富士通のソフト事業戦略、シェア拡大に向けたイノベーションを紹介

海外事業を“点”から“面”へ広げる取り組み


執行役員常務の山中明氏

 富士通株式会社は16日、ソフトウェア・ミドルウェアに関する事業説明会を開催。執行役員常務の山中明氏が登壇し、ソフトウェア・ミドルウェアの重点や海外展開などに関して説明した。


3つのソフトウェアビジネス領域

3つのソフトウェアビジネス領域

 同社のソフトウェアビジネス領域は「ソリューション/SI」「プラットフォームビジネス」「クラウドサービス」の3つに分類できる。

 「ソリューション/SI」領域は、企業の基幹システムやプライベートクラウドを支援するもので、体系的なポートフォリオを取りそろえることで競争力を生み出すのが戦略。主な製品は「Interstage」「Systemwalker」「Symfoware」となる。

 「プラットフォームビジネス」領域では、サーバー・ストレージ・ネットワークの仮想システム統合を支援。この領域が「単価は安いがグローバルで最も重要な成長分野」(執行役員常務)となり、主な製品は「ServerView」「ETERNUS SF」「PRIMECLUSTER」となる。

 「クラウドサービス」領域では、IaaS/PaaSサービスを提供。富士通にとっても新しい分野で、現状はIaaSからPaaSの提供へと進化を図っているところだ。主な製品は「FGCP/A5(Azure)」「CSPF」「Cordys」「FGCP/S5(SOP)」となる。

 いずれの領域においても「自社技術・商品を中核にパートナー商品/OSSを組み合わせて、強いソフトウェアポートフォリオをタイムリーに提供する」ことが基本姿勢となり、山中氏は「IBMなども2兆円近い買収を通じて豊富な自社ポートフォリオをそろえている。当社はそうもいかないのでパートナーやOSSとの組み合わせが重要になる」と協業の重要性を強調している。


具体的な製品における取り組み

 製品・技術における取り組みについては、「より使いやすいソフトウェアの追求」「新たなビジネスに向けてのイノベーション」「ハード・ソフトウェア垂直統合型商品の提供」をポイントとして挙げた。

 「より使いやすいソフトウェアの追求」では、ハードウェアやソフトウェアの状況を自ら判断し、ソフトウェアの導入・運用を最適にする独自技術「スマートテクノロジー」を展開するという。具体的に「Symfoware Server Lite Edition V10」に採用された「スマートセットアップ」、「Interstage Application Server V10」に採用された「スマートリカバリー」、「Systemwalker Centric Manager V13」に採用された「スマートチューニング」を今後の製品にも順次適用していく。

スマートセットアップの概要。導入ユーザー調査からデータベース設定を型決めし、モデルに従ったパラメータを自動設定。セットアップ手順を削減するスマートリカバリーの概要。スマートセットアップで型決めされた設定に従い自動バックアップを行う

スマートチューニングの概要。JavaアプリケーションにおけるFull GCによる無応答発生を予兆検知して、プロセス切り替えで回避。システム負荷が高くても安定レスポンスを維持する
CSPFアーキテクチャの概要

 「新たなビジネスに向けてのイノベーション」については、主にビッグデータに対する新技術・新製品を順次投入していく。具体的には、Hadoopや富士通研のBI/BA分析プラットフォームによるビッグデータ活用の統合プラットフォーム「CSPF」を、2011年下期から2012年上期にかけてリリース。さらにOracle Exadata対抗として、東京証券取引所の「arrowhead」でも採用された分散キャッシュ技術「Interstage XTP(仮称)」や、スケールアウト型インメモリDB技術「Symfoware Server」を同様にリリースする。

 ビッグデータ関連以外では、既存システムとクラウドを組み合わせ業務プロセス統合を実現するPaaS「Cordys」や、Android/iOS向けアプリケーション実行環境なども順次提供するという。

ビッグデータ活用の統合プラットフォーム「CSPF」や分散キャッシュ技術などで新しいビジネスに向けてのイノベーションを起こしていく
ハード・ソフトウェア垂直統合型商品の提供

 必要なハード・ソフトウェアを構築・設定済みの状態で出荷する「ハード・ソフトウェア垂直統合型商品の提供」では、7月に「Hyper-V Cloud Fast Track」と「Cloud Ready Blocks」を提供しており、2011年度下期にも「DI(Dynamic Infrastructure) Blocks」を投入する予定。「これまでのように製品単体で訴求するのではなく、さまざまな業務(ワークロード)に最適化したスタックとして、すぐに配備して、どこででも運用できる製品を増やしていく」(同氏)とした。


海外のビジネスを点から面に

 2007年~2010年の実績としては、国内1万2000社へ導入し、国内アプリケーションサーバーミドルウェア市場で「Interstage」が、管理ソフトウェア市場で「Systemwalker」がそれぞれ2位のシェアを取るなど成果を出した。グローバルでも2100社への導入実績を上げているが、「市場規模を考えると海外の事業はまだ点で、面のビジネスになっていない。ここを広げるのが当面のチャレンジとなる」(山中氏)とした。

国内実績海外実績

 今後の事業拡大に向けては「体系的なポートフォリオの情報公開・提供」「ハードウェア・ソフトウェア戦略のホワイトペーパー公開」「グローバルソフトウェアセンターの設立」といった施策を挙げる。海外展開において特に重要となる、グローバルソフトウェアセンターでは、開発は日本、マーケティングは海外とすることで、高品質の製品を現地のニーズに合わせて展開する考え。

 「Microsoft、IBM、Oracleなどソフトウェアの巨人と比べると、まだまだ小さな当社のソフト事業」(同氏)だが、多くの施策でもって最適なシステムの実現を目指し、シェア拡大に挑んでいく。

関連情報