分散ストレージサービスの追加でAmazonを追い越す~IDCフロンティアと米Bashoの取り組み


 株式会社IDCフロンティアは27日、東京都内でプライベートセミナーを開催し、間もなく完成する新データセンターと分散ストレージ技術を組み合わせた、同社の新たな取り組みについて紹介した。

 

トライアングル・メガDC構想

IDCフロンティア 代表取締役社長の真藤豊氏

 冒頭でまずあいさつを行った同社の代表取締役社長の真藤豊氏は、同社が建設中の白河データセンターの第1号棟が10月1日に完成予定であることを明かし、首都圏周辺および大阪、北九州と合わせて「3つのメガ拠点が完成する」とした。この拠点群を生かして同社はコロケーション/ハウジングといった基本的なサービスに加えてクラウド基盤の提供に取り組み、さらにクラウド基盤に対して新たに分散ストレージサービスを提供していくとした。

 次いで詳細説明を行った同社の取締役 ビジネス推進本部長の中山一郎氏は、「データセンターの本質は“拡張性”“災害耐性”“集積率”の3点」だとした上で、同社の拠点はこれらの本質を徹底的に突き詰めた設備だと紹介した。

 最新/最先端の設備となる白河データセンターは、「ソーラーチムニー」や「超低流体抵抗構造」といった技術の採用による進化した外気空調によってPUE 1.17を実現するという。また、外気空調やモジュール構造の採用で国内でもトップランナーといえる設備であった北九州データセンターでは2013年2月に5号棟が完成予定だという。

 この3拠点を相互に結ぶネットワークの強化にも積極的に取り組んでおり、都内から白河データセンターへのアクセスのレイテンシは3.5msに抑えられているという。これは、拠点間接続のネットワークでの光/電気信号の変換を排除し、光信号のままで中継していくなどの工夫によって達成されている。

 このインフラ上に分散ストレージを展開することで、地理的にも電力供給面でも独立し、同時に被災する可能性が事実上無視できるレベルの分散環境で、かつ低レイテンシでアクセスできる環境が整うことで、ユーザーは「災害対策(DR)」「事業継続計画(BCP)」といった要件をことさら意識しなくても無停止でシステムを運用できることになるという。

 中山氏は国内の「クラウドランキング」で同社が国産クラウドとしては1位の評価を得たものの総合順位としてはアマゾン データサービス ジャパン(Amazon Web Services日本法人)に次ぐ2位だったことを紹介し、新たな分散ストレージサービスの提供によって「amazonに追いつき、追い越す」との意気込みを示した。


IDCフロンティア 取締役 ビジネス推進本部長の中山一郎氏IDCフロンティアのトライアングル・メガDC構想。首都圏および大阪、北九州、白河の3拠点を低遅延のネットワークで接続することで高度な障害耐性を実現。また、北九州と白河では業界でも最先端の高効率なモジュラー型ファシリティを実現しており、拡張性や実装密度についても最高レベルを誇る

 

Bashoの分散ストレージサービス

米Basho TechnologiesのCEO、ダン・リパート氏

 IDCフロンティアは今年7月に米Basho Technologies(以下、Basho)に対する第三者割り当てによる出資を行い、戦略的資本提携を行った。Bashoはオープンソースの分散データベース「Riak」の開発元であり、IDCフロンティアはBashoの技術をベースに分散ストレージサービスや分散型NoSQLデータストアを提供していく計画だ。

 セミナーに登壇したBashoのCEO、ダン・リパート氏は同社の基本的なコンセプトとして「最も拡張性に優れたデータベースを目指す」ことと、「絶対に書き込みをロスしない」ことの2点を挙げた。KVS(Key-Value Store)であるRiakは拡張性に優れ、アクセスパフォーマンスが高い。

 ベースとなるRiakはオープンソースの分散型NoSQLデータベースの機能を提供し、その商用版である「Riak EnterpriseDS(Riak EDS)」は、オープンソース版にマルチデータセンター環境でのレプリケーション機能と監視/サポートを追加したものとなる。

 さらに、クラウドストレージ版「Riak CS」はAmazon S3 APIをサポートし、分散クラウドストレージを実現できる。IDCフロンティアではまずRiak CSによる分散クラウドストレージサービスを提供開始し、次いでRiak EDSのサービス化にも取り組むという。リパート氏はユーザー事例を紹介しながら「Oracleよりも95%安価」「MySQLより4倍高速」といった実績を上げていることを強調した。

 高速性と書き込みをロスしない信頼性を両立させたRiakは最近注目を集めるNoSQL/分散型データベースの中でも商用利用しやすい製品であることは間違いなさそうだが、IDCフロンティアとの戦略的提携により、同社の「トライアングル・メガDC」をプラットフォームとしてデータセンター間レプリケーションを行うことで優れた分散ストレージサービスを実現できることになる。

 セミナーの場では、Bashoの日本法人であるバショー・ジャパンの設立もアナウンスされ、国内でのサポート体制も充実するものと期待される。


BashoのRiakの主な特徴Riakの製品構成
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(渡邉 利和)
2012/9/28 11:35