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IIJなど、IoTの活用で水田水管理コストの50%削減を目指した実証実験を開始

 株式会社インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)は19日、静岡県交通基盤部農地局、株式会社笑農和(えのわ)、株式会社トゥモローズ、国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構との共同研究グループとして「水田水管理ICT活用コンソーシアム」を設立し、農林水産省の公募事業である平成28年度「革新的技術開発・緊急展開事業(うち経営体強化プロジェクト)」において、「低コストで省力的な水管理を可能とする水田センサー等の開発」の研究課題に応募し、採択されたと発表した。

 コンソーシアムでは、IoTやLPWA(Low Power, Wide Area)などICT技術の活用で、水田の水管理コストを50%削減することを目指して、2019年度までの3年間、静岡県の大規模経営体(営農法人)で実証実験を行う。

 研究では、ICTを活用して水の管理を効率化するための機器や運用コストを抑えることで、経営体が容易に導入できるICTシステムを開発し、従来の水管理コストを50%削減することを目指すとともに、実証実験後にサービス化を実現するための研究開発を行っていく。

水管理システムイメージ

 実証実験では、IoTで水田の水位および水温を監視し、自動給水弁により水位を遠隔で管理できる「ICT水管理システム」を開発し、静岡県の経営体での実証実験で水管理にかかるコスト効果を測定する。研究は、IoTが産業に変革をもたらすために重要となる「オープンイノベーション」の思想のもと、オープンなシステム仕様と標準化を積極的に推進するもので、日本農業情報システム協会(JAISA)を通じて全国の地域事業者の協力を得ながら、経営体や土地改良区、自治体などさまざまなユースケースに応用可能なデータ連携基盤の実現を目指す。

 水位・水温を測定する電池駆動の水田センサーは、日本ラッド株式会社の協力により開発。水田に設置し、ネットワーク経由で水位・水温情報を収集する。量産時の販売価格は1万円以下を予定する。

 自動給水弁については、重力式の低圧パイプラインが整備された水田において、遠隔からネットワーク経由で給水弁の開閉を制御できる、電池駆動の自動給水弁を開発。水田に行かなくてもPCやスマートデバイスから遠隔操作で水位を調整可能とする。量産時の販売価格は4万円以下を予定する。

 水田センサー、自動給水弁と通信するためのネットワークには、LPWAのひとつで、低消費電力で長距離通信をカバーするLoRaを採用し、低コストでの運用を実現する。水田センサーからのデータ収集、自動給水弁の制御には、IIJが提供する「IIJ IoTサービス」と、通信機器や基地局を遠隔から集中管理するIIJのマネージメントサービス「SACM」を利用する。

 また、水位、水温などの情報を可視化し、給水制御ができるアプリケーションを開発。アプリの開発には、笑農和が提供する開水路向け水位調整サービス「paditch」のプラットフォームを応用し、地図情報と連動したモニタリングや複数水田における給水の一括処理など、経営体が導入しやすい直感的な操作性を実現する。

 現地実証実験は、静岡県磐田市、袋井市の経営体において実施。水管理に関するニーズやコストの事前調査を行うとともに、ICT水管理システムを設置し、導入前後の効果を測定する。経営体が現実的に必要とする技術開発、センサーや基地局の最適な配置場所の検証、流量測定装置による節水効果を含めた水管理コスト削減効果の検証を推進していく。研究実施期間は2017年4月1日~2020年3月31日(予定)。