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NEC、2013年度連結業績は減収減益も期初計画は達成

事業ポートフォリオを再編し社会ソリューション事業に重点投資

 日本電気株式会社(以下、NEC)は28日、2013年度(2013年4月~2014年3月)の連結業績を発表した。売上高は、前年比0.9%減の3兆431億円、営業利益は同7.4%減の1062億円、経常利益は同24.9%減の692億円、当期純利益は同10.9%増の337億円となった。

 NECの遠藤信博社長は、「パブリック、エンタープライズ、テレコムキャリア、システムプラットフォームの各事業が増収となったものの、NECモバイリングの非連結化などによりその他事業が減少したことで、売上高は前年比0.9%の減収となった。しかし、期初計画からは431億円の上ぶれとなり、継続事業ベースの売上高では約6%の増収を達成した」と、売上高は前年からは微減であったが期初計画を上回ったとした。

 また、「営業利益は、NECモバイリングの非連結化や前年の液晶関連特許売却などの影響、さらにはテレコムキャリアの減益の影響を受けて前年比7.4%の減益となった。一方で、当期純利益は、NECモバイリングおよびNECビッグローブの株式売却による特別利益計上が寄与したことで、33億円の増益となった」と、営業利益が減少しながら当期純利益では増益となった理由を説明した。なお、営業利益と当期純利益は、ともに2期連続で期初計画を達成している。

NECの遠藤信博社長
2013年度連結業績のサマリー
セグメント別の2013年度業績

 セグメント別業績は、パブリック事業の売上高は前年比8.5%増の7384億円、営業利益は前年から96億円増の586億円となった。「官公向け、公共向けを中心に堅調に推移したことで増収となった。しかし、期初計画比では、補正予算の獲得を目指したものの、自社案件が積み上がらず、計画を66億円下回った。営業利益は、売上が増加したことなどにより増益となった」としている。

 エンタープライズ事業の売上高は前年8.2%増の2723億円、営業利益は前年から11億円増の65億円となった。「売上高は、流通・サービス業向けが堅調に推移したことなどにより増収。営業利益は、流通・物流インフラ関連の投資費用の増加などがあったものの、売上が増えたことによって増益になった」とした。

パブリック事業の業績
エンタープライズ事業の業績

 テレコムキャリア事業の売上高は前年比2.3%増の7258億円、営業利益は前年から112億円減の603億円。「国内事業は好調であった前年度から減収となったが、海外事業において通信運用管理ソリューション(TOMS)や無線通信機(モバイルバックホール)が増加したことで増収を達成した。しかし、SDNなどへの投資加速と、前年にあった知財関連の一過性の利益計上の影響などにより営業利益は減益となった」と説明している。

 システムプラットフォーム事業の売上高は前年比4.9%増の7808億円、営業利益は前年から20億円減の307億円となった。「売上高は、前年にあった大型案件の影響を受けたものの、第4四半期にビジネスPCのハードウェアを中心に増加したことで増収となった。一方で、営業利益については、プロジェクトミックスの悪化などによって減益となった」という。

テレコムキャリア事業の業績
システムプラットフォーム事業の業績
その他事業の業績

 その他事業の売上高は前年比23.3%減の5259億円、営業損益は前年から183億円悪化し14億円の赤字となった。「売上高は、携帯電話の出荷台数減や、NECモバイリングおよび電子部品事業を非連結化したことなどにより減収。営業損益については、前年にあった液晶関連特許の売却の影響、および事業の非連結化や売上減などにより14億円の損失となった」と述べた。

 携帯電話端末事業の状況について、遠藤氏は、「2013年度は、従来型の携帯電話機事業の見直しを行った。国内は既存の技術資産を活用して当面継続するが、海外については事業を収束する。これにともない、下期には、事業構造改善費用として、約110億円の特別損失を追加計上し、年間で約220億円を計上した。この費用は、NECカシオモバイルコミュニケーションズの子会社である海外現地法人の清算、および海外向けの新規開発中止や国内向け保守関連の費用として当てられたもの。これらの取り組みによって、今まで抱えていた携帯電話端末事業の課題を解消し、ミニマムオペレーション体制を実現した」と、今後の携帯電話端末事業に関する損失リスクがすべてなくなったことを強調した。

業績予想のサマリー

 2014年度の業績見通しは、売上高が前年比1.4%減の3兆円、営業利益は前年比138億円増の1200億円、経常利益は208億円増の900億円、当期純利益は13億円増の350億円とした。

