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くまもとDMC、観光者数と特産品販売増を目指し、データビークルのビッグデータソリューション「Data Diver」「Data Ferry」を採用

位置情報データやPOSデータを収集し、Microsoft Azure上で稼働

 株式会社くまもとDMCは7日、株式会社データビークルの製品を導入し、観光振興専用分析データベースを構築する契約を締結した。ビッグデータのマッシュアップによるデータ解析により、熊本県の観光振興や地方産品の販売を促進する。

 株式会社くまもとDMCは、地域銀行と自治体が出資する「日本版DMC(目的地型観光振興会社)」の日本国内で初の事例として2016年12月に設立された。熊本県と肥後銀行のほか、熊本未来創生投資事業有限責任組合が株主に名を連ねる。

 導入するのは、データビークルの「Data Diver」と「Data Ferry」。Microsoft Azureのクラウド上で稼働する。観光客数の増加では、株式会社ナビタイムジャパンの目的地検索データと株式会社Agoopの携帯電話ローミングデータを、特産品の販売では、eBase株式会社の商品データとカスタマー・コミュニケーションズ株式会社のPOSデータの提供を受け、株式会社データビークルのソリューションを活用して分析を行う。例えば、どういう検索をした人が実際に熊本を訪れているのか、県内の各地域に人の集まる時間帯や曜日などを分析して観光客数の増加を図るほか、製品の属性情報に、売れている製品と店舗での取り扱い状況、購入者の男女比などを組み合わせて分析を行うという。

 熊本県の元副知事で、くまもとDMC代表取締役社長の村田信一氏は2016年12月に設立したくまもとDMCについて、「地元の銀行である肥後銀行の主導で設立され、肥後銀行、鹿児島銀行双方の地震復興ファンドから株を引き受けてもらっている。自治体の出資は4%で、ほかの組織とは違って民間色が強く、機動力あふれた収益性を主眼に置いた組織になっている」とした。

 さらに村田氏は、「昨年4月の熊本地震では、阿蘇や熊本城が大変大きな被害を受けた。観光振興は、DMCという新たな展開、質的な向上を迎え、全国で動きが始まっている。くまもとDMCとデータビークルで新たなマーケティングシステムを構築する今回の取り組みでは、複数のビックデータを活用して掛け合わせ、統計学を駆使して課題や問題点を解決する全国でもユニークな取り組みを進めていく」とした。そして、「今後は全国にも展開できたらとの思いもある」と述べた。

くまもとDMC代表取締役社長の村田信一氏と、特別ゲストとして登場した「くまモン」。くまモンの生みの親である小山薫堂氏は、くまもとDMCの社外取締役に名を連ねる

 くまもとDMC取締役兼CMOの外山由恵氏は、くまもとDMCが日本版DMOとして観光振興と地域産業の活性化を進めるうえでの主な役割として、関係者間の合意形成、データを収集・分析した上での明確なコンセプトに基づく戦略策定、その戦略に基づくKPI設定とPDCAサイクルの確立を挙げた。「調整や仕組み作りを行うだけでなく、個別の事業にもしっかり取り組む」とし、その中ではビッグデータ活用は必須とした。「データ自体はこれまでもあったが、うまく活用できなかった。そこで今回、データビークルのソリューションを採用。データビークルと協議の上で、価値あるデータを保有する4社からデータ提供を受けて観光振興専用分析データベースを構築する。この取り組みにはAzureを活用する」とした。

 そして「熊本県、地方自治体、地方DMO、観光事業者などとも協業しながら、しっかり稼げる地域作りを行っていきたい」と述べ、「熊本県内に人がたくさん来るようにするのが一番手前の目的で、災害後に落ち込んでいる観光産業を、震災前の数字を目標に動いていきたい」とした。

くまもとDMC取締役兼CMOの外山由恵氏

 株式会社データビークル代表取締役CEOの油野達也氏は、同社の製品について「(株式会社データビークル取締役で統計家の西内啓氏の)データサイエンスにおけるノウハウを詰め込んだデータ分析製品」とし、「データサイエンティストに頼まなくてもユーザーが自分で触れるのが特徴」とした。そして「通常は販売トランザクションなどの社内データを活用するが、くまもとDMCは設立されたばかり。そこで今回は各社に(データ提供の)協力を仰ぐこととなった」との経緯を説明。

 株式会社データビークル取締役の西内啓氏は、シリーズ累計40万部を超える「統計学が最強の学問である」の著者でもある。西内氏は、「素晴らしいデータがあっても分析が未熟であれば意思決定につながらない」としたほか、「意思決定、現場、データ、分析のPDCAサイクルを何回も回していく上で、実際にはなかなかうまくいかないと相談される」とし、「意思決定だけでなく、現場で行われたことが反映されないなど、4つのうち1つでもかけるとサイクルは回らない」と語った。

株式会社データビークル代表取締役CEOの油野達也氏
株式会社データビークル取締役の西内啓氏

 そして、「地域の特産品に関するマーケティングの取り組みはこれまでも行われているが、位置情報やアンケート、公的統計などのデータソースが個別に使われており、これらを“見える化”しても、そこから何をすればよいかが分からない、という事例もあった」とした上で
「地域経済振興とのゴールを明確にし、これに対して、アウトカムを具体的に定義できるかどうか。例えば今回であれば観光者数や特産品の販売数で、これを増やすには、どのデータが関係しているのかを関連付ける。どのような嗜好を持つ人が熊本に来てくれるのか、特産品を買ってくれるのか。どういった嗜好や気分になると、アウトカムにつながるのか。さまざまなデータがある中で、ゴールに対して確実に直結するデータをつないでいく」とした。また、「データサイエンスでは、現場の事情によくわかっている人自身にできるだけ早く分析してもらうことを目指す」と述べた。

 同社の製品については、「ビッグデータは宝の山だが、それを自分たちが意図する形に分析するにはどうすればいいのか、欲しい形に一部のデータを切り出したり、データとデータを結合して集計し直してくれるのが『Data Ferry』。実際にどの観点で分析するのか、アウトカムがわかっていれば、ブロックを組み合わせるよな直感的なGUI操作で必要なデータを加工するなど、可能な限り簡単に分析をアシストするのが『Data Diver』」だという。

 そして、「(弊社では、)アウトカムとデータをできるだけ簡単に見ていく点で手伝いをするが、むしろデータや分析以上に、現場の事情や意思決定プロセス、調整すべき相手などの施策に注目すべき」と述べ、今回の取り組みについて、「考えられる限り最高の日本代表チームと言っていいようなメンバーで、全国に先駆けての取り組みには非常に意味がある」と語った。

 日本マイクロソフト株式会社執行役員デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏は今回の取り組みについて「クラウドがあって初めて可能になった」とし、「データ提供者は素晴らしいデータを持っているが、これを、堅牢性とセキュリティを備え、国内データセンターを提供するAzureのクラウドですぐに受け取れる」と述べ、今後も観光振興、復興支援の観点で全面的にサポートを行っていくとした。

日本マイクロソフト株式会社執行役員デベロッパーエバンジェリズム統括本部長の伊藤かつら氏