EMCジャパン、ストレージ内のデータを自動“仕分け”する「FAST」製品群
FASTの概要 |
テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクト・マネージャーの若松信康氏 |
EMCジャパン株式会社は12月15日、ストレージに保存されたデータを自動で仕分けし、導入・運用コストの最適化を図る「FAST(Fully Automated Storage Tiering:自動階層化)」製品群を発表した。同社のストレージ製品「Symmetrix V-Max」「CLARiX CX4」「Celerra NS」向けに、同日より提供を開始する。
FAST技術は、データを利用頻度に応じて適切かつ自動的に移動することで、TCOの削減を図るもの。従来の階層化されていないストレージでは、常に変化するI/O要求に適切に対応できるものがなかったため、常に最大のI/O量にあわせてディスクを追加購入する必要があり、膨大なコストがかかってしまうという。ここに、SSD、FC HDD、SATA HDDなど性能の異なるディスクを利用する階層化の技術を適用すれば改善が見込めるものの、「ポリシーにあわせて移動するには長時間の分析が必要になるし、移動のプランニング、実際の移動作業などに膨大な作業が発生する」(テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクト・マネージャーの若松信康氏)問題があった。
しかしFASTでは、この移動作業を自動化することにより、運用にかかわる負荷を大幅に軽減できる。テクノロジー・ソリューションズ本部 プロダクト・ソリューション統括部 プロダクトマーケティング部 部長の中野逸子氏は、「リソースを統合し、1つの大きなプールとしてとらえることが一番重要だが、それぞれのプールをどう最適化するか、というのが次のテーマになる。FASTが画期的なのは、階層化作業を自動化していることで、運用の最適化などによってさまざまなコスト削減を実現する」と述べ、その価値を説明した。
具体的には、最短1時間単位でIOPSを監視でき、あらかじめ定めたポリシーに従って、アクティブなデータを高速なSSDやFC HDDへ、非アクティブなデータを低コストで保存に適したSATA HDDへと自動的に移動する。設定作業自体は、ウィザードベースで容易に行えるように工夫され、わずか3ステップで完了。ストレージ管理ツール「Ionix ControlCenter」を用いれば、パフォーマンスの変化などを可視化したり分析したりすることもできる。
EMCジャパンのデータによれば、FC HDDの4%をSSDに変え、FASTを導入したところ、ドライブに対するI/Oの競合を68%削減し、応答時間を2.5倍に高速化できたとのこと。また別のデータでは、低価格なSATA HDDを利用することで、システム購入コストが20%圧縮されたほか、管理の自動化などにより、維持・運用コストも43%削減されたという。
容易な設定と運用の可視化を実現 | 全容量の4%をSSDに変え、FASTを導入することで高い効果を上げた | 機器のコストや運用コストを削減できるという |
さらにEMCジャパンでは、今後も増え続けるデータ量への対応を見据えて、FAST技術を継続的に強化する意向。現在、Symmetrix V-MaxとCLARiX CX4ではLUN単位、Celerra NSではファイル単位での移動にとどまっているが、「LUNなどの単位の中でも、アクセス頻度に差がある場合も存在する」(若松氏)ことを踏まえ、小さなブロック単位でも自動階層化を行えるようにする。加えて、圧縮と重複除外によって保存するデータ量を小さくした上で、アクセス頻度のより低いデータを保存する領域では、HDDをスピンダウンさせて省電力化を図る技術も導入するとした。
ほかのシステムとの連携についても、APIを介してやりとりできるようにする計画で、「情報ライフサイクル管理の期間という概念を加味し、例えば3年間保存した後で自動的に削除する、といった機能も使えるようにする」(若松氏)とのことだ。
FAST技術の提供形態は製品によって異なり、Symmetrix V-MaxとCLARiX CX4についてはOSの1機能として実装される。価格は、Symmetrix V-Maxの1TB構成時で283万円から、CLARiX CX4の「CX4-120」では61万円からで、これらの製品では、最適化は同一システム内に限られる。Celerra NSでは、外付けのアプライアンスサーバー、ないしは仮想アプライアンスとして提供され、筐体内・筐体間での最適化を行える。価格は、アプライアンスサーバー「Rainfinity FMA」が513万円、仮想アプライアンス「同 FMA/VE」が260万円から。このほか、Symmetrix V-MaxとCLARiX CX4に関しては、管理ツールをすでに購入済みのユーザー向けのアドオンとしても提供される。
2009/12/15 14:55