エンバカデロ、ビジュアル開発ツールの最新スイート製品を発表

Win 8/OS X Mountain LionからWeb、モバイル向け開発まで統合


 エンバカデロ・テクノロジーズは9月4日、クロス開発時代のビジュアル開発ツール「Delphi XE3」と「C++Builder XE3」、およびWeb、モバイル向けのビジュアル開発ツール「HTML5 Builder」、これらを含む最新スイート製品「Embarcadero RAD Studio XE3」を本日より出荷開始したことを発表した。

 「Delphi XE3」は、Windows、Mac OS X向けのアプリケーションを効率よく開発できるビジュアル環境を提供する。一方、「C++Builder XE3」は、同様のビジュアル開発を、C/C++言語によって行うことができるツール。今回、最新のWindows 8とOS X Mountain Lionをサポートし、単一のコードベースから、複数プラットフォーム向けのネイティブアプリケーションを構築することが可能となった。Windows 8対応では、コードネーム「Metro」と呼ばれてきたWindows 8スタイルのユーザーインターフェイスをサポートし、タブレットPCでのタッチスクリーンによる操作に対応する。

「Delphi XE3」「C++Builder XE3」のWindows 8開発画面「HTML5 Builder」の開発画面

 「HTML5 Builder」は、PHPによるWebアプリケーションのビジュアル開発をサポートするRadPHPの後継製品。HTML5、CSS3、JavaScriptによる単一のコードベースから、Web、iOS、Android、BlackBerry、Windows Phone 7向けアプリケーションを構築可能にし、モバイルデバイス向け開発の複雑性を大幅に軽減する。バックエンドサーバーの開発には、業界標準のPHPを利用。データベースアクセスなどのバックエンドサーバー機能を、ビジュアル操作で迅速に開発できる。

エンバカデロ・テクノロジーズ 日本法人代表の藤井等氏

 エンバカデロ・テクノロジーズ 日本法人代表の藤井等氏は、新製品をリリースする市場背景について、「今までモバイルデバイス向けのアプリケーション開発は、モバイル専門の開発会社が中心で、各プラットフォーム別に開発を行っていた。しかし、デバイスやプラットフォームの多様化にともない、開発工数の削減が重要な課題になってきている。さらに、エンタープライズ領域では、モバイル向けアプリケーション開発のために様々な開発ツールを使う必要があるため、多くの企業がモバイル対応に足踏みをしているのが実状」と指摘。

 「今回発売する最新スイート製品『Embarcadero RAD Studio XE3』では、個々のデバイス、プラットフォーム向けにアプリケーション開発を行う必要がなくなり、一つのソースコード、一つの開発環境で複数のモバイルデバイス、プラットフォーム向けにアプリケーションを開発することが可能となる。また、モバイルデバイス専用ではなく、既存のエンタープライズ向けアプリケーション開発で培ってきた技術をそのまま活用して、ソースコードをモバイル向けに再利用できることも特徴だ。これにより、多くの企業がモバイル対応アプリケーションの開発に着手できるようになる」と説明している。

Windows 8スタイルのアプリケーションを容易に構築できるMetropolis UIコントロールとデータをビジュアルに接続するVisual LiveBinding

 「Delphi XE3」「C++Builder XE3」の主な新機能としては、Metropolis UIの搭載により、Windows 8スタイルのアプリケーションを簡単に作成可能となった。また、FireMonkey FM2アプリケーションフレームワークを用いることで、WindowsとMacの双方で動作するネイティブアプリケーションを単一のコードベースから開発することができる。さらに、Visual LiveBinding(ビジュアル・ライブバインディング)により、ユーザーインターフェイス要素とデータをビジュアルに接続することが可能となった。

エンバカデロ・テクノロジーズ チーフエバンジェリストのデビッド・インターシモーネ氏

 エンバカデロ・テクノロジーズ チーフエバンジェリストのデビッド・インターシモーネ氏は、「Metropolis UIでは、タッチ対応やライブタイルサポート、タブレットのセンサーコンポーネントなどを用いたWindows 8スタイルのデスクトップアプリケーション、およびx86ベースのタブレットで実行可能なアプリを容易に構築できる。また、FireMonkey FM2の利用により、最新のMountain LionやRetinaディスプレイサポートを含むMac環境、Windows環境の複数バージョンをターゲットとしたアプリケーション開発を迅速に行うことが可能となる。そして、Visual LiveBindingでは、図上でコントロールとデータを線で結ぶだけで、簡単にデータバインドと関連するプロパティを設定することができる」と、デモを交えながら新機能のポイントを説明した。

 「HTML5 Builder」の新機能としては、単一のHTML5/CSS3/JavaScriptコードベースから、iOS、Android、BlackBerry、Windows Phone 7といった複数のモバイルOS、デバイス、Webブラウザ向けのアプリケーションをビジュアルに構築可能となった。「『HTML5 Builder』では、jQuery、jQuery Mobile、PhoneGapを統合したモバイル向け開発環境を提供し、一度アプリを作成すれば、様々なモバイルプラットフォームやWebブラウザに容易に展開できる。また、CSS3スタイリング、アニメーション、jQuery Mobileテーマ、カスタムUIスタイルなどを搭載しており、洗練されたデザインのユーザーインターフェイスを提供できる」(デビッド・インターシモーネ氏)という。

 このほか、「HTML5 Builder」では、スタンドアロン型のクライアントアプリケーションか、動的なサーバーベースのコンテンツを提供する多層アプリケーションのいずれかを構成することができ、これらのアプリケーションでは、主要なRDBMSへのアクセスが可能。また、サーバーサイドの構築には、PHPを用いることができ、Webまたはクラウド環境に配備できる。

 なお、同社では今後、「Delphi」「C++Builder」を使って、ARMネイティブのモバイル開発をサポートするプラグイン製品「Mobile Studio」をリリースする予定。

 「Embarcadero RAD Studio XE3」の価格は、Professionalエディションが15万5400円から、Enterpriseエディションが35万2800円から、Ultimateエディションが47万8800円から、Architectエディションが54万1800円から。


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