。
「モバイルに関する各種仕様がサポートされているかどうかが、CIOの関心事である。Windows 8では、3Gや4Gの対応のほか、DirectAccessにより、自動的に社内のリソースにアクセスできるという特徴を持つ。さらに、Windows To Goでは、企業のセキュリティルールを維持しながらも、家庭のPCや出先のPCで、会社と同じ環境を実現できる」と語った。
また、「Windows 8では、Trusted BootやBitLocker、仮想スマートカードにより、これまで以上にセキュリティを強化している。Windows 8では、クライアントHyper-Vを初めて採用しており、仮想化においても優れた環境を提供できる」などと述べた。
6社から発売されているWindows To Go認定デバイス |
Windows 8の早期導入ユーザーとして、英国BTが、8000人のフィールドエンジニアに、パナソニックのタフブックを導入し、仮想スマートカードを利用することでの利便性の追求と、セキュリティの強化を実現している事例と、Emirates AirLineがHewlett-PackardのHP ElitePad 900を導入し、乗務員および乗客の管理アプリケーションを活用している例を紹介し、「Windows 8には、ビジネスに最適化したビジネスタブレットのほかにも、さまざまな形のデバイスが用意されており、そこから選択することができる」と語った。
このほか、Windows RTに関しても言及。「Windowsの新たな製品であり、Windows 8と共通のデザインと設計を行っているOS。これまでのPCで使用していた周辺機器などがそのまま利用できる。マネジメントを強化するための機能をIntuneによって提供しており、業務での利用を可能としている。Active DirectoryをRTでサポートしていないのは、RTはモビリティを追求するものであり、PCを置き換えるものではないと考えているため」などと語った。
最後に、ヴィッサー氏は、「Windows 8は、企業向けに設計されたものであり、企業にはぜひ導入を検討してほしい」とした。
■日本からもさまざまな早期導入事例が
日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部の藤本恭史本部長 |
Windows 8の日本市場における早期導入事例については、日本マイクロソフト 業務執行役員 Windows本部の藤本恭史本部長が説明。「日本では、現時点で16社の企業を早期導入企業として紹介することができる。KDDIでは既存システムとの連携においてWindows 8を採用、三菱電機インフォメーションシステムズではシステムエンジニア向けにタブレットを活用。国立保健医療科学院では、保健師がリモートで情報を入力するといった用途で導入している。デバイスから運用を考えるのではなく、さまざまなデバイスからの選択肢の広さのなかから、選択して導入しているのが特徴」と語ったほか、「NTTドコモとの協業により、すでに3社での導入案件を獲得している。製造業ではモバイル環境での生産性向上を目的に1000台前後の導入、製薬業ではノートPCとタブレットの2台持ち解消を目的に1500台前後の導入、金融業では営業担当者の利便性向上を狙って1000台前後の導入規模となっている。さらに中大規模の70社の企業とWindows 8導入を前提とした商談を展開している」という。
また、国内市場では、13社のデバイスメーカーからWindows Proを搭載し、法人向けサポート対応を行っているデバイスが登場していることや、Windows 7環境で動作していた法人向けデスクトップアプリケーションでは、1102本のアプリケーションがWindows 8でも動作し、94本のアプリケーションが認定取得となっていること、11社から法人向けWinRT(Windows Runtime)アプリケーションが開発されていることが明らかにしたほか、6社からWindows To Go認定デバイスが登場していることにも触れた。
藤本本部長は、「デスクトップアプリケーションの互換性は、多くの法人ユーザーの関心事である。認定ロゴを取得したアプリケーションの数はWindows 7のときに比べて、2.7倍になっている。また、WinRT用アプリケーションでは製薬会社のMR(医薬情報担当者)向けソリューションや、名刺管理ソリューションがラインアップされている。Windows To Goに関しては、フレキシブルな使い方を想定しているユーザーには強力なツールになるだろう」と語った。
デバイスメーカー各社の法人向けWindows 8搭載製品も展示された |
なお日本マイクロソフトは、Windows 8搭載タブレットの法人向け導入を支援する「windows 8アプリ検証ラボ」を、同社の大手町テクノロジーセンター内に、2013年3月末までの期間限定で設置する。
同検証ラボは、デバイスパートナー各社が発売している法人向けWindows 8タブレットを設置し、タッチ操作やペン入力に対応した業務アプリケーションの検証環境および設備を提供するもの。これにより、システムインテグレータや開発パートナーなどの各社は、各デバイスでのアプリケーションの動作確認、パフォーマンス検証、クラウドサービスとの連携などの早期検証が行えるようになる。
藤本本部長は、「検証ラボでは、オンプレミスのサーバーも設置しており、さまざまなケースにおける検証ができる。Windows 8搭載タブレットの短期間での導入を支援でき、多くの企業でのアプリケーション開発につなげたい」と意気込みを語った。
設置期間中に、40件のタブレット導入プロジェクトでの活用を目指しているという。
一方、17社のパートナー企業から、「導入支援」、「仮想化と管理」、「WinRTアプリ開発支援」、「WinRTアプリ」という4つのカテゴリーにおいて、37種類のWindows 8導入支援サービスおよび対応アプリケーションが順次提供されることも明らかにした。
サービスを提供するのは、アイシーエス、ウチダスペクトラム、内田洋行、SCSK、NECネッツエスアイ、大塚商会、システナ、CSK、ダイワボウ情報システム、デル、東芝情報機器、NEC、日本ビジネスシステムズ、富士ソフト、富士通、富士通マーケティング、リコージャパンの17社。
藤本本部長はこの取り組みについて、「このなかには、ノウハウを横展開していくサービスもある。これらの導入支援パートナーと密接に連携し、Windows 8の導入支援を加速させる。エコシステムが強みとして展開できる」としたほか、「Windows 8の登場によって、パートナーとのタッグを組むケースが増え、パートナーのビジネスチャンスも増えることになる」と、法人向けビジネスの拡大について自信をみせた。