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SAPジャパン、需給業務計画の策定・調整を支援する「S&OP on HANA」

 SAPジャパン株式会社は6日、企業のサプライチェーン全体のデータを統合・分析し、需給業務計画の策定・調整を支援するSaaS新製品「SAP Sales and Operations Planning powered by SAP HANA(S&OP on HANA)」を国内で発売した。

タイ洪水、東日本大震災――劇変するビジネス環境

 景気の変動、東日本大震災やタイ大洪水などの自然災害など、経営環境は日々厳しさを増している。企業は変化に対して経営のアクセル・ブレーキの踏み替えを迅速に判断しなければならない。そうした状況において、企業が収益を最大化するためには、実行可能性の高い需給業務計画の策定、需要や環境の変化に伴う計画の迅速な見直しが求められる。

 需給業務計画の遂行には、営業、マーケティング、財務、製造、調達、物流など需要・供給計画プロセスにかかわる複数部門の連携が必要となる上、多くの企業では各部門がそれぞれ独自に製品価格や売上予測、需要、在庫・製造コストなどのデータを保有。近年は各部門が扱うデータ量も急増しており、そうした膨大なデータを一元的に管理し、限られた時間内に、一貫した需給業務計画を迅速かつ高精度に策定・調整することが困難となっているという。

需要・供給計画のバランス調整を実現

 S&OP on HANAを導入することで、そうした課題が解決できるとともに、需要・供給計画プロセスにおける可視性と俊敏性を向上できる。例えば、「この地域の成長によって全社利益はどうなる?」と考える戦略・販売策定部門、「新規顧客の受注は生産計画に入っている?」という営業部門、「この新製品はいつまでに何個作ればいい?」という製造部門――これら複数の部門にまたがる需要・供給計画プロセスのバランス調整が可能となる。

 ここでいうバランス調整はつまりは「部門間調整」だ。この業務はどうしても手間がかかり、限られた時間内に完了するのが難しい。グローバル企業では各地域に情報が散在し、どれが最新情報なのか確認するのにさえ手間がかかってしまう。S&OP on HANAには、Excelベースのプランニング機能、Webベースの分析レポート機能、Web/モバイルベースのソーシャルコラボレーション機能などが搭載されており、SAPアプリケーションはもちろん、Excelや他システムのデータを集約・一元管理できる。

戦略計画と実行計画の整合を取る
クラウドベースのSAP HANA上で提供

ソーシャル機能の重要性

原尚嗣氏

 これらの機能によって、部門間調整の潤滑油となるのが「S&OP on HANA」の価値だ。このため、ソーシャルコラボレーション機能が大きな特徴になると、ソリューション本部 アプリケーションエンジニアリング部 ビジネスエンジニアリング ダイレクターの原尚嗣氏はいう。

 「例えば、販売や製造計画の数字がなぜそうなっているのか、決定に至る文脈が分からないとなぜそういう調整になったか、ほかの部門では分からない。S&OPが現時点であまり根付いていないのは、コミュニケーションの手段が弱かったためと思われる。サプライチェーンはまさにSAPの得意分野とするところだが、それに加えてSAP Jamをベースとしたソーシャルコラボレーション機能を備えているところが、S&OP on HANAの強みだ」。

クラウドとHANAに乗せた狙い

 同じようにクラウドとHANAに乗せたことにも明確な狙いがある。「S&OPはもともとSAP ERPに搭載されていた機能。しかし限られた範囲のERPの機能では(S&OPとしては)不十分。特にタイ大洪水や東日本大震災で環境の激変を経験した企業からS&OPの必要性を聞く機会が増えたが、これほどの激変に追随するためには新機能の追加が容易に行えなければならない。それにはクラウド型が最適。また、調整業務の中では当然、仮説計画やシミュレーションが行われる。その結果をリアルタイムに知りたいというニーズに応えるためにHANAを基盤とした」。

 分析においては、「SAP HANA Cloud Platform」をベースに、複数部門のデータをリアルタイムに集約し、高速、高精度に処理できる。いつでも必要な時に、実データに基づいた需給業務計画の策定・調整が行える。また、シナリオ分析機能を使うことで、複数のシナリオ計画やシミュレーションをリアルタイムで実行できるため、シナリオごとに比較検討し、より高収益の見込める実現可能性の高い計画を迅速に選択し、企業全体で共有、実行に移せるという。

分析レポート画面
ソーシャルコラボレーション画面
Excelベースのプランニング画面

S&OPには“まず使ってみる”という姿勢が必要

 また、S&OPは、モデリング済みの需要・供給計画プロセスのテンプレートを容易しており、クラウドで提供されるのも相まって、最短で2~3カ月という短期間で利用開始できるのもメリットだ。ユーザーインターフェイスには使い慣れたExcelやWeb UIを採用するため、エンドユーザーも取っつきやすい。

 「サプライチェーン管理やS&OPというと従来は大規模なシステムとして導入されるのが一般的だった。しかし、環境の変化が早い昨今では、長々とシステム設計をしていてはビジネスに遅れが出てしまう。S&OP on HANAのような手軽なツールを“まずは使ってみる”という姿勢が企業には求められている」。

 価格は未公表だが、従来製品と比べると低価格で“まずは使ってみる”ことのできる価格帯になるという。

川島 弘之