「Officeとの統合が強み、電話機能と可用性の強化も」
マイクロソフトがOCSに変わる「Lync」の価値を説明


Microsoft Lync
インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ 部長の吉村徹也氏

 「当社の強みは、ユーザーが使い慣れたフロントエンドツール、Microsoft Officeとの親和性。これを前面に押し出して展開していく」――。マイクロソフト株式会社は、統合コミュケーション製品群「Microsoft Lync」に関する説明会の中で、同製品のメリットをそう説明した。11月18日(日本時間)にワールドワイドでの正式発表を予定する最初の「Lync 2010」製品群は、すでに英語版がRTM(製造工程向けリリース)となっており、日本語版も2010年中には提供される見込み。

 Lyncは、マイクロソフトが提供しているOffice Communications Server(OCS)の後継製品で、コードネームでは「OCS“14”」と呼ばれていたもの。サーバー製品の「Lync Server 2010」と、クライアントツールの「Lync 2010」、オンラインサービスの「Lync Online」「Lync Web App」といった製品・サービスから構成され、IMや電話、音声・ビデオ会議、IP電話などのユニファイドコミュニケーション(UC)機能を統合して提供する。

 マイクロソフトがこうした統合コミュニケーション製品の提供に力をいれているのは、現在のオフィス環境において、コミュニケーションの重要度が高まり、企業でも導入に力をいれるようになったことが背景にある。従来も、こうしたニーズに応えるため、OCSとExchange Server、SharePoint Serverなどとの連携によって、UCからコンテンツ管理、コラボレーションまでの幅広い機能を総合的に提供してきた。

 Lyncでもこうした特徴は受け継がれており、Office Communicatorの後継となるクライアントツールのLync 2010に、プレゼンス(在席情報)、IM、音声/ビデオ通信、会議、電話といったクライアント機能を統合。インフォメーションワーカービジネス本部 IWサーバー製品マーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャの米野宏明氏は、「ユーザーはプレゼンスを見ながら、最適なコミュニケーション手段を選択し、スムーズにコミュニケーションを進められる」と、このメリットを説明する。

 また、「どこからでもこれらの機能を呼び出せ、シームレスな形で、エンドユーザーのワークスタイルに縛られずコミュニケーションを始められる」(インフォメーションワーカービジネス本部 IWソリューションマーケティンググループ 部長の吉村徹也氏)点も強み。Lyncのクライアントツールは、PC向け(Windows)とWindows Mobileに加えて、iPhoneとNokia、Macについても対応していく予定で、WebクライアントのLync Web Appとあわせ、幅広く対応していくという。


クライアントツール「Lync 2010」の概要Lync 2010によるビデオ会議のイメージ
ユーザーのプレゼンス情報のところに写真を表示できるようになったほか、Active Directoryからユーザーの情報を引っ張ってくることも可能というさまざまな手段をシームレスに活用したコミュニケーションが可能になる
インフォメーションワーカービジネス本部 IWサーバー製品マーケティンググループ エグゼクティブプロダクトマネージャの米野宏明氏

 さらに、クライアントツールを使うだけでなく、Microsoft Office製品との統合こそが、OCSやLyncの最大のメリットなのだという。米野氏は「電話が主なワークスタイルであればクライアントツールが最適だが、メール多用する人は、わざわざアプリケーションを切り替えるのも面倒だろう。メールに表示されている番号から電話をかけたり、Outlookから会議が招集できたりすれば便利。Lyncではこうした点を実現している」と述べ、製品間のインテグレーションが済んでいることをアピールした。

 一方で、UCの一要素である電話機能については、現行バージョンのOCS 2007 R2でも強化されているものの、まだ不足している部分があった。そこでLync 2010では、通話を切断せずに保留し、同一グループのほかの電話機で通話する「コールパーク」をはじめ、応答グループ、自動転送などの機能を拡充。また、クラスタ構成をサポートしたほか、ネットワーク品質が下がった場合に自動で通話品質を落として占有帯域を小さくし、通話が切れるのを防ぐ機能などを実装することで、可用性の向上も図られている。

 提供形態としては、サーバー側はOCSと同様、「Standard Edition」「Enterprise Edition」を用意。ユーザーがこれらの機能を利用するためのCAL(クライアントアクセスライセンス)や各種コネクタライセンスをあわせて提供するが、CALは従来の2種類から、「Enterprise CAL」「Standard CAL」「Plus CAL」の3種類に変更された。

 以前のEnterprise CALが持っていたVoIPの部分をPlus CALへ切り出し、Enterprise CALの価格を23%値引き(予定)するもので、これによって、音声が必要ないユーザーの負担を軽減するという。ただし、Plus CALについてはEnterprise CALと同等の価格設定がなされており、機能が向上している分、フル機能を利用するにはよりコストがかかる、といった結果になってしまっている。

 なおマイクロソフトでは、OCSの時と同様、パートナーと協力して日本での導入を推進していく考え。日本ユニシスなどのSIerが新規のシステム構築やOCSからの移行を支援するほか、日本ユニシスでは、国内のデータセンターを利用したオンラインサービスについても提供する予定としている。

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