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働き方を自ら改革、機械学習とAIを活用するマイクロソフトの「Office Delve」と「MyAnalytics」

Office 365の法人契約ユーザーが利用可能

 日本マイクロソフトは16日、機械学習技術とAIの活用により、自身の働き方を見直すことをコンセプトとしたソリューション「Office Delve」と「MyAnalytics」についての機能を紹介した。

 Office Delveは、Office 365 Enterprise E1/E3/E5、Office 365 Business Essentials/Premiumで利用できる機能。一方、MyAnalyticsが利用できるのは、Office 365 Enterprise E5のみで、E1/E3ユーザーは1ユーザーあたり月額440円のアドインとして利用できる。いずれもOffice 365 Enterprise E5の提供が開始された2015年12月より利用できたが、アップデートによりUIを変更し、より使いやすくなったという。

 MyAnalyticsは、従来「Delve Analytics」と呼ばれていたもので、Office Delveの機能として利用できるもの。Office 365のメール/スケジュール管理機能「Exchange Online」におけるメールの読み書きや会議の時間をユーザーごとに分析され、1週間ごとの時間配分をダッシュボードで確認できる。

 ダッシュボードでは、AIを活用した業務改善の提案も行われる。例えば、「残業時間に送信したメールを受信者が読むのに費やした時間は3時間だったため、緊急性のないメールは翌朝まで送信しないことを推奨したり、多くの会議で同席した同僚と出席する会議を分担することなどが提案される」(日本マイクロソフトOfficeマーケティング本部の輪島文氏)という。これにより、労働の質を落とさずに労働時間を圧縮できるようになるわけだ。

作業時間、メール時間、2時間以上の集中時間を示すフォーカス時間、残業時間を可視化
日本マイクロソフトOfficeマーケティング本部輪島文氏

 メールなどでのやり取りに費やした時間を表示することもできる。相手が自分とのやり取りに費やした時間も可視化される。メールについては既読率も確認できるため、メールの返信待ちで業務が進まないといった場合に、短時間のミーティングを設定したり、Skypeによるチャットなどで必要な相手に情報を共有して、業務をより効率化できることも可能となる。

上位の共同作業者や上司とやり取りした時間やメールの既読率、返信までの時間を一覧表示
相手ごとに費やした時間をランキング表示することも可能

 なお、Office 365は、例えばOneDrive上でPowerPointファイルを保存していれば、その作成中に画面を切り替えることなく、上司や同僚と言った関係者とSkypeなどでやり取りできる機能を備えている。最新データを共同で編集できるほか、確認などでの無駄な待ち時間を極力削減できる機能とも言える。

共同でプレゼンテーションを作成したり、要確認の内容を即座に相手に確認したりできる

 会議については、自分でスケジュールしたものと、ほかのメンバーがセットしたものの内訳を表示できる。また、会議中に行っていたメールの読み書きについても「多重タスク処理」の時間として可視化される。発言もせず、決定権もない会議などへの出席を極力少なくしたり、アジェンダを絞り関係メンバーだけの参加に切り替えることで、例えば顧客への訪問に時間をかけるなど、本質的なところに時間を割くことができるようになる。

会議の時間や内容、会議内でのメール処理時間などが可視化される
会議ごとの傾向を一覧表示することもできる

 Office 365は、日経225銘柄企業の80%に導入されており、そのExchange Online上で、世界で毎月600億の添付ファイル、70ペタバイトの企業データ、毎月8.5億の会議が利用されている。こうしたビッグデータに対して、「機械学習を活用することで、人間だけではたどり着けない情報をクラウド側が教えてくれる」(輪島氏)ような提案内容の掲示に寄与している。なお、データは個人情報を特定するものでなく、匿名化され傾向値として集計されるという。また、ユーザーごとの分析内容は、ユーザー自身しか閲覧できず、「業務状況を上司が把握するような管理ツールではない」とのことだ。

 なお、Fortune 500企業に導入されたMyAnalyticsの個人用ダッシュボードにおける集計では、メールと会議に費やす時間が週2時間削減されている。これは1000ユーザーなら月8000時間節約されたことになり、営業日の毎月1日増や、従業員50人増員に相当するものとなる。

 政府で推し進める「働き方改革」では、長時間労働の是正も柱の一つとなる。しかし、単に労働時間を短縮しただけでは生産性は上がらず、提供するサービスの質が低下してしまうだけだ。メールのやり取りに費やされる時間は、ホワイトワーカーの労働時間の3割を占めると言われており、これを改善することには大きなインパクトがある。

 MyAnalyticsの機能により、業務における時間の使い方に対する改善を継続することで、労働の質を向上。これにより労働時間を短縮し、「新規の事業や企画を生み出すアイディアを生み出すといった時間を確保することで、企業での成長により寄与できる」(輪島氏)。また、仕事を持ち帰るサービス残業によるの情報漏えいリスクへの対処にもつながる。

 今後は、時間の使い方やコラボレーションの状況をチーム単位で可視化できる「Group Analytics」の機能が、春ごろをめどに提供される予定。その後、夏ごろには、SAPやSalesforce、Oracleなどの業務システムと連携することで、業務効率化や売り上げ増など、事業の優先順位や個々の課題に基づいて分析が行える「Workplace Analytics」の提供が予定されている。

 Office Delveでは、Exchange Onlineの情報に加えて、OneDriveやSharePoint上のファイルや、YammerなどのSNSの情報や、ユーザー間の共有の状況といったデータにより、社内のだれがどのような情報を把握しているか、といった情報を収集。これをもとに、自分に必要だが気づいていなかった情報や、そうした情報を持つユーザーを提案してくれる。「コラボレーションすべきメンバーを数珠つなぎにたどっていけるので、海外メンバーやパートナーなど、より多くの人とコミュニーケーションを高めて、最先端の情報を入手することで、企画の新規性やクオリティの向上が可能になる」(日本マイクロソフトOfficeマーケティング本部の富士野光則氏)とのことだ。

日本マイクロソフトOfficeマーケティング本部の富士野光則氏
Office Delveでは、業務に必要なファイルやユーザーを提案してくれる

 Office DelveとMyAnalyticsについては、日本マイクロソフト社内でも活用が始まっている。同社では、2011年2月に品川へ本社を移転した6年前から、テレワークの推進を中心とした働き方改革に取り組んでいる。2017年からは、その第2章として、労働時間の質の改善を図っていくとのことだ。日本マイクロソフト株式会社コーポレートコミュニケーション本部本部長の岡部一志氏は、「こうした取り組みにより、テクノロジーをベースに改革を推進していく」と述べた。また、Office DelveやMyAnalyticsの導入では、「活用シナリオが求められるケースが大半」(富士野氏)となるという。同社では、社内での活用事例をホワイトペーパーとしても提供するとのことだ。

日本マイクロソフト株式会社コーポレートコミュニケーション本部本部長の岡部一志氏