特別企画

ゼロタッチマネジメント、そしてビジネスニーズの的確な把握こそがVSANの真髄~VSAN責任者に訊くVMwareのストレージ戦略

 8月28日~9月1日(米国時間)の5日間にわたって米国ラスベガスで開催されたVMwareの年次カンファレンス。「VMworld 2016」。VMwareはここで、VMwareプラットフォームで構成されたプライベートクラウドと、外部のパブリッククラウドをシームレスに連携させていくクロスクラウド戦略「VMware Cross-Cloud Architecture」を発表した

 この戦略を見ると、VMwareはクラウド時代にソフトウェアカンパニーが果たすべきミッションにあらためて注力していく選択をしたといえる。つまり、自らがクラウドサービスを提供することよりも、クラウドを形作るプラットフォームに対し、ソフトウェアカンパニーとしてその進化に貢献していくという選択だ。

 その土台となるのが、ハードウェアリソースを仮想化してSDDC(Software-Defined Datacenter)化する「VMware Cross-Cloud Foudation」であり、Cross-Cloud Foundaitonの重要な3つの構成要素が、サーバー仮想化の「VMware vSphere」、ストレージ仮想化の「VMware Virtual SAN(VSAN)」、ネットワーク仮想化の「VMware NSX」となる。

 VMwareは、今回のVMworld 2016でCross-Cloud Foundationを発表するまでは、ハイパーコンバージドインフラストラクチャ(HCI:Hyper-Converged Infurastracture)という言葉を多用していた。そこでもメインの技術はCross-Cloud Foundationと同様、vSphere、VSAN、NSXである。違いは、HCIがこれらのテクノロジスタックをハードウェアアプライアンスに詰め込んで提供していたのに対し、Cross-Cloud FoundationはこれをvCloud AirやIBMクラウドといったクラウドプラットフォーム上でも提供される点だ。

 言い換えれば、HCIよりもソフトウェアスタックとしての側面がより強くなったのが、Cross-Cloud Foundationとなる。

 本稿ではこのCross-Cloud Foundationのメイン技術のひとつであるVSANについて取り上げてみたい。あえて“クラウド時代”と前述したが、クラウドへのシフトとリソースの分散化が加速する潮流において、VSANはどういったメリットをユーザに提供できるのか、現地での取材を通して得られた情報をもとに、その方向性を含めて検証していく。

ハードウェアのフレームワークを超え、ソフトウェアスタックとして新たなSDDC構築をめざすCross-Cloud Foundation。そのストレージレイヤを請け負うVSANは、シンプリシティが最大の優位点となる

VSANの基本的なアーキテクチャ

 ここであらためて、VSANの基本的なアーキテクチャを示しておこう。ストレージ仮想化製品はほかのベンダーからも数多く出ているが、VSANが決定的にそれらと異なるのは、サーバーに内蔵されたディスクを抽象化し、共有データストアとして利用する点だ。

 極端に言えば、専用のストレージアプライアンスが1台もなくても、汎用的なx86サーバーやディスクだけでストレージプールを構築することができる。必要となるのは、ベースとなるサーバー本体、キャッシュとしてフロントに配置するフラッシュデバイス(SSD)、実際にデータを格納するディスクまたはフラッシュデバイス、この3つのコンポーネントだ。

 VSANは単体の製品ではなく、vSphereに組み込まれた機能として提供されるので、当然ながらvSphere、つまり仮想サーバー環境ときわめてタイトに統合されている。ストレージ仮想化製品というよりも、ハイパーバイザーの機能の中にストレージ仮想化も含まれていると考えたほうがいいだろう。

 したがってRAIDやLUNといった従来の仮想ストレージの概念にとらわれることなく、プロビジョニングやスケーリングといった作業もvSphereと共通のインターフェイスで効率的かつシンプルに行うことができる。

 また、ここ数年のストレージ業界におけるオールフラッシュへのニーズの高まりを受け、フラッシュ(SSD)のパフォーマンス最適化を十分に考慮した設計となっている点も特徴のひとつだ。現時点での最新バージョンであるVSAN 6.2(2016年2月リリース)では、重複排除/圧縮、イレイジャーコーディング、SAPサポートなど重要な新機能が追加されたほか、よりフラッシュへの最適化を高めている。