「ハイブリッドクラウドへの旅を支援する」、EMCジャパンが2011年の事業戦略を発表

強化されたSymmetrix VMAXの機能も説明


代表取締役社長の山野修氏
EMCが提唱する情報中心のアプローチ

 EMCジャパン株式会社は26日、2011年の戦略説明会を開催。代表取締役社長の山野修氏らが、自社の方針を説明した。また同時に、ワールドワイドで発表されていた、ハイエンドストレージ「EMC Symmetrix VMAX」の機能強化についても、その概要を解説している。

 EMCジャパンでは、「情報インフラの先進的リーダーであり続ける」とのビジョンを掲げており、データ、特に非構造データが膨大に増え続ける“ビッグ・データ”時代の中、ストレージのみならず、ドキュメント管理製品、VMwareの仮想化製品などを含めた幅広い製品ポートフォリオによって、企業のITシステムを支え続けるとのメッセージを発信してきた。

 特に、データの増大やITコストの最適化といった課題に対しては、「クラウド」を1つの答えとして、顧客企業を支援していくとの姿勢を以前から示している。山野社長は、こうした点については2011年も変わらないするものの、これまで導入を支援するとしてきた「プライベートクラウド」から、今後は、パブリッククラウドをあわせた「ハイブリッドクラウド」へとメッセージを進化させたという。

 山野社長はこの理由として、クラウドサービス事業者側で、IaaSやPaaSといったクラウドサービスの提供が盛んになり、そのメリットを享受できるようになりつつあること、また米Isilonの買収などによって、クラウドサービス事業者向けの製品が拡充できたことなどを挙げ、「ハイブリッドクラウドへの旅を支援する」と述べた。

 また、具体的な日本でのビジネスとしては、データの保存から活用までの一連の流れにおいて、顧客を総合的に支援するとのことで、そのために、ITインフラ全体の最適化コンサルティングといった上流工程も含めて、製品・サービスでの支援を行っていくとする。

 ただ、ストレージでは非常に認知され、バックアップでもディザスタリカバリでも認知されるようなってきたが、「お客さまにイメージを聞くと、高信頼、高品質といったこととあわせ、ともすれば高価格といわれてしまう」(山野社長)点が課題。これを打破する意味もあり、「今後、当社がしなくていけないのは。お客さまに、よりシンプルで効率的、お手ごろな価格帯の製品・ソリューションを提案すること」と述べた。

 そしてそれを実現するために、2011年はローエンド製品にも本格参入する意向を示し、Iomegaの製品やユニファイドストレージなどを武器として挙げたほか、ミッドレンジ、ローエンド領域では、“お手ごろな価格帯”実現のため、製品の値下げも行うとしている。

性能と安全性を高めた「Symmetrix VMAX」の機能強化

41もの新しい技術とソリューションを発表

 一方で、ビジョンを実現するための、EMCジャパン自身の製品も整理・強化が進んでいる。2010年に買収したGreenplumのDWHソリューションを扱うための体制を社内に整え、データの活用支援を進めるほか、1月18日(米国時間)にはワールドワイドで、「記録を破る」と題して、CLARiXとCelerraの製品ラインを統合した「VNX」の提供、Symmetrix VMAXの機能強化など、実に41もの新しい技術とソリューションを発表している。

Symmetrix VMAXの機能強化の概要
従来のFASTとFAST VPの違い

 今回の説明会では、このうちSymmetrix VMAXに関する強化点が紹介された。EMCジャパン テクノロジー・コンサルティング本部 プロダクト・ソリューションズ統括部 統括部長の糸賀誠氏は、Symmetrix VMAXにおいて新機能を提供する背景として、「ミッションクリティカル領域での仮想化、クラウドの利用が加速している」ことを挙げる。ミッションクリティカル領域とは、例えば、基幹業務アプリケーションやメールシステムなどのビジネスインフラとしての利用を指す。こうした領域では、アプリケーションを確実に守りながら、同時に効率化を達成するために、さらなる高性能や、セキュリティ、可用性、スケーラビリティなど、これまでとは異なる用件が求められているのだという。

 新機能の中でまず説明されたのは、効率の良い自動階層化を行う「FAST VP」機能の追加だ。このベースとなった「FAST」機能は、ハイエンドストレージで一般的なFC HDD以外に、高速なフラッシュドライブ(SSD)、低価格なSATA HDDを併用し、利用頻度に応じた最適なデータ配置を実現するもの。基本的な仕組みはFAST VPでも変わらないが、今回は再配置する単位を、FASTでサポートしていたLUN単位から、業界最小という8MB単位にしたことで、さらに効率の良いデータの配置が可能になった。

 FAST VPと従来のFASTを比較したデータはまだないものの、FC HDD率100%のFAST未導入の構成から、3%のSSD、20%のFC HDD、77%のSATA HDDといった構成に変えると、40%のパフォーマンス向上と、40%のコスト削減効果が得られるという。

 2つ目の強化としては、ストレージアレイ間の無停止データ移行を可能にする「Federated Live Migration(FLM)」がサポートされた。通常のストレージ移行時には、メンテナンスのために停止時間が発生するが、FLMを利用すると、停止する必要がないので業務には影響を与えず、停止に伴うコストも発生しないし、標準機能で提供されるため、追加のライセンス費用もかからない。さらに、データ移行時間も従来比で約75%短縮できるメリットがある。

 残念ながら現在は、EMCジャパン製品からの移行時にしか利用できないものの、今後は他社製品もサポートしていく考えとした。なお、技術としては、距離的に離れたデータセンター間でもストレージ容量をプール化できる「VPLEX」などを応用しているとのこと。

 3つ目は、RSAの技術を利用したデータ暗号化機能の搭載で、暗号化処理を担当するCPUを追加するので、アプリケーションの性能に影響を与えないほか、ディスクを交換しても、古い暗号キーを廃棄し、新しいキーを自動生成して暗号化する仕組みにより、きちんと対応できる。さらに、すべてのドライブ種別、すべてのストレージ機能に対応し、透過的な導入も可能だ。

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