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AWS、クラウド型コンタクトセンターソリューション「Amazon Connect」を説明

AWS Greengrassも9月21日から東京リージョンでスタート

 Amazon Web Services(AWS)の日本法人であるアマゾンウェブサービスジャパン株式会社は19日、AWSが3月に米国で発表したクラウド型コンタクトセンターソリューション「Amazon Connect」の日本でのサービスについて、記者説明会を開いた。3月の時点で発表していたSalesforceとAmazon Connectとの連動についても、具体的な内容が説明されるとともに、同日から日本語サイトからもアダプタの提供を開始したことが明らかになった。

 また、AWS IoTのエッジコンピューティング対応ソリューション「AWS Greengrass」についても、9月21日に東京リージョンで利用できるようになることが発表になった。

アマゾンウェブサービスジャパン 岡嵜禎氏(技術本部長、右)と、セールスフォース・ドットコム 御代茂樹氏(プロダクトマーケティング シニアディレクター、左)

コンタクトセンターとして日本の電話番号を取得可能

 Amazon Connectは、クラウドベースのコンタクトセンターソリューションだ。機能としてはスキルベースのルーティング、録音、リアルタイムおよび履歴の解析、高品質な音声技術が挙げられている。

 米国では3月に発表していたが、後から日本語のダッシュボード画面やメッセージ、日本の電話番号で利用できるようになった。6月から対応していたという。

 従来は、コールセンターのシステムには、IP-PBX(交換機)やIVR(自動音声応答システム)、CTI(電話とコンピュータを統合したシステム)などの構築が必要となり、数ヶ月を要していた。これが、Amazon ConnectではWebで申し込んで数分で使えるようになるという。

 また、クラウドによってキャパシティをオートスケールできる。さらに、「応答に専用の机を用意する必要なく、Webブラウザがあればリモートでもいいので、人手を増やしやすい」と、AWSの岡嵜禎氏(技術本部長)は語った。

Amazon Connectの機能
従来のコールセンターの課題

 Amazon Connectの特徴として岡嵜氏は、「セルフサービスのコンフィグレーション」「ダイナミックで個人を特定した自然なコンタクトフロー」「オープンプラットフォーム」「AWSのエコシステム」の点を挙げた。

 セルフサービスのコンフィグレーションとは、利用企業がWebで申し込んで自分で設定できること。Web上の設定ウィザードから数ステップの初期設定をするだけで利用できる。日本の電話番号(直通ダイヤルインの050またはフリーダイヤルの0800)もWeb上から申し込んで割り当てられる。

 ダイナミックなコンタクトフローもセルフサービスにより作成できる。音声応答や、顧客の条件によるコンタクトフローへの割り当て、DTMF(プッシュボタン)による分岐などのコンタクトフローを、利用企業がWeb上のGUIでドロップ&ドロップなどによって指定できる。応答音声は、音声ファイルで用意するほか、テキストメッセージを設定して読み上げることもできる。

特徴1:セルフサービスのコンフィグレーション
特徴2:ダイナミックなコンタクトフロー

 コンタクトフローではそのほか、イベントに応じて処理を実行する「AWS Lambda」による外部アプリケーションの参照にも対応する。また、音声対話エージェントのAmazon Lexによる音声対応にも対応する(現状は英語のみ)。

 オープンプラットフォームとAmazonのエコシステムとしては、Lambdaによってパートナー企業のシステムと連動させることができる。第1弾として、Salesforceのアダプタが用意され、SalesforceのアプリケーションマーケットプレイスAppExchange英語サイトで公開されている。今回の発表に合わせて、9月19日にAppExchange日本語サイトでも公開されたことが明らかにされた。

特徴3:オープンプラットフォーム
特徴4:Amazonのエコシステム
Amazon Lexを利用した無人応答(実際には英語)。デモの場でも実演された

 料金は、初期費用なしの従量制。Amazon Connect自体の利用料金が、0.018 USドル/分。電話料金は、インバウンドコールが、直通ダイヤルイン番号で0.0056 USドル/分、フリーダイヤル番号で0.2114 USドル/分。アウトバウンドコールが0.1203 USドル/分(日本宛の場合)。そのほか電話番号の料金が、直通ダイヤルイン番号で0.13 USドル/日、日本のフリーダイヤルが0.48 USドル/日。

 AWSが試算している例では、月900件の着信、月100件の発信、発着信とも1件あたり平均4分の通話の場合で、月額約150 USドル(約16,600円)となるという。

 お試し用の無料利用枠もあり、利用開始から12カ月間有効。1つの直通ダイヤルイン番号、毎月90分のAmazon Connect利用料、毎月30分のローカルインバウンド直通コール、毎月30分のローカルアウトバウンドコールが無料で利用できる。

 なお、日本向けサービスはシドニーリージョンでサービスしているという。「東京リージョンも、利用者の要望に応じて対応したい」と岡嵜氏は語った。

Amazon Connectの利用料金
無料利用枠

AWS Greengrassが東京リージョンでも開始

 同じ記者説明会において、「AWS IoT」をエッジコンピューティングに拡張する「AWS Greengrass」についてあらためて解説がなされ、9月21に東京リージョンでも開始されることが紹介された。

 岡嵜氏はIoTの3つの柱として「モノ」「クラウド」「インテリジェンス」を取り上げ、このクラウドに相当するのがAWS IoTだと説明した。そして、スケーラブルで安全な接続、デバイスのアプリケーションからの操作、デバイスから送られるデータの処理、AWSサービスとの統合をその特徴として挙げた。

 このAWS IoTを拡張し、デバイス側のローカルでも処理できるようにするのがAWS Greengrassだ。デバイス側のローカルで処理するメリットとして岡嵜氏は、物理法則(通信速度やレイテンシ)、経済の法則(データ保管コストや回線コスト)、法律(決まり)を挙げた。

 AWS Greengrassでできることとしては、「ローカルアクション」(Lambdaの関数をローカルで動かす)、「ローカルトリガー」、「データと状態の同期」(デバイスとクラウドがつながっていないときにはデータをためておく)、「セキュリティー」の4つがあるという。

AWS Greengrassの説明
AWS Greengrassでできること
AWS Greengrassの利用企業やパートナー企業

 AWS Greengrassの事例も2件紹介された。鉱業関連のRio Tinto社では、鉱山の悪路を走るトラックが、走るルートによって燃費や摩耗が違うことから、トラックに走行データを集めるデバイスを積んで、避けるべきルートを可視化した。ただし山奥で通信環境がよくないため、AWS Greengrassを採用。回線がつながっていなくてもデータをとり、つながったところで送信するようにしたという。

 もう1つが日本のブレインズテクノロジー株式会社の事例だ。「Impulse」ソリューションでは、工場において機械学習により機器の異常を検知する。ただし、異常が検出されたときにできるだけ即座に対象機器を停止したり、警告を発したりするためには、サーバー側を経由しなくても対応できる必要がある。そこで、AWS Greengrassによりデバイス側のローカルである程度の処理をできるようにしたという。

Rio Tinto社の事例。鉱山を走るトラックのデータを元に避けるべきルートを可視化
日本のブレインズテクノロジー株式会社の事例。工場において機械学習により機器の異常を検知

 AWS Greengrassの最新情報としては、前述のとおり、9月21日から東京リージョンで利用できるようになる。もう1つ、いままでローカル版のLambdaでは言語としてPythonしか使えなかったが、Node.jsやJavaにも対応したという。

9月21日から東京リージョンがAWS Greengrassに対応
ローカル版のLambdaではPythonのほかNode.jsやJavaにも対応