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ネットワン、シリコンフォトニクス技術を用いた事業者向けルータ「r10004」を販売

ラインカードを光ファイバーで直結、構成を劇的にシンプル化

 ネットワンシステムズ株式会社(以下、ネットワン)は27日、イスラエルCompass Electro-Optical Systems(以下、Compass-EOS)と国内での販売代理店契約を締結したと発表した。これに伴い、Compass-EOSのシリコンフォトニクス技術を搭載したルータ「r10004」を同日より販売する。

 r10004は、通信事業者やサービスプロバイダのコア、アグリゲーションといった用途で利用できるハイエンドルータ。キャリアクラスのハイエンドルータというと、従来はフルラック、あるいはそれ以上の規模となる製品を想像するが、r10004はわずか6Uのシャーシに収まってしまう、省スペース性と省電力性が特徴という。

 その秘密は、ルータの構成を単純化していることだ。一般的なルータは、ラインカードミッドプレーンやスイッチングファブリックなどの要素を持ち、構造が複雑化している。しかしr10004は、ラインカード間をマルチモードの光ファイバーケーブルでメッシュ接続するだけのシンプルな構造により、これらを不要とし、コストや消費電力、設置に必要なスペースを大幅に削減した。

r10004のシャーシ(左)と、10GbEラインカード(右)
ラインカードを直接、メッシュ接続するので、ミッドプレーンやスイッチングファブリックを省き、構造をシンプル化した

 この構成を可能にしているのが、同社の特徴にもなっているシリコンフォトニクス技術である。同社のチップでは、デジタルCMOSチップに光インターフェイスを結合させ、1つのチップ上にレーザー発光器と受光器を搭載しているが、一般的な電気回路では、センチメートル単位での接続が限界なのに対し、パッシブ光通信により200~300メートルの相互接続を可能にしているため、ミッドプレーンやスイッチングファブリックを別途用意する必要がなくなった。

 Compass-EOS マーケティング担当バイスプレジデントのアサフ・ソメク氏は、「1つのチップには168のレーザー発光器と受光器が入っており、1.34Tbpsの性能を提供する。全てのラインカードが直接メッシュ接続によってリンクを持ち、帯域も多いために輻輳も起こらない。また、パッシブ方式のために電力が必要ない点も大きなメリットだ」と、このチップによって実現したことの価値を説明した。

Compass-EOSが開発した、シリコンフォトニクス技術を用いたチップ
イスラエルCompass-EOS マーケティング担当バイスプレジデントのアサフ・ソメク氏

 シャーシには最大4枚のラインカードを搭載でき、ラインカードは当初、10Gigabit Ethernet(GbE)×20と100GbE×2の2種類が用意される。なお、200~300メートルの接続が可能なことから、将来的にはシャーシをまたがって1つのルータを構成するマルチシャーシにも対応する予定で、ロードマップでは最大10台強のシャーシを相互接続できるところまでが計画されている。

 また、OSはLinuxベースの独自OSを採用しているが、設定用のコマンドラインもあまり他社との違いはないそうで、「CiscoやJuniperの製品に慣れた技術者なら、半日のトレーニングで当社の製品を利用可能」(Compass-EOS カントリーマネージャの川上佳樹氏)とのこと。

 なお、r10004の大きな特徴になっているのが、すでにサービスプロバイダでの実用実績を持つ点だ。ソメク氏によれば、「すでに1年前から、Tier 1のサービスプロバイダに提供されている。新しいすぎて本本で使えるのか、という心配がこの手の製品には必ず言われるが、当社の製品はすでに利用されており、非常に信頼性も高い」とのこと。日本の事業者も、NTT Comがアジア・日本との仮想リンクを構築する日米間海底ケーブルで採用しているそうで、Compass-EOSとネットワンでは、こうした実績を日本の事業者にもアピールしていく考えだ。

 価格は調整中。イメージとしては、CiscoやJuniperといった競合ベンダーの1/2から1/3程度を想定しているとのこと。

石井 一志