ニュース

あの場所も仕事場に!? マイクロソフトの「テレワーク週間」始まる

織田浩義氏

 日本マイクロソフト株式会社は10月27日~31日の間、「テレワーク推奨強化週間 2014」として、社内や社外を巻き込んだテレワーク実践を行う。その内容を紹介する記者会見が27日、開催された。

 テレワークは「ICTを活用した場所や時間にとらわれない柔軟な働き方」を実現するモノで、「事業継続性の確保」「優秀な社員の確保」「生産性の向上」「オフィスコスト削減」「ワークライフバランスの実現」といった効果が期待される。

 日本政府も「テレワーク推進」を提唱しており、「世界最先端IT国家創造宣言」では、雇用形態の多様化とワークライフバランスの実現をめざし、2020年に、テレワーク導入企業を2012年度比3倍、週1日以上終日在宅で就業するテレワーカー数を全労働者数の10%以上に引き上げると宣言した。

 こうした中、マイクロソフトは2012年からテレワークプロジェクトを開始。2012年・2013年はテレワークを全社で実施するというマイクロソフト独自の取り組みで、「マイクロソフトだからできるんじゃないの?」という声もあったことから、2014年からは外部も巻き込んだ形で実践。今回の「テレワーク推奨強化週間 2014」では外部の賛同企業を募ったところ、瞬く間に32社が集まったという。

マイクロソフトのテレワークの取り組み
「テレワーク推奨強化週間 2014」賛同企業

 取り組みの目的は、(1)社内のさらなる経験蓄積・データ収集、(2)テレワークの外部への波及、(3)日本のテレワーク推進に貢献すること。これらを通じて、活動の定常化を狙うという。執行役常務 パブリックセクター担当の織田浩義氏は「『いつでも、どこでも仕事ができる』だけでなく『いつでも、どこでも活躍できる』へテレワークを成熟させたい」との考えも示す。

取り組みの目的
「いつでも、どこでも活躍できる」テレワークへ

 そのために労務管理、人事制度をどうするか。「例えば、休暇中に仕事のメールを見たり、遊んでいる合間に仕事の電話をしたり、それらを労務上どう扱うのかという問題があると思う。そうしたワークスタイル変革に伴うさまざまな疑問を実践の中で解いていくような取り組みにしたい」(織田氏)としている。

この1週間のマイクロソフトの働き方は?

 では、この1週間、実際にマイクロソフトの社員はどのように仕事をするのか。取り組みを開始する旨は、社長室から全社あてにメールで案内した。約2500名の全社員が対象となり、この1週間は自身の業務の状況に応じて、通常通りの業務遂行と生産性をあげることを意識しながらテレワークを実施する。

マイクロソフトの今週の働き方
テレワークを支えるIT基盤。Office 365が主軸となる

 営業部門にとっては月末で追い込み時期だが、あえてこの時期にしたという。普段は200数十名が働いているというオフィスフロアをのぞいてみると、ポツリポツリと数名いるだけでガランとしている。

業務時間なのにガランとしたオフィスフロア

 社員は自宅をはじめ、さまざまなところで働いているほか、賛同企業のオフィスでも働く。賛同企業との連携チャレンジ企画として「ワークスペースの相互利用」を進めようというもので、例えば商談の後、近くに賛同企業があれば、自社に帰らずに賛同企業のオフィスを借りて業務を遂行。こうして無駄な移動を省こうというわけだ。賛同企業32社の内、約3分の1が「相互利用」に取り組んでいるという。

マイクロソフトのワークスペースでも日本ビジネスシステムズの社員が働いていた

高階恵美子参議院議員や釜石市が挨拶

 記者会見では、賛同企業の数社(団体)が「Lync」を通じて思いのたけを語る場面も。最初に挨拶したのは、自民党参議院議員でテレワーク推進特命委員会の事務局長を務める高階恵美子氏。「人口減少が進む中、一人一人の望む働き方を実現することが重要になっています。長時間労働を改善し、年次休暇を取りやすくするのはもちろん、多様な働き方を実現したい。そのためにテレワークが重要な役割を果たすはず。男女ともに、どこの地域でも、小さな事業所でもテレワークができるように、関係各所と協力しながら取り組んでいる」とした。

 それ以外にも、日本テレワーク協会、IT企業の日本ビジネスシステムズ、岡村製作所、釜石市などが挨拶。釜石市は東日本大震災後、マイクロソフトなどの企業と連携する中で、情報をどのように活用すべきかを考え続けているという。災害発生時に「この場所でなければ仕事ができないというのは大変なリスク」――と。

高階恵美子氏
釜石市

新しいビジネス機会も創出

 マイクロソフトのこれまでの成果としては、社員の9割が「こうした環境は必要」と回答し、「ワークライフバランスが向上した」という回答が17%増となった。さらに導入後、商談数が47%増、受注額が27%増というビジネス面での具体的な成果も挙がったという。

 今後は11月以降に「テレワーク推奨強化週間 2014」の活動結果報告を予定するほか、2015年以降もさらなる発展に努めるという。「特に、やってみて分かったことは、テレワークを推進することで新しいビジネス機会が思わぬ形で生まれるということ。例えば、外でテレワークしているときにふと周りの人に聞かれたくない話もある。そんなときにカラオケボックスで仕事をする社員もいる」(織田氏)。

 今回の賛同企業の中に、第一興商が含まれていることにお気づきだろうか。「まさにテレワークに絡めて、例えば利用率の低い昼間に何かできないか、第一興商と話を始めている」。近いうちにカラオケボックスに格安のテレワークプランが登場するかもしれない。

 織田氏は「仕事のビヘイビアが変わることで、ほかにも新しい取り組みが生まれる可能性がある。そういうところへ今後も働きかけていく」としている。

川島 弘之