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インテル、データセンター向け新ファミリ「Xeon E5-2600 v3」を発表、データセンター自動化の促進を図る

インテル ビジネス・デベロップメント データセンター事業開発部 部長の福原由紀氏

 インテル株式会社は9日、データセンター向け新製品ファミリ「インテル Xeonプロセッサー E5-2600 v3(以下、Xeon E5-2600 v3)」を発表した。インテル ビジネス・デベロップメント データセンター事業開発部 部長の福原由紀氏は「ITインフラの主流がクラウドへと移行しているにもかかわらず、現在のデータセンターはスタティックでマニュアルな設定がほとんど。これではデバイスやデータの爆発的な増加やワークロードの多様化に対応できない。今回の新プロセッサは性能や機能の向上はもちろんのこと、データセンターの自動化に貢献することを強く意識しており、“進化するデータセンター”を支援していく製品」と語り、データセンターの効率化を促すプロセッサであることを強調する。

インテル Xeonプロセッサー E5-2600 v3
製品のウエハ

前世代からの4つの改良点

Xeon E5-2600 v3の概要

 Xeon E5-2600 v3は前世代のv2から性能面で大きく進化しており、コア数は最大12コア/24スレッドから最大18コア/36スレッドに、対応メモリはDDR3/4チャネルからDDR4/4チャネルに、メモリ周波数は最大1866MHzから最大2133MHzへと向上している。

 インテル ビジネス・デベロップメント データセンター事業開発部 プラットフォーム・マーケティング・マネージャー 松村浩氏は「効率的なデータセンターの構築を意識し、新製品では主に4つのポイント――性能、電力効率、マネージビリティ(管理)、仮想化における機能強化を実現した」と説明する。

・性能
Intel AVX 2.0(Advanced Vector Extensions)により、前世代の2倍となる1クロックあたり16の倍精度浮動小数点演算を実現。整数ベクトル演算も256ビット幅に、さらに浮動小数点のFMAにも対応。ベンチマークでは、Linpackパフォーマンスは最大90%向上、Javaアプリケーションのパフォーマンスの指標となるSPECjbb 2013-MultiJVMでは最大130%向上という結果に。HPC(ハイパフォーマンスコンピューティング)、画像処理、コーデックなどの分野でより大きな効果が期待される。また、DDR4の採用により帯域幅が最大で50%向上、メモリを多く積むほどに高い効果を得られる仕様となっている。

・電力効率
DDR3を採用していた前世代に比べ、DDR4により電力効率を最大50%向上。またコアごとに異なる周波数での動作を可能にするPer Core P-States(PCPS)により、消費電力量を大きく抑えられるようになり、最大36%の電力効率向上が見込める。

・マネージビリティ
データセンターの電力とリソースを管理するIntel Node Manager 3.0を採用したことにより、環境情報管理だけでなくリソース管理機能も強化。これまでは吸気口の温度管理のみだったが、新製品では排気口の温度やエアフローの管理もセンサーなしで可能に。CPU、I/O、メモリなどの使用率、CUPS指標(プラットフォームの使用率)も新たにレポート作成可能となり、全データセンター管理の効率化をより促進する。

・仮想化
各キャッシュをリアルタイムにモニタリングするキャッシュQoSにより仮想マシンを適切に配置。重くて迷惑なタスクを発見したら、OSを介在することなく管理ソフトによって別のサーバーに移動させることが可能になるため、データセンターの弾力的で安定した運用に貢献する。また仮想化のオーバーヘッドを低減するVMCSシャドーイングにより、“2階建てのハイパーバイザ”とも言える仮想化の階層化を実現し、仮想マシンの分離/管理を強化。これにより最新OSとレガシーOS、本番環境と開発/テスト環境といった具合にシステム上で複数の仮想マシン環境を使用することが可能になっている。

最適なVM配置を実現するキャッシュモニタリング

“進化するデータセンター”を支える新技術

 Xeon E5-2600 v3は、前世代のv2に採用されたマイクロアーキテクチャ「Ivy Bridge」を進化させた「Haswell」を製品化したファミリである。したがって先に挙げた新機能の多くは、Haswellというマイクロアーキテクチャの刷新による部分が大きい。「Haswellは二重化されたリングバスを内部構造にもつアーキテクチャ。分岐予測の改善、バッファの容量増加、TLB(Translation Lookaside Buffer)の容量増加、実行ユニット数の増加、フロントエンドの性能改善などは、HaswellがIvy Bridgeよりも約10%高いIPC(プロセス間通信)を実現できるからこその機能強化。また、コアの浮動小数点演算性能や電力効率の向上もHaswellの進化に伴っている」(インテル インテル技術本部 プラットフォーム技術統括部 シニア・アプリケーション・エンジニア 中田久史氏)。

 “効率的なデータセンター”を意識した製品ファミリであるがゆえ、Xeon E5-2600 v3ではデータセンターの将来を見据えた機能が随所に実装されている。例えば統合電圧レギュレータ(IVR)などはその一例だ。従来製品のv2までは電圧レギュレータはプラットフォーム側にあり、CPUコアVRやPLL VR、I/O VRといった具合に個別に分かれていたが、v3ではこれらの一部をひとまとめにした統合化入力VRを実現している。電源回路を大きく簡素化できるため、実装ベースを増やすことが容易になる。電圧レギュレータはCPUソケットの中にあるため、より細かな電圧と周波数の制御が可能だ。「IVRの実装により、パワーステート間の高速遷移やボード上の部品実装面積の低減などが図られており、将来的なインテグレーションにも柔軟に対応することが可能」(中田氏)。

二重リング構造をもつ内部バス
インテル インテル技術本部 プラットフォーム技術統括部 シニア・アプリケーション・エンジニア 中田久史氏

 また、クラウド時代の多様なワークロードに対応するため、Xeon E5-2600 v3から新たにAVXベースとAVXターボがサポートされている。ワークロードのタイプやアクティブなコア数、電流、消費電力、プロセッサの温度などの条件に応じて周波数を上下できる機能で、ターボモードでは自動的にベース周波数より高い周波数で動作する(ただしプロセッサの仕様制限範囲内)。もしコアがより高い電圧と電流を要求するAVX命令の実行を検出した場合、PCU(Power Control Unit)が電圧と周波数(ワークロード依存)を調整し、命令実行後、約1ミリ秒後に通常動作モード(非AVX)に復帰するしくみになっている。

 もう1点、Xeon E5-2600 v3で新たに採用された技術がスヌープモード「Cluster On Die(COD)」だ。これはNUMA(Non-Uniform Memory Access)用に高度に最適化されたワークロードのためのスヌープモードで、10コア以上のSKUにおいて2つのクラスタ(クラスタ0とクラスタ1)に1つずつホームエージェントを割り当てる。各ホームエージェントは約14キロバイトのキャッシュを内蔵しており、コヒーレンストラフィックとキャッシュ間転送レイテンシを低減し、メモリ帯域幅の拡大を見込めるようになる。

v3ではデフォルトのアーリースヌープ、ホームスヌープのほかに、新たにCODをサポートする

 インテルは「今後もコア数の増加、帯域幅増によるコアの稼働率向上、電力効率の向上を引き続き図っていき、E5-2600 v3シリーズではより広い市場セグメントに訴求していきたい」(福原氏)としており、クラウドに最適化した“進化するデータセンター”に求められるプロセッサファミリの開発に力を入れていく構えだ。

五味 明子