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IBM、次世代量子システムをスパコン「富岳」に連携

 米IBMは4月30日、IBMの次世代量子アーキテクチャーおよび量子プロセッサーを、神戸市の理研計算科学研究センターに導入し、専有利用権を提供する計画について、国立研究開発法人理化学研究所(理研)と合意したと発表した。これは、スーパーコンピューター「富岳」と同じ建物に量子コンピューターが設置される初の事例になるという。

 今回の合意は、経済産業省傘下の新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)がファンディングする「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」の「量子・スパコンの統合利用技術の開発」プロジェクトにおいて締結されたもので、理研は同プロジェクトの実施において、IBM Quantum System Twoを専有利用する。

 プロジェクトでは、理研と共同提案者のソフトバンク株式会社、理化学研究所の共同実施者の東京大学、大阪大学が、日本の科学とビジネスを発展させるというビジョンのもと、最先端の量子コンピューターとスパコンを連携するためのシステムソフトウェア、プラットフォームを構築し、ポスト5G時代で提供されるサービスとして展開する技術としての有効性を実証する。

 また、プロジェクトとは別に、IBMは量子コンピューターとスーパーコンピューターというヘテロジニアスな統合コンピューティング環境でのワークフロー実行のための、ミドルウェアや最適な量子回路を生成・実行するソフトウェアの開発を行う予定。これらの新機能により、アルゴリズム品質や実行時間の改善が期待されるとしている。

 「富岳」と連携するIBM Quantum System Twoについて、IBMは「量子を中心としたスーパーコンピューティング」という次世代の量子コンピューティングアーキテクチャーの導入を計画する。これは、スケーラブルな極低温インフラストラクチャーやモジュール式の量子ビット制御機器、スケーラブルなクラシックサーバー、先進的なシステムソフトウェアを組み合わせ、従来型のHPCサービスと並列する形で量子コンピューティングサービスを提供するもので、量子を中心としたスーパーコンピューティングというIBMのビジョンの中核をなす構成要素だとしている。

 量子を中心としたスーパーコンピューティングは、量子コンピューティングリソースと従来型コンピューティングリソースが統合され、並列化されたワークロードの中で協働し、これまで不可能であった計算を実行することによって実現されるものだと説明。量子を中心としたスーパーコンピューティングは、量子コンピューティングがアーキテクチャーにおいて不可欠となる従来型HPCの未来に向けたIBMのビジョンであり、IBM Quantum System Twoはこのビジョンに向けた重要な構成要素だとしている。

 IBM Quantum System Twoには、これまでのIBM Quantumプロセッサーの中で最高の性能指標を実現するアーキテクチャーを備えた新しい商用量子プロセッサーシリーズの第1号となる、133量子ビットのIBM Quantum Heronプロセッサーが搭載される予定。IBM Quantum Heronプロセッサーは、IBM Quantumプロセッサーの中でエラー率が最も低く、これまで最も高性能であったIBM Eagleプロセッサーと比較して5倍の性能向上を実現したプロセッサーで、現在はクラウド上で利用できる。