LPI-Japanが、オープンソースデータベース技術者認定試験を開始


 特定非営利活動法人エルピーアイジャパン(LPI-Japan)は6月8日、オープンソースデータベース(以下OSS-DB)技術者認定試験を7月1日に配信開始すると発表した。受験予約はピアソンVUEにて6月8日から受付を開始する。

左から、LPI-Japan理事 池田秀一氏、同 福地正夫氏(富士通)、同 鈴木敦夫氏(NECソフト)、SRA OSS Inc.日本支社長 石井達夫氏、LPI-Japan理事長 成井弦氏、同 鈴木友峰氏代理の橋本尚氏(日立製作所)、NTT 研究企画部門 OSSセンタ センタ長 木ノ原誠司氏、LPI-Japan理事 高橋千恵子氏(NEC)、同 中野正彦氏(ミラクル・リナックス)

 LPI-JapanはLinux技術者認定試験「LPIC」を実施するだけでなく、無料の学習教科書なども編纂・公開することで、オープンソース技術の普及と技術者のレベルアップに努めてきた。OSS-DB技術者認定試験は、LPI-JapanがLPICの実施を通じて培ったノウハウを活用して「OSS-DBの設計・構築・運用・管理ができる技術者が欲しい」というIT業界の要望に応えるもの。オープンソースのデータベースとしては「PostgresSQL」を採用した。

 認定プログラムはOSS-DBに関する基本的な知識を問う「Silver」と、応用レベルの「Gold」の2つのレベルを設定。Silverでは一般的なOSS-DBの設計、構築、運用、開発などについての知識を問い、Goldでは大規模なリアルタイム処理のシステムまでをカバーできるレベルを想定した内容となる。初年度の受験者数は1000名、5年間でののべ受験者数は5万人を想定している。

 なお、LPI-Japanは、Linuxについては学習者向けの標準教科書を無償で公開しているが、OSS-DBについても同様に、初心者向けの教科書をPDFで秋ごろに無償公開する予定だ。

 

機能は商用RDBMSとほぼ同等で価格が無料、広がる需要に技術者が不足

 今回OSS-DB技術者認定試験を開始するLPI-Japanで理事長を務める成井 弦氏は、「PC市場は相変わらずWindows OSが大多数を占めるが、サーバー機ではLinuxが多くの分野で利用されるようになり、分野によってはLinuxがデファクトスタンダードになっている。LPICの受験者数は述べ16万2000人、日本での認定者数も5万6000人に達し、情報処理試験に次ぐ規模になった」とLinuxの普及とLPIC受験者数の伸びを紹介。

 今後伸びる分野としてデータベースを挙げた。わかりやすいメリットとしてはまずコストダウンがあるとして、「性能は商用RDBMSとほぼ同等で、価格が無料。たとえばOracleでは1サーバーあたり300~500万かかり、大規模な運用では初期コストが億単位になる。また保守契約料も年間ライセンス料の2割程度かかる」と具体的な数字を挙げて説明した。また、「インストールは非常に簡単で、アップデートやバージョンアップも簡単にできる」と説明した。

 中でもミッションクリティカルな業務にも対応できる機能を備えた「PostgresSQL」を対象として、OSS-DB技術者認定試験を実施することになったと述べた。PostgresSQL技術者の認定試験を実施するにあたっては、これまで海外のユーザーコミュニティで日本語機能の拡充、エンタープライズ系で使われる機能の拡張強化などで貢献してきたNTTのOSSセンターとSRA OSS Incの協力を得て進めてきたという。

 同じくオープンソースベースのデータベースソフトであるMySQLについて成井 弦理事長は、「現在はOracleの配下に入っており、ディストリビューションのリリース時期や仕様を1つの企業が決めるようになるとしたら、OSSとは違うものになる。今後、中立な立場でディストリビューションされるようであればMySQLもやるかもしれない」とコメントした。

 

postgreの日本語対応やオートバキューム機能追加などで貢献してきた2社が協力

 また、SRA OSS, Inc.日本支社長の石井達夫氏は、認定業務の移管について「2004年の10月からSRA OSS, Inc.でPostgreSQLの認定を開始した。オープンソースの普及を阻害する原因としてエンジニア不足がある。エンジニア教育をして、実際に勉強していただいたエンジニアのレベルを客観的に判断するには、商用DBですでにやっているような認定基準という指標がOSSでも必要となることから開始したもの」とPostgreSQLの認定制度開始について説明。

 さらに、「PostgreSQLの普及のため、公的な団体に認定業務を移管したいと当時から考えていた。今回、LPI理事長成井氏と長い時間をかけて移管作業を行った。認定制度ということでは、LPI Japanは非常に大きな力を持っている」として、LPI Japanへの移管により、OSS-DB技術者認定制度が広がることへの期待を述べた。

 「SRA OSS, Inc.では今後トレーニング事業に注力していきたいと考えている。やはり今日プレスリリースを配信したが、OSS DBのアカデミック認定校第1号ということで認定をいただいた。今後はこうした教育に注力していきたい」として、教育事業に注力する考えを示した。

 また、NTT 研究開発部門 OSSセンタ センタ長の木ノ原 誠司氏は、「PosgreSQLはオープンなコミュニティの中で開発が進められているところが魅力。OSSセンタではPosgreSQLにオートバキューム機能を加えるなどの機能追加を行い、ミッションクリティカルな付加価値を加えることができた」と述べ、クラウド環境にDBを作っていくには重要な機能はほぼ備え、24時間365日稼働のミッションクリティカルな業務にも利用可能となったと説明。

 「OSS-DBも十分に企業のミッションクリティカル系の用途に使えると言うことで広まってきた。あとは、市場全体を広げるためには世の中全体の技術レベルを底上げし、技術を広めていきたいと考えている。NTT OSSセンタでも、できる限りの貢献をしていきたいと考えている」と述べ、技術者認定制度へ協力支援を行うとした。

 

秋にはOSS-DBの入門向け教科書を公開

 実際に試験問題の制作を担当したLPI-Japan理事の鈴木紀夫氏(NECソフト)は、OSS-DBの分野では技術者が不足している。ここで必要な人材とは、商用RDBMSも含めて最適なDBのシステムを提案し、構築・運用できる技術者。OSS-DB技術者認定試験によって、OSS-DBの特徴を理解し、要求に合わせて適切なRDBMSを選択できる技術者を育成できることを目的として制作した」と述べた。

 また、やはりLPI-Japan理事を務める高橋千恵子氏(NEC)は、「LPI-Japanは、これまではLinux中心に活動してきたが、今後はOSS-DBも合わせて普及に努めていきたい。現在Linuxについては無料の標準教科書をPDFでダウンロード公開しているが、これが好評を得ている。OSS-DBの入門向けの教科書制作にもすでに着手しており、この秋には公開できる見込み」とコメント。OSS-DBについても認定試験受験者が基礎的な勉強をするための教科書を制作、公開する予定だという。

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