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基幹系にもクラウドファーストの波が広がる――、CTCとVirtustreamが説明

 伊藤忠テクノソリューションズ株式会社(以下、CTC)と米Virtustreamは7日、基幹系クラウドの現状と今後に関するテクニカル・ブリーフィングを、都内にて共同開催した。

基幹系システムでのクラウド利用はまだ15%程度、その理由は?

 2015年10月~2016年10月にかけてCTCが独自に基幹系システムへのクラウド利用状況について調査した結果によると、基幹系システムへのクラウド利用は部分利用も含めて15%程度であったという。積極的にクラウドを利用する企業は増えているものの、基幹系システムとなると、まだまだクラウド利用に至らない企業が多いことがわかる。

 しかし、クラウドを利用していない85%の企業のうち、95%は基幹システムでのクラウド利用の検討を進めたことがあると回答している。この結果をうけ、CTC 執行役員 ITサービス事業グループ クラウド・セキュリティ事業推進本部 本部長の藤岡良樹氏は、「基幹系システムにもクラウド・ファーストの波が広がりつつある。多くの企業は、コストの軽減、セキュリティ対策や運用業務の軽減といった期待から、基幹系システムにおいてもクラウドを利用したいと考えている」と述べた。

基幹系システムでのクラウド利用状況

 クラウド利用の検討を進めながらも、クラウドサービスの採用に至らない企業が多いことについて藤岡氏は、「基幹系システムのクラウド利用への期待は高まっているものの、自社要件に適合するクラウドサービスが見つからない、あるいは現在稼働中のシステムを移行するコストやリスクを考慮すると、一般的なパブリッククラウドのサービスではメリットが少ないと考える企業が多い」と説明する。

 また、調査結果として得られた具体的な理由として、「既存のオンプレミスの基幹系システムと同レベルの性能・運用を求めると、一般的なパブリッククラウドサービスでは期待したほどコストは下がらない」「セキュリティやパフォーマンス面で技術的な裏付けが取れない」「稼働中のシステムを移行するコスト・リスクを考慮するとメリットが少ない」「自社の基幹系システムに適切なクラウドサービスの選定が難しい」「基幹系システムの稼働をクラウドベンダーに依存することに不安がある」といった回答を紹介した。

CTC 執行役員 ITサービス事業グループ クラウド・セキュリティ事業推進本部 本部長 藤岡良樹氏

基幹系システム向けIaaS「CUVICmc2」で利用者の不安を解決

 これらの問題を解決するパブリッククラウドとしてCTCでは、基幹系システム向けIaaS「CUVICmc2」の提供を2016年4月から開始している。CUVICmc2はVirtustreamのテクノロジーをベースとしたサービスで、パフォーマンスに対する性能保証、高いセキュリティやコンプライアンス、実使用量による従量課金が特長となっている。

 CUVICmc2に引き合いがあった企業に対し、クラウド基盤上で稼働させたいアプリケーションについて質問した結果、68%がクラウド基盤上でSAPのERPを利用したいと回答しており、そのうちの38%はSAP S/4HANAを利用したいと回答したという。実際、2017年1月時点でCUVICmc2のでユーザーは9社にのぼっており、そのうちに8社がCUVICmc2の上でSAPのERPを利用している。

クラウド基盤上で利用したい基幹系ソフトウェア

 CTCにはSIerとして長年の実績があり、CUVICmc2は、IaaSの提供に加え、オンプレミスからの移行計画の策定、構築・移行、運用など基幹システムのライフサイクルすべてをサポートする。もちろん、SAP ERPの移行、あるいは新規導入についても、計画策定の段階から相談することができる。

 性能保証について、Virtustream COOのSimon Walsh氏は「一般的なパブリッククラウドでは、災害時の目標復旧時間(RTO:Recovery Time Objective)と目標復旧地点(RPO:Recovery Point Objective)について、RTOは1日、RPOは1時間程度に設定していることが多い。しかし我々は、RTOは1時間、RPOは15分に設定している」と述べ、競合との優位性をアピールした。

Virtustream COO Simon Walsh氏

 一般的なパブリッククラウドサービスは、占有している仮想マシン単位で課金されるしくみとなっているが、Virtustreamは、特許技術「μVM(マイクロヴイエム)」によって、ハードウェアリソースを細かく管理し、実際に使用した分だけが課金される仕組みとなっている。最大量のトランザクションを見越してリソースを確保する必要がないため、調達にかかるコストを軽減することができる。

 企業の基幹システムを稼働させる場合、業種によってはコンプライアンスの問題が発生する。CUVICmc2では、薬事法に基づいて製薬業界に求められている、システムの妥当性を保証する取り組み(CSV:Computerized System Validation)をはじめ、さまざまな第三者認証を取得、あるいは取得のための取り組みを進めている。現在は、クレジットカード業界のセキュリティ基準であるPCI SSC(Payment Card Industry Security Standards Council)に取り組んでいる。

 最後に藤岡氏は「基幹系に求められるクラウドは、コスト・性能・セキュリティ・運用を重視しており、これまでの一般的なパブリッククラウドとは異なる。今後は基幹システムに特化したクラウドサービスが、オンプレミスとの比較対象として存在感を増していくことになる。CTCはCUVICmc2の強化を進め、エンタープライズクラウドの市場をけん引していく」と意気込みを述べた。