EMC、100km離れたストレージも仮想プール化できる新製品「VPLEX」


プロダクトソリューションズ統括部長の糸賀誠氏
EMC VPLEXで実現する「分散ストレージ連携」の概要

 EMCジャパン株式会社は5月19日、分散ストレージ連携を実現する新製品「EMC VPLEX」を発売した。特長は、距離的に離れたデータセンター間でストレージ容量をプール化できる点。複数のディスクアレイを束ねるアプライアンスとして提供される。

 EMC VPLEXは、分散ストレージ連携技術「EMC AccessAnywhere」を実装するアプライアンス製品。従来より、ディスクアレイ内の容量をプール化するストレージ仮想化技術や、ストレージ自動階層化を実現する「FAST」技術などを提供する同社だが、これらを距離的に離れたデータセンター間でも実現するものとなる。

 具体的には、複数のストレージシステムのリソースを、ローカルおよび遠距離間で透過的にプール化する。最長100km離れた拠点間で、大量のデータをアプリケーションと連動させながらオンデマンドに移行・再配置できる。

 「EMC VMAX/CX3/CX4」などの同社製品のほか、他社製品に対応するのも特長で、すでに日立/HP/IBM/3PAR製品で検証済みという。

 中核技術となるのが、ハイエンドディスクアレイ「EMC VMAX」で培われ、ストレージの柔軟な拡張と容量のプール化を実現する「スケールアウト・クラスタ・アーキテクチャ」と、同社キャッシュ技術を拡張した「分散キャッシュ連携技術」の2種類。

 後者は、拠点をまたがる全ストレージエンジンで、キャッシュディレクトリを共有する技術。東京で書き込まれたキャッシュ情報が大阪でも即座に反映され、常にキャッシュの一貫性が保持されるため、データ保存場所に依存しない高速アクセスが可能となる。プロダクトソリューションズ統括部長の糸賀誠氏は「この技術により、拠点間でのストレージプール化や、データ連携の技術的な壁となっていた遅延、帯域幅、整合性といった問題が解消される」と説明する。


スケールアウト・クラスタ・アーキテクチャの概要。VMAXの技術がベース分散キャッシュ連携技術の概要。各エンジンのキャッシュがすべてのエンジンで共有される

 具体的な利用例としては、【シーン1】外部リソース利用も含めた効率の追求、【シーン2】データセンター間でのワークロード動的分散、【シーン3】アレイや場所の違いを利用した高可用性の実現、【シーン4】災害退避の実現、の4つのパターンを紹介している。


【シーン1】ストレージリソース不足の拠点で短期業務用アプリケーションを構築する際などに、ストレージは別拠点のリソースを活用。アプリケーションからは単一のローカルリソースに見えるため、透過的な運用が可能となる【シーン2】データとともにvMotionでアプリケーションも移動して、拠点間でワークロードを負荷分散
【シーン3】拠点間で分散ミラーリング。アレイや場所の違いを利用することで、新たなレベルの高可用性が実現するとしている【シーン4】従来レプリケーションはストレージベンダーごとに異なる管理ツールを使う必要があったが、EMC VPLEXではベンダーごとのツールと管理なしでデータ連携が可能。例えば、地震やハリケーンの発生が予測される場所からデータを逃す「災害退避」も実現できる
EMC VPLEX

 ラインアップは、データセンター内で異種混在ストレージ環境を最適化する「VPLEX Locla」と、100km圏内のデータセンター間で最適化する「VPLEX Metro」の2種類。

 ハードウェアは台数を増やしてスケールアウト可能。ソフトウェアはハードウェア1台につき、管理対象10TB分のVPLEX Localライセンスが標準添付される。さらに容量を増やしたい場合、あるいはデータセンター間で活用したい場合は別途、VPLEX MetroライセンスをTB単位で購入する。

 ライセンスは、永続版と年間版の2種類を用意。価格は、VPLEX Localの永続ライセンス版が929万円から、VPLEX Metroの永続ライセンス版(2拠点分)が1726万円から。

 今後、数千kmでも透過的なデータ移行や共有アクセスを実現する「EMC Geo」や、距離と拠点数の制限をなくした「VPLEX Global」も開発する方針。代表取締役社長の諸星俊男氏は「これにより、数千kmを超えて数千の仮想マシンとデータが移動可能。物理的制約からストレージを開放することで、コストの安い土地にシステムを設置するなど、システムを“どこで持つか”を戦略的に考えられる。データセンターの戦略を根本から変革する仮想ストレージだ」とアピールした。




(川島 弘之)

2010/5/19 15:41