 2014年度の市場環境について、遠藤氏は、「国内経済は、年度後半に向けて緩やかに回復すると見込んでいる。IT投資に関しては、SIやアウトソーシング需要などが堅調に推移すると見ている。特に、パブリック関連は、消防デジタル無線特需の継続、マイナンバー制度にともなう政府・自治体投資増など、社会インフラ関連の投資が拡大することに期待する。テレコムキャリアは、LTE関連投資やTOMS、SDN需要がグローバルに拡大。スマートエネルギー関連は、政府の補助金効果もあり、蓄電池市場が活性化する」との見通しを示す。「こうした市場環境の中で、当社としては、“CS NO.1”、“Global First”、“One NEC”の3つの活動テーマの下、成長のための注力領域への重点投資を実行する。また、グローバルセーフティ事業(GSD)の拡大、海外事業の収益性改善、コストダウンの推進などに取り組んでいく」と、同社の2014年度の事業遂行方針を述べた。

 セグメント別の2014年度見通しは、パブリック事業の売上高は前年比8.3%増の8000億円、営業利益は144億円増の730億円。エンタープライズ事業の売上高は前年比1.0%増の2750億円、営業利益は25億円増の90億円。テレコムキャリア事業の売上高は前年比6.1%増の7700億円、営業利益は57億円増の660億円。システムプラットフォーム事業の売上高は前年比0.7%減の7750億円、営業利益は43億円増の350億円。その他事業の売上高は前年比27.7%増の3800億円、営業利益は24億円増の10億円としている。

業績の推移
事業ポートフォリオの見直し

 また今回、遠藤氏は、2015中期経営計画の進捗状況についても言及。「中期経営計画の成果として、2013年度は、TOMSやSDN、ビッグデータ、データセンターなど注力領域での投資を実行。A123社の蓄電システム事業の買収も行った。また事業ポートフォリオを見直し、NECモバイリング、NECビッグローブの事業譲渡や、スマートフォンの新規開発中止などを断行した。さらに、NECフィールディングの公開買い付けの実施、ソフトウェア開発、ハードウェア開発・生産など、開発・生産・コスト競争力の強化も実施した」という。今後の課題としては、「成長戦略の具体化と加速によって、注力領域や海外での確実な売上拡大を目指す。また、収益性改善に向けた取り組みも強化する。海外事業の収益性改善や、低収益性事業の見直し、事業統合効果の実現を図るとともに、コスト競争力の強化に取り組んでいく」ことを挙げた。

 中期経営計画を踏まえた重点領域での具体的な成長戦略としては、パブリック事業では、注力する社会インフラ領域(交通、水、通信、都市開発、工業団地、サイバーセキュリティ)での実績獲得、およびマイナンバー関連システムの受注を目指す。特に、2013年4月にシンガポールに設置したグローバルセーフティ事業については、「2013年度は、グローバルでの事業遂行体制を確立し、施設監視(IVS)や通信セキュリティシステム(TCS)、サイバーセキュリティ、顔認証などで受注を獲得した。2014年度は、前年比130%の事業拡大を狙う」としている。

 テレコムキャリア事業では、高い製品競争力とグローバル提供体制の強みを発揮し、NetCracker社を軸にTOMS事業を拡大していく考え。具体的には、OSS/BSS統合ソリューションの「TOMS9.0」を製品化し、より短期間かつ低コストでシステム構築・機能追加を実現可能にしていくという。また、ネットワーク事業の成長戦略として、企業・官公庁およびテレコムキャリア向けにSDNの取り組みを加速していく。このほか、スマートエネルギー事業では、電力会社・企業向け蓄電システムを提供する「A123 Energy Solutions」を約1億ドルで買収。今後、蓄電SIとICTを融合し、グローバル市場へ本格展開していく方針。

 遠藤氏は、「成長戦略を推進するために、注力領域に重点投資を行う。海外のテレコムキャリア領域(SDN、クラウド)を最優先に、社会ソリューションの中核差異化要素として、ビッグデータやサイバーセキュリティの立ち上げに注力する。この領域において、前年度比ほぼ倍増の150億円の戦略投資を計画している」との考えを明らかにした。

 「2014年度の事業計画は、2015中期経営計画の実現に向けた重要なステップであり、営業利益1200億円、当期純利益350億円を確実に達成し、さらなる上積みを目指していく。そして、3年連続で年間計画を上回ることで、安定的な配当を継続していく」と、2014年度の計画達成に向けて意欲を見せた。

唐沢 正和