富士通、2012年度上期の連結決算は減収減益~LSIやPC事業の減収が影響

通期見通しを下方修正、為替の影響とデバイス関連での市況悪化が原因で


取締役執行役員専務の加藤和彦氏

 富士通株式会社は10月31日、2012年度上期(2012年4月~9月)の連結業績を発表した。

 売上高は、前年同期比1.0%減の2兆718億円、営業利益は同9.1%増の76億円、経常利益は前年同期の20億円の赤字から29億円の黒字に転換。当期純損失は前年同期の57億円の黒字から、110億円の赤字となった。

 LSIやPCの減収などが影響したが、携帯電話が増収。ネットワークプロダクトも増収になったという。

 富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏は、「第2四半期は国内を中心に伸ばしており、業績は7月の予想通りとなっている。だが、欧州を中心に海外事業の落ち込みが大きい。また、最終赤字に関しては、税金負担が大きく、子会社が厳しい内容になっているため」などとした。

 また「国内ソリューション関連では、金融分野を除いて、すべての領域が好調。IT産業は世の中の流れと半年ずれており、ちょうどいい時には悪いということもある。10月度の受注も好調である」などと語った。

 

ソリューション/SIは回復基調も、インフラサービスが海外で低迷

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比3.2%減の1兆3404億円、営業利益は同3.0%増の470億円。そのうちサービス事業は売上高が同2.6%減の1兆0892億円、営業利益が同24.5%増の373億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は同1.2%増の3807億円、インフラサービスの売上高は同4.6%減の7085億円となった。

 「ソリューション/SIでは、公共、産業分野とも受注が好調であり、金融端末などのハードウェアの投資の一巡をカバーし、回復基調にある。上期は計画を上回っている。また、インフラサービスは、国内のネットワーク関連が堅調で計画を上回っているが、欧州を中心に海外が低迷している。海外のインフラサービス事業は、上期業績を厳しくみていたが、それを下回っている」と述べた。

 システムプラットフォーム事業の売上高は前年同期比5.8%減の2511億円、営業利益は同38.1%減の96億円。そのうち、システムプロダクトの売上高が同15.8%減の1108億円、ネットワークプロダクトの売上高が同3.8%増の1402億円。

 「システムプラットフォームは、海外の業績悪化を、国内でカバーしている状況。クラウド商談の広がりによって、ソフトウェアが好調であり、システムプロダクトの売上高を底上げしている。だが、ハードウェアはUNIXサーバーが新機種投入までの端境期にあり、厳しい内容になっている」とした。また、ネットワークプロダクトは通信キャリアの投資が加速。通信トラフィックの増加対策や、LTEサービスエリアの拡大により増加しているという。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比6.5%増の5493億円、営業利益は同40.6%増の104億円。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が同5.4%増の4200億円、モバイルウェアの売上高が同10.1%増の1293億円となった。

 「携帯電話はスマートフォンの新機種投入の効果があるものの、PCでは低価格化の影響もあり、前年実績を下回っている」という。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比6.8%減の2686億円、営業損失は、同22億円悪化の70億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は同11.5%減の1441億円、電子部品は同0.9%減の1250億円となった。

 「デバイスソリューションの売上高が計画を下回り、第1四半期に続き赤字となっている」という。

 なお、中国で今年4月に開設したデータセンターについては、「反日活動に関する影響はない。商談はJOCを対象に進めているが、バラバラと稼働をしても効果が出ないため、商談の上では、時期をできるだけ後ろに引っ張り、まとめて稼働する方向を模索している」などと語った。

 さらに、「データセンターへの投資は今後引き続き拡充していくことになる。商談ありきではあるが、利用率の高い商談を獲得するとすぐにパンパンになり、すぐに追加で展開していかなくてはならなくなる。上期までのサービス関連投資のうちの多くが海外であり、引き続き、海外のデータセンター投資を加速している」という。

 

為替の影響とデバイス関連での市況悪化が響き、通期見通しを下方修正

 一方、同社では、2012年度の通期業績見通しを、7月公表値に比べて下方修正した。売上高の修正は今期は2度目、利益は初めての下方修正となる。

 7月公表値に比べて、売上高は1100億円減少の4兆4200億円。3営業利益は350億円減少の1000億円、経常利益は350億円減少の850億円、当期純利益は350億円減少の250億円とした。

 加藤取締役執行役員専務は、「みなさんの期待を裏切る形になり申し訳ない」とし、「為替の影響、デバイス関係での市況環境が悪化していることなどが要因」とした。

 セグメント別では、テクノロジーソリューションの売上高が、7月公表値に比べて600億円減の2兆9250億円。営業利益の1800億円は据え置いた。内訳ではサービス事業の売上高が500億円減の2兆3550億円。そのうち、ソリション/SIは8500億円と据え置くが、インフラサービスは500億円減の1兆5050億円とした。システムプラットフォームの売上高が100億円減の5700億円。そのうちシステムプロダクトは2700億円と据え置き、ネットワークプロダクトは100億円減の3000億円とした。

 また、ユビキタスソリューションの売上高が100億円減の1兆1450億円、営業利益が50億円減の200億円と下方修正。デバイスソリューションの売上高は650億円減の5650億円、営業損失は、270億円減のマイナス120億円の赤字を見込む。

 「パソコン/携帯電話の売り上げ計画には変更がないが、中身はPCが減少、携帯電話が増加するとみている。PCは欧州を中心に価格下落が進展。新興国向けのローエンド製品の出荷の影響や、ユーロ安の影響もあり、それを下期に折り込むことになる。下期は高価格帯の製品を重点的に販売することになる」という。

 なお、PCの700万台、携帯電話の800万台の年間出荷計画には変更はない。

関連情報
(大河原 克行)
2012/11/1 00:00