キヤノンMJ、第3四半期連結決算は減収減益~10月新設のクラウドビジネスセンターでクラウド事業加速へ
キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は、2010年第3四半期(2010年1月~9月)の連結決算を発表した。
売上高は前年同期比1.1%減の4,912億2900万円、営業利益は48.1%減の21億2200万円、経常利益は36.4%減の35億7800万円、当期純利益は前年同期の45億3600万円の赤字から黒字転換し、2億9600万円となった。
■厳しい決算だがビジネスソリューションは堅調で回復の兆し
キヤノンマーケティングジャパンの柴崎洋常務取締役は、「新製品の拡販や各種ソリューション提案などに積極的に努めたが、2010年1月の半導体露光装置および液晶基板露光装置に関する事業部門のキヤノンへの譲渡が影響。利益面ではビジネスソリューションセグメントにおける保守サービス、ITソリューションや、コンスーマ機器セグメントの収益性が低下した」としている。
第3四半期の業績は、売上高は前年同期比2%減の1570億円、営業損失は8億円の赤字、経常損失は5億円の赤字、当期純利益は10億円の赤字となった。
「厳しい決算であったのは事実。MFPの販促費、コンスーマ機器の宣伝費が増加ししたこともあり、経費の圧迫も限定的であり、コンスーマ機器が苦戦したのも大きく影響している。だが、ビジネスソリューションは比較的堅調に推移し、回復の兆しが見えてきた。産業機器は実質的にはプラスとなった」などとした。
第3四半期(7~9月)連結損益 | 第3四半期までの(1~9月)連結損益累計 |
業績予想 | 主要関係会社実績 |
■ドキュメントビジネスは黒字、ITソリューションは赤字
ビジネスソリューション事業の第3四半期累計の売上高は、前年同期比1.3%増の3326億8400万円、営業損失は12億円の赤字。第3四半期の売上高は41%増の3327億円、営業利益は200万円とわずかに黒字となった。
第3四半期(7~9月)セグメント別売上 | 第3四半期までの(1~9月)セグメント別売上 |
セグメント別業績予想 |
「ビジネスソリューション事業のうち、ドキュメントビジネスは黒字、ITソリューションは赤字」とした。
ドキュメントビジネスでは、第3四半期累計の売上高は、前年同期比28%増の2176億円。第3四半期売上高は3%増の703億円。
オフィスMFPが前年実績を上回ったほか、カラー機の「imageRUNNER ADVANCE C5000」シリーズを中心に、ITシステムとの連携や業務の効率化などのソリューション提案とをあわせた販売活動を推進。
さらに、モノクロ機では「imageRUNNER ADVANCE 6000」シリーズを発売するとともに、デジタル商業印刷市場向けプロダクションMFP「imageRUNNER ADVANCE C9000 PRO」シリーズを中心にした販売チャネルの拡充などに取り組んだ結果が、第3四半期の売上げ増を支えた。
レーザープリンターは、モノクロA3機「Satera LBP8630/8610」やA4機「Satera LBP3410」、カラーA3機の「Satera LBP9000」シリーズなどの販売順調に推移。オフィスのプリント需要が回復基調となったことで、トナーカートリッジも売上を伸ばした。
大判インクジェットプリンターは、A1ノビ対応の「imagePROGRAF iPF605L/iPF650」を牽引役としてCAD市場およびポスター作成市場などの新規開拓の効果があり、売り上げは前年を大幅に上回ったという。グループ会社のキヤノンシステムアンドサポートも、ビジネス機器やITソリューションが順調に推移し、前年実績を上回った。
また、ITソリューションの第3四半期累計売上高は1%増の1151億円、第3四半期の売上高は2%増の353億円。
そのうち、SIサービス事業では、車載向けやキヤノン向けのビジネスが順調に推移したものの、個別システムの開発では製造や金融などで依然として厳しい状況にあり、売上は前年を下回った。ソリューション事業では、引き続きセキュリティソリューションが堅調に推移したという。
基盤・アウトソーシング事業は、基盤案件の小型化が進んだことが影響。なかでもサーバーの売り上げが減少し、前年を下回ったが、ITプロダクト事業では、中堅・中小企業のPC入れ替え需要の増加を背景に、ビジネスパートナー経由でのビジネスPCおよびソフトウェアライセンスの拡販効果もあり、売り上げを大幅に伸ばした。
「PC需要はかなり回復してきた」としているほか、「ソリューション系はもう少し成長できるものとみている。さらにシステムインテグレーションの開発コスト構造を変えることにも力を注ぎたい」とした。
ビジネスソリューション部門の業績 | ビジネスソリューション部門の業績予想 |
■新設クラウドビジネスセンターを核としたクラウドビジネスを展開
また、「10月1日付けで、キヤノンITソリューションズに新設したクラウドビジネスセンターを中核として、グループのクラウドビジネスを展開していく」とした。
クラウドビジネスセンターは、キヤノンMJグループのクラウドビジネスの事業戦略やビジネスモデルの策定、ITサービス共通基盤の構築、新規サービスの創造スキーム確立、ビジネス推進体制の強化、スキルアップ推進を図るもので、当初は11人体制でスタート。2011年1月には開発機能をたばねクラウドテクニカルセンターを設置。両センター合わせて100人規模の体制にする予定だ。
導入検討から運用フェーズにいたるまでのコンサルティング、プライベートクラウドの構築、パブリッククラウドとの連携、回線の提供、顧客の社内ネットワーク構築、ハードウェアおよび保守サポートを一元的に提供。「イメージング」、「プリンティング」、「グループIT」をテーマにクラウドビジネスを推進することになる。
コンスーマ機器事業の第3四半期累計の連結売上高は前年同期比1.1%減の1488億9000万円、営業利益は31%減の37億円。第3四半期売上高は41%減の486億円、営業損失は4億円の赤字となった。
2月に発売した「EOS Kiss X4」が好調に推移したものの、9月に発売した「EOS 60D」は想定を下回る実績となった。また、コンパクトデジタルカメラでは、トップシェアを維持したが、出荷台数の減少、単価下落の影響が大きく前年実績を下回った。家庭用プリンターは、9月に「PIXUS MG6130」などの新製品を投入したことにより、本体、消耗品の合計売上高は前年を上回った。
産業機器事業の第3四半期累計売上高は前年同期比45.1%減の96億5300万円、営業損失は4億円の赤字。第3四半期の売上高は41%減の28億円、営業損失は4億円の赤字となった。
半導体の生産回復等に伴い、産業用コンポーネント、光学計測機器や保守サービスなどが回復したものの、半導体露光装置事業などの売却の影響で大きく落ち込んだ。
一方、同社では通期業績予想を下方修正。7月の公表値に対して、売上高では130億円減の6770億円、営業利益は10億円減の70億円、経常利益は5億円減の85億円、当期純利益は据え置き30億円とした。
セグメント別では、ビジネスソリューションの売上高が100億円減の4430億円、そのうち、ドキュメントビジネスが40億円減の2898億円、ITソリューションが60億円減の1532億円とした。また、コンスーマ機器は30億円減の2200億円、産業機器は据え置き140億円とした。