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ISID、双日グループと共同でスマート漁業の実証事件を開始

養殖マグロの自動カウントシステム構築を図る

 株式会社電通国際情報サービス(以下、ISID)は、双日株式会社、および双日の子会社である双日ツナファーム鷹島株式会社と共同で、スマート漁業の共同実証実験を実施すると発表した。8月1日より10月31日まで、双日ツナファームが運営する長崎県松浦市の漁場において行われている。

 マグロ養殖事業を展開する双日ツナファーム鷹島では、マグロの稚魚を買い付け、洋上の生簀(いけす)内で約3年かけて育成した後に水揚げし、出荷している。しかし、生簀内の環境が刻々と変化する中で、給餌の量・方法・タイミングなどの判断は経験則に基づく属人的なものとなっており、中でも、重要な判断基準の一つとなる養育個体数の把握については、ダイバーが水中撮影した動画を用いて、複数の作業員が長時間かけて目視でカウントする方法で行っているという。

 そこで今回は、このような作業負荷の軽減や、正確性の向上を図るため、ディープラーニング(深層学習)を活用した画像解析技術を用いて、養殖マグロを自動カウントするシステムの共同実証実験を実施することにした。

 一方のISIDでは、先進技術を活用した新規ビジネス創出を加速させており、この一環として、ディープラーニングによる画像解析技術を、スポーツやものづくりなどのさまざまな領域へ適用する取り組みを進めてきた。

 今回の実証実験ではこうした知見を生かし、視認性の低い海水中でも利用できる、移動する魚群の個体数把握に適した撮影環境の構築と、ディープラーニングアルゴリズムの適用により、自動カウント化を可能とするシステムの実現を目指す。

 なお、ディープラーニングによる画像解析の精度向上には、映像自体の品質を上げることが重要なポイントとなるため、今回はダイバーによる撮影ではなく、高性能水中カメラや水中ドローンなどの最新機材を用いて撮影作業をリモート化する。あわせて、生簀の配置調整やバックスクリーンの設置など撮影環境の最適化を図り、解析に適した映像を自動撮影できる仕組みを構築するという。

 一方の画像解析では、画像の「どこに」「何が」写っているかを、リアルタイムかつ高精度に推測する一般物体検出のためのディープラーニングアルゴリズムと、従来の画像認識技術を組み合わせたプロトタイプシステムを開発。マグロを認識させるための学習データを整備した上で、視認性の高い場所にフォーカスした映像の抽出や、連続したフレームに出現する個体を同一個体とみなすといった独自のデータ処理を行って、海水中を高速で泳ぐマグロについても、正確にカウントできるシステムの構築を目指す。

 なお、今回のプロトタイプシステム開発は、解析アルゴリズム開発に強みを持つベンチャー企業、株式会社アラヤの技術協力を得て実施するとのこと。