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日立、最適な生産計画の自動立案と3D作業手順書を自動生成するシステムを提供

 株式会社日立製作所(以下、日立)は17日、IoTを活用して多種多様な情報をつなぎ、工場全体の最適な生産計画を自動で立案する「工場シミュレーター」と、3D CADデータをもとに3D作業手順書を自動生成する「組立ナビゲーションシステム」を11月から提供開始すると発表した。価格はいずれも個別見積もり。

 システムは、7月に提供を開始した「進捗・稼働監視システム」と「作業改善支援システム」に続く、IoTプラットフォーム「Lumada」の産業分野向けソリューションコアで、ソリューションコアのラインアップを強化するもの。システムの導入により、多品種少量生産工場における生産リードタイムの短縮を可能にするとしている。

 日立では、情報制御機器・システムを多品種少量で設計・製造する茨城県の大みか事業所で、現場の課題解決と全体最適化の実現に向け、IoTを活用した高効率生産モデルを2016年10月に確立し、代表製品の生産リードタイムを約50%短縮した。

 この技術を活用・汎用化し、顧客や製造現場など生産プロセスに関わる多種多様な情報を集約し、工場全体の生産能力や負荷、突発的な納期・受注量変更などを考慮した最適な中長期の生産計画を自動立案する工場シミュレーターと、3D CADから3D作業手順書へ変換して製品の組立指示図を自動生成する組立ナビゲーションシステムを製品化した。

 工場シミュレーターは、設計から調達、製造、検査、出荷にわたる生産プロセス全体において、対象製品の仕様や納期、工場の生産能力、負荷を考慮した中長期の生産計画を自動立案する。

 工場内の各工程の生産進捗情報と、顧客の納期や受注量に関する情報を収集し、それらと他の製品の生産計画、各工程の生産能力、負荷などの情報をもとに、原単位(生産手順、標準作業時間、リソース消費量などの基準を定めたもの)を用いた独自のシミュレーションを行うことで、各工程の作業負荷を平準化した生産計画を自動立案する。

 また、顧客納期や受注量などの変更と計画遅延、計画超過などの生産進捗状況に追従した生産計画を再立案することで、工場内の仕掛りを最小化した最適な調達計画の自動立案が可能となり、これらを現場に反映・実行することで、工場全体の最適化を実現する。

 これにより、顧客納期や受注量などの変更に伴う工程変動に追従した生産計画の再立案、受注前案件の納期予測が容易になり、これまで生産管理者が膨大な時間を要していた計画立案・調整作業を大幅に短縮できるほか、ロスコストの削減や工場内の仕掛り在庫削減による棚卸資産の縮減が可能になるとしている。

 組立ナビゲーションシステムでは、設計工程で製作される完成品の3D CADの設計データを、現場作業者が直感的に理解しやすい3D作業手順書に自動で変換する。直感的に理解しやすい3D作業手順書の自動生成により、現場作業者の製作図面を読み解く負担と設計者の製作図面を作成する負担を軽減し、生産性向上を実現する。

 完成品の3D CADから設計・構造情報を取り込み、独自のアルゴリズムにより分解順序と分解動作の分析を行い、適正な組立順番での3D作業手順書を自動生成し、現場に提供する。現場作業者は「1作業1画面」で作業を行うことができ、製作図面から組立の順番を読み解く手間を省くとともに、現場作業者間の作業・品質のバラつきを低減する。

 設計者が作業手順書を作成する手間を省くことができ、3D作業手順書には、例えばグリスの塗布や締め付けトルク数など、作業に必要な注意事項が表示されるため、品質安定化につなげられる。

 日立では、製造現場向けのコンサルティングサービスを提供しており、顧客の課題抽出からシステム導入まで、ワンストップで対応する。また、11月からはコンサルティングサービスの適用範囲を生産設計に拡張し、設計業務の生産性と品質を向上するモジュラー設計の導入支援を開始する。