キヤノンMJ、新中期経営計画でビジネスソリューション強化を掲げる

2010年度は「絶対に縮まない」と川崎社長

 キヤノンマーケティングジャパン株式会社(キヤノンMJ)は1月27日、2012年度を最終年度とする中期経営計画を発表した。

 2012年度には、売上高で7600億円(2009年度比11%増)、営業利益で300億円(同3.8倍)、営業利益率では3.9%、一株当たり利益を100円以上を目標とし、「最も重要なのは、売り上げ拡大以上に、収益力の向上。基本方針として、キヤノンとの連携強化によるキヤノン製品のシェアナンバーワンを実現すること、顧客への独自の付加価値を提供するサービス企業グループへ変革することに取り組む」(キヤノンMJ代表取締役社長の川崎正己氏)とした。

 重点戦略として、「ドキュメントビジネスの再構築」「ITソリューション力の強化とサービス事業の創出」「デジタルフォトナンバーワンの実現」「産業機器事業の強化・拡大」「経営基盤の強化」の5点を掲げ、「300億円の営業利益目標を達成するには、2009年度に赤字となったビジネスソリューション領域での収益回復が重要課題」と位置づけ、「ドキュメントビジネスの再構築」、「ITソリューション力の強化とサービス事業の創出」に優先的に取り組んでいく姿勢をみせた。

 「ドキュメントビジネスの再構築」では、国内で月間580億枚とされるドキュメント市場において、360億枚を占めるプロダクトプリンティング市場での製品力強化を図り、帳票印刷の分散化、デジタル商業印刷の小ロット化といった動きに対応するほか、220億枚を占めるオフィス市場の集約化にも対応。主力となる昨年9月に投入したimageRUNNER ADVANCEの親機に続き、カラー対応の子機、初のモノクロ対応となる製品それぞれ新たに投入することで、imageRUNNER ADVANCEのラインアップを完成。「2010年は反転攻勢に打って出る」(川崎社長)とした。

 また、ドキュメントソリューションの拡充としては、「この分野では業界随一」とする、中小企業から大手企業までを対象にした、MEAPをベースとした各種ソリューションの幅広い展開を強化。ハードウェアメンテナンスに加えて、ユースウェアやネットワーク型サービスの展開により、ストック型ビジネスを創造していくことに言及。「ハードが売れれば、そのまま消耗品が売れて収益が増えるというビジネスモデルには限界が出てきた。これまでの保守サービスにとどまらない新たなサービスモデルの構築を、キヤノンMJ自らが取り組んでいく必要があるだろう」とした。

 「ITソリューション力の強化とサービス事業の創出」では、ITSグループ企業の再編として、5月1日付けでキヤノンソフトウェアを完全子会社化することに触れ、「ITサービス分野においては、確固たる地位を確保するとともに、効率性の追求が求められている。グループ内のリソースを最大限に活用できる体制にした」と説明した。

 また、キヤノングループ内のITシステムの革新と、そのノウハウを活用した事業展開に取り組むほか、ITSの営業力強化、データセンター事業とクラウドサービス事業の展開にも取り組む姿勢をみせた。

 データセンター事業およびクラウドサービス事業については、システム運用サービス事業として、業務システムの維持、管理、システム運用、IT基盤運用、ファシリティ管理などを重点分野に展開。さらに、SuperStreamによる会計、人事、給与などを、中小企業を対象に新たにSaaS展開していく計画を示した。

 さらに、現在、東京に2カ所、沖縄に1カ所設置しているデータセンターを、新たな2012年秋に、東京都内に追加で竣工する予定を明らかにした。

 新データセンターは、1万6000平方メートルの延べ床面積を誇り、サーバー室の面積は4960平方メートル。投資額は約150億円になるという。

 「保守サービス、ITアウトソーシング事業は成長領域ではあるが、当社の事業比率はまだ低い。今後、大きく成長する上では、安定的な収益基盤を獲得しなくてはならない。そのためにデータセンター事業は重要な役割を果たす。2009年度にはシステム運用サービスは、40億円程度の事業規模だが、これを10年後には200億円の事業規模にまで拡大する」(川崎社長)とした。

 「デジタルフォトナンバーワンの実現」では、デジタル一眼カメラやコンパクトデジカメ、インクジェットプリンタなどの主要製品分野におけるナンバーワンシェアの維持のほか、コールセンターとサービスセンターの統合による顧客満足度の向上、フォトカルチャー事業の強化、デジタルフォト文化を支援する新たなビジネスモデルの創造に取り組むという。

 「産業機器事業の強化・拡大」では、赤字から収益事業への転換を目標とするほか、「経営基盤の強化」では、受注物流およびサービスを対象とした新たなITシステムの導入により、在庫管理を徹底するとともに連結与信管理の精度向上などにより、棚卸資産を13日から11日にまで削減することを目指すになどとした。


 一方、同社では2009年度(1~12月)連結決算を発表した。

 連結売上高は前年比17%減の6866億円、営業利益は75%減の63億円、経常利益は68%減の82億円。当期純損失は、43億円の最終赤字となった。

 また第4四半期(10~12月)の全社売上高は12%減の1899億円、営業利益は72%減の22億円、経常利益は66%減の26億円、当期純利益は94%減の2億円となった。

 キヤノンMJ常務取締役の柴崎洋氏は、「企業のIT投資意欲が第4四半期は回復に向かうと考えていたが、それが戻らなかったこと、MFPにおける価格競争が激しかったことなどが影響している。また、SIサービスの落ち込みが激しい」などとした。

 ビジネスソリューション事業の売上高は、前年同期比15%減の4192億円、営業損失は33億円の赤字。そのうち、ドキュメントビジネスの売上高は15%減の2792億円。ITソリューションの売上高は16%減の1400億円。

 コンスーマ機器事業の売上高は9%減の2417億円、営業利益は2%増の107億円。産業機器事業は、売上高が61%減の257億円、営業損失は11億円の赤字となった。

 なお、2010年度連結業績予想は、売上高は前年並みとなる6900億円、営業利益は27%増の80億円、経常利益は10%増の90億円、当期純利益は30億円を目指す。

 「2年連続の減収減益となったが、2010年度は絶対に縮まないことが最大の目標になる」と、川崎社長は増収増益に意欲をみせた。





(大河原 克行)

2010/1/27 12:00