富士通、早和果樹園とみかん栽培へのICT活用に関する実証実験


右から、和歌山県有田市 望月良男市長、株式会社早和果樹園 代表取締役社長 秋竹新吾氏、富士通株式会社 クラウドビジネスサポート本部長 岡田昭広氏、和歌山県 農林水産総合技術センター 果樹試験場 栽培部長 宮本久美氏

 株式会社早和果樹園と富士通株式会社は7月7日、みかん栽培へのICT活用に関する実証実験を開始したと発表した。

 みかん生産高で全国1位を誇る和歌山県で、有田みかんで知られる有田市に位置する早和果樹園は、6万平方メートルの広大な園地で、高品質みかんの栽培やジュースやゼリーなどの加工品13種の生産を手がける。有田みかんの中でも糖度12度以上、酸度が0.7~0.8、袋が薄くやわらかいものなどの条件をクリアした高品質みかんは「味一みかん」というブランドみかんとして販売されているが、味一みかんは有田みかんの数%に過ぎないという。

 早和果樹園では、ICTを利用した実証実験により得られたノウハウの蓄積、適期の管理により、この高品質みかん「味一みかん」が約25%を占めるが、味一みかんを全生産量の70%まで引き上げたいとしている。

 この実証実験では、早和果樹園の5000本におよぶ果樹1本ごとにIDナンバーを付与。園内5カ所に設置したセンサーで気温や降水量、土壌温度などのデータを一定間隔で収集。スマートフォンで毎日果樹の写真を撮影して状態を記録するほか、気づいた点や異常について登録。作業場所や移動履歴は自動的に登録する。収集したさまざまなデータは富士通のデータセンターに蓄積し、作業履歴から作業コストも算出。果樹1本ずつについて、収穫量とコストを算出できるようにしたいという。

 スマートフォンの専用アプリは富士通が独自に開発し、気象・育成データの活用方法や過去のデータの提供については、和歌山県 農林水産総合技術センター 果樹試験場が指導、協力する。

 記者会見には和歌山県有田市市長 望月良男氏も出席。「どこの自治体も10年20年先を見通すと80歳以上の高齢者が2倍3倍に増加する。地域の特徴・強みを活かしながら、将来に耐えるまちづくりを行っていく必要がある。ICTによって有田のみかん生産者の意識が変わるのを期待したい。有田みかんはブランドとしては非常に強く、そういう意味では日本の中では勝ち組の農業産地ではあるが、有田市のみかん農家では後継者が20%ほどしかいない。ICTによってより質の高いみかんを作ることで収益を高め、強みを生かした強い街を作っていく。その集合体が日本だ。しっかりがんばっていきたい」と期待を述べた。

 富士通のクラウドビジネスサポート本部長 岡田昭広氏は、「今年度には成果を報告できると考えている。みかんのほかに野菜農家などでも実証実験を行っており、野菜農家は見回りのコストが数千万減り、収益は2倍になっている。成果が出てから横展開し、販売を拡大したいと考えている。販売の方法、課金モデルにするのかについてはいま考えているところ」とコメント。導入成果には自信を見せた。

実証実験の概要富士通は誰でも簡単に作業が記録できる専用Androidアプリを開発。右にあるのが園内5カ所に設置されたセンサー

 

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