富士通、第1四半期のクラウド事業は約200億円に~為替の影響で2012年度の通期売上高を下方修正


取締役執行役員専務の加藤和彦氏

 富士通株式会社は27日、2012年度第1四半期(2012年4月~7月)の連結業績を発表した。

 売上高は、前年同期比2.9%減の9573億円、営業損失は前年同期から79億円悪化の250億円の赤字、経常損失は前年同期から62億円悪化の251億円の赤字、当期純損失は前年同期から33億円悪化の237億円の最終赤字となった。

 富士通 取締役執行役員専務の加藤和彦氏は、「セグメント別にいいところ、悪いところがある。欧州では不安定な経済状況が続いているほか、為替の影響、海外経済の下振れリスクなどにより、先行きへの不透明感がある。システムプロダクトやネットワーク関連でかなりの投資を加速させていることも業績に影響している」などとした。

 一方、クラウド事業に関しては、「第1四半期に200億円近い売り上げ規模に達しており、前年同期比では15%増となっている。前年度は通期で1000億円の実績であり、四半期のアベレージでは250億円の規模になる。第1四半期はまだその水準には達していない。通期の目標は1500億円。第1四半期にあと50億円積み上げられていれば、年間2000億円の強気な話になったかもしれない。利益率については変化がない」と語った。

 また、「クラウドビジネスにおいては、データセンターがひとつの鍵になるが、いまの国内のデータセンターに対するデマンドをみると、早急にもう一棟作らないと間に合わない水準にあるといえる。プライベートクラウドおよびパブリッククラウドの波は大きく、今後も2けた以上の伸びは想定できるだろう。また、一案件あたりの金額は少なくても、ボリュームによって事業が安定化する。5年後には、案件が積み上がり、安定したビジネスになっているという話ができるはずだ。クラウドに関しては、システム構築力が重要であり、ここでは、富士通がトップを走っている。さらに、セキュリティや大量データ処理技術も富士通の付加価値として提供できる。現在、農業クラウドサービスなどを紹介しているが、これもいまは広がりは見えないものの、次のステップでは顧客の数が広がってくるだろう。一度クラウドを使って利便性を知ると抜けられなくなるだろう」などと語った。

 セグメント別業績では、テクノロジーソリューションの売上高が前年同期比4.9%減の6271億円、営業利益は65.4%減の8億円。そのうちサービス事業は売上高が同3.8%減の5136億円、営業利益が同38.7%増の49億円。サービス事業のうち、ソリューションSIの売上高は前年同期比1.2%増の1705億円、インフラサービスの売上高は同6.1%減の3431億円となった。

 システムプラットフォーム事業の売上高は前年同期比9.3%減の1134億円、営業損失は45億円悪化のマイナス40億円の赤字。そのうち、システムプロダクトの売上高が同21.9%減の491億円、ネットワークプロダクトの売上高が同3.4%増の643億円。

 「前年同期に次世代スーパーコンピュータシステムを構成する専用サーバーを量産したこと、さらに本年度に入り、金融分野における大型システム商談の減少などが影響。だが、システムプロダクトは、為替の影響を考えると実質増収。北米のUNIXサーバーの販売減があり、第2四半期もその傾向は続く。ここでは下期の新製品投入により巻き返しをはかることになる。その一方で、ネットワークプロダクトは、通信トラフィック対策、LTEサービスエリアの拡充により増収となった。しかし、北米でのネットワークプロダクト事業は4割減というスタートになっており、これを国内での売り上げがカバーした格好。この傾向は続きそうだ。また、ネットワークプロダクトを中心に先行開発投資が増加している」などと語った。

 さらに、「システムプラットフォームでは、ドルで購入して、ユーロで売るという欧州ビジネスにおいて、採算性が厳しくなっていることも影響している」などとした。

 ユビキタスソリューションは、売上高が前年同期比0.4%減の2346億円、営業損失は20億円悪化のマイナス20億円の赤字。そのうち、PCおよび携帯電話の売上高が同10.6%減の1706億円、モバイルウェアの売上高が同43.5%増の639億円となった。

 「PCは、前年からかなり販売台数が増加しており、特に東欧、インドなどの新興国では、前年同期比20%以上の伸びとなっている。しかし、欧州での採算性が厳しい。台数は伸びているものの、ローエンドが中心であるため、売上高での貢献が限定的。また、国内のPCおよび携帯電話では、前年に震災影響があったものの、本年度はさらに落ち込んでいる。携帯電話が悪化しており、PCも為替が影響している。第1四半期の携帯電話は、スマートフォンがそこそこ、フィーチャーフォンがそれなりに売れている。8月からのらくらくスマートフォンでの下支えを期待している」とする一方、「モバイルウェアは第2四半期以降も強含みで展開できるとみている」などとした。

 デバイスソリューションは、売上高が前年同期比7.5%減の1303億円、営業損失は、26億円悪化の36億円の赤字。そのうち、LSIの売上高は前年同期比12.0%減の678億円、電子部品は同2.0%減の627億円となった。

 なお、一部報道にあった半導体生産の三重工場の売却の可能性などについては、「コメントできる段階にない」と語った。

 また同社では、2012年度の通期売上高見通しを、4月公表値に比べて200億円減の4兆5300億円と下方修正した。営業利益の1350億円、経常利益の1200億円、当期純利益の600億円は据え置いた。

 ユーロおよびポンドに対して、円高が年初の想定以上に進んでいることで、為替レートをユーロを97円に、ポンドを125円に見直した影響によるものとしており、一方で、営業利益、経常利益、当期純利益への影響は限定的としている。

 セグメント別では、テクノロジーソリューションの売上高が、公表値に比べて150億円減の2兆9850億円。内訳ではサービス事業の売上高を150億円減の2兆4050億円とした。また、ユビキタスソリューションの売上高が50億円減の1兆1550億円とした下方修正した。

 PCの年間700万台、携帯電話の年間800万台の出荷計画には変更はない。

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(大河原 克行)
2012/7/28 00:00