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ソフトウェアならではの強み――、VMwareがアピールするハイパーコンバージドインフラ戦略

 「ハイパーコンバージドインフラ(HCI)は、もうメインストリームの顧客やアプリケーションに採用していただけるものになっている」――。

 ヴイエムウェア株式会社は27日、HCI戦略に関する説明会を開催。米VMware ストレージ&アベイラビリティ担当上級副社長兼ゼネラルマネージャ、ヤンビン・リー氏は、「新しい製品が出ると信頼性はどうなんだ、となるが、HCIでは多くの事例がビジネスクリティカルアプリケーションで生まれている。製品の成熟度も増してきたが、より重要なのは、お客さまが寄せてくださる信頼感、安心感が生まれていることだ」と述べ、HCIへの市場の見方が変わってきていることを指摘した。

米VMware ストレージ&アベイラビリティ担当上級副社長兼ゼネラルマネージャ、ヤンビン・リー氏

ストレージから見たHCI

 ストレージ市場を見た場合、従来のストレージ専用機器とクラウドストレージが対局にあるといえる。従来型ストレージは信頼性と実績に優れるが、複雑かつ高価であり、またこれからのアプリケーションで必要となるスケーラビリティを確保するのが難しいという。一方、クラウドストレージは柔軟な拡張性に優れるが、完全にクラウドだけを使っていくのは、コンプライアンスやセキュリティのために難しい。

 リー氏は、「こうしたギャップを埋めるのがHCIの役割。オンプレミスでもクラウドでも同じように展開できる。だからこそ、HCIはストレージ分野でもっとも高い成長率を持っており、通常のストレージは急速に縮小していくという予測がなされている」と説明する。

 VMwareの提供しているHCI製品とは、「VMware vSAN(旧称:VMware Virtual SAN)」のことだ。vSANはこれまで、HCIの構成要素の1つであるストレージ仮想化製品やSoftware-Defined Storage(SDS)としての文脈で語られることが多かったが、現在ではHCIを構築するための製品としてのメッセージを前面に押し出すようになった。

 vSANはサーバー仮想化ソフトウェア「VMware vSphere」に組み込まれた機能として提供されるため、仮想サーバー環境と緊密な統合がなされており、確かに、単なるストレージ製品とは言いにくい。プロビジョニング、スケーリングなどの作業もvSphereと共通のインターフェイスで行え、管理性の面でも競合と比べて優位にあるとする。

VMwareのHCIとは

 だからこそ、「vSANの購入、実装が急速に進み、今ではユーザー企業は8000社を超えた。競合と比べて最大の数であり、HCIの競合大手2社を合わせたよりも顧客数が多い」状況になっているという。

 例えば、AmwayはVDIやデータベース、Tier1アプリケーションといった用途で導入し、80%のコスト削減を実現。VDIでは起動時間を20分から1分未満へ短縮するなどの性能向上を実現している。またAirbusでは航空機A380の機内でvSANを利用。30万のセンサーからのデータをvSANで稼働している分析システムに収集し、分析を行っているとした。

Airbusの事例

 従来、HCIはVDIとの親和性が高いとされている反面、性能や信頼性などの面で、Tier1アプリケーションでの利用例はさほど多くないとされてきた。しかしリー氏はこれを否定。こうした事例を示した上で、「SAPとの連携で、SAP HANAの認定を受けようとしており、性能も良い」などと述べ、すでにビジネスクリティカルな用途でも十分利用できるようになっているとアピールした。

アプライアンスだけではない導入形態

 さらにリー氏は、vSANはソフトウェア製品であるため、VMwareでは、競合のHCIと比べて導入の柔軟性が高い点を優位性としてアピールする。

 一般的に、HCIはアプライアンスの形態で提供されることが多い。vSANでも、Dell EMCの「Dell EMC VxRail」や富士通の「FUJITSU Integrated System PRIMEFLEX HS」などが用意されているが、vSANでは主要大手サーバーメーカー(合計15社)から提供される、200以上のvSAN ReadyNodes(認定ハードウェア)で稼働できるため、パートナーがこれらのハードウェアを利用し、付加価値を付けて提供することができるのだ。

 これには、大きく3つのパターンが用意されている。1つ目の「HCIソリューション」は、システムインテグレータが認定構成のハードウェアとvSANを利用した上で、各社の付加価値を追加しソリューションとして構成するもので、システム設計や導入、サポートといったサービスを含めて提供される。

 2つ目は「カスタマイズドHCI」で、認定構成のハードウェアとvSANを利用するのは同じだが、個別の要件に応じてカスタマイズして提供するもの。そして3つ目は、vSANやvSphereだけでなく、ネットワークの仮想化を実現するVMware NSXや管理機能などを含めたVMware Cloud Foundationを利用し、SDDCアプライアンスとして提供するものだ。

 こうした柔軟な選択肢を用意していることは、競合では提供できない大きな価値なのだという。

導入の選択肢を柔軟に提供

vSAN専任のサポートチームを立ち上げ

 国内でも、こうしたHCIへの取り組みは進められている。ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部 本部長の小林泰子氏は、「保守サポートにおいてvSAN専任のチームを7月1日付けで立ち上げる」と述べた。

ヴイエムウェア ソリューションビジネス本部 本部長の小林泰子氏

 従来はSDDC全体を担当する部隊の中に担当者が配置されていたが、マネージャをアサインして1つの組織として独立させるとのこと。なお、これに先立ち4月からは、パートナー部隊の中に専任エンジニアチームをアサインしていたとのことで、日本法人としても需要増への対応を進める考えだ。

 また、国内では国産サーバーメーカーのシェアが高いことから、NEC、富士通、日立といったメーカーとの協業も進めるほか、大塚商会、日立システムズをはじめ、販売パートナーからもvSANを用いたHCIソリューションの提供が行われており、今後もこうした動きを推進するとした。

 あわせて、クラウド事業者への展開もこれまで以上に進める。小林氏によると、現在、国内150社がVMwareベースでクラウドサービスを提供しており、その中でもvSANを利用してサービスを提供しているところが増えているとのこと。こちらについても拡大を図るとしている